近松門左衛門|歌舞伎・浄瑠璃,『曽根崎心中』

近松門左衛門

近松門左衛門は越前国出身越の作家で歌舞伎や浄瑠璃を書いた。主な作品は『曽根崎心中』『冥途の飛脚』『国性(姓〉爺合戦』。
越前国(福井県)吉江藩の藩士の次男として生まれた。父が浪人になったことをきっかけに一家で越前国を去り、京都に移住した。小さいころから有職故実や古典に親しんでいた知識を活かして、はじめは歌舞伎、後に浄瑠璃作家となり竹本義太夫とともに活躍した。生涯にわたって約120作の脚本を書き、人情に心を傾けると義理を失い、時にはわが身を滅ぼすことにもなることを描きながら人々の情念や生き様を表現した。

目次

義理

義理は一般的に人が他者とのかかわりにあって踏み行うべき道で、さまざまな公的・社会的制約をいう。特に江戸時代当時は、朱子学に基づいた義 (正しさ)と理(根本原理)のことをいい、社会規範や公的制約など人間関係におけるあるべきあり方である。

人情

人情は、人間的な情愛を意味し、親子の情愛や恋愛感情のような私的・内面的な感情ををいう。

義理と人情のジレンマ

義理と人情は同じ人間関係において併存するもので、「義理と人情の板挟み」になる状態は、現代にも通じる、人間に普遍的なジレンマである。近松門左衛門はそこに生じる葛藤に苦しむ姿の中に人間の悲しさと美しさを見いだした。義理を重んじつつも人情を捨てきれない現実を描くことで人間の情念や意志を大切にする思いが多くの人々の共感を得た。

孝行・貞節・恩

江戸時代に重んじられた徳目。親を大切にする孝行、妻が夫以外の男性とは関係を持たずに純潔を守る貞節、主君や人から受けた恩に報いることは、家族や身分秩序を重んじる信教の影響のもとで、封建社会の秩序を支える徳目として重視された。

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