荷役
荷役(にやく)とは、貨物を輸送機関や倉庫へ積み込み、取り卸し、構内で移動させる作業の総称である。物流の5大機能(輸送・保管・荷役・包装・流通加工)の一つに数えられ、輸送と保管をつなぐ結節点の役割を担う。英語ではマテリアルハンドリング(Material Handling)、港湾ではカーゴハンドリングと呼ばれることが多い。工場の原材料受け入れから製品出荷まで、モノが止まる場所には必ず荷役が発生する。
港湾から始まった荷役の歴史
日本で荷役という言葉が広く使われるようになったのは、明治期の港湾においてである。当時の船積みは人力が中心で、沖に停泊した本船と艀(はしけ)の間で貨物を担ぐ「沖仲仕」が作業を支えていた。転機となったのは1956年、米国の陸運業者マルコム・マクリーンが海上コンテナ輸送を始めたことである。貨物を規格化された箱に詰めることで、数日かかっていた本船荷役は数時間単位へと短縮された。現在の国際海上コンテナはISO 668で寸法が定められ、20フィート型と40フィート型が主流となっている。
荷役作業の種類
一口に荷役と言っても、その中身は多岐にわたる。日本産業規格のJIS Z 0111(物流用語)では、荷役を「物流過程における物資の積卸し、運搬、積付け、ピッキング、仕分け、荷ぞろえなどの作業及びこれに付随する作業」と定義している。代表的な作業は次のとおりである。
- 積込み・荷卸し:トラックや貨車、船舶に貨物を載せる、または降ろす作業
- 構内運搬:工場や倉庫の中で貨物を移動させる作業
- 積付け:荷台やパレット上に荷崩れしないよう貨物を並べる作業
- ピッキング:保管棚から出荷指示に合わせて品物を取り出す作業
- 仕分け・荷ぞろえ:出荷先や方面ごとに貨物を分類し、まとめる作業
荷役機器の比較
現場で使われる機器は、扱う荷姿と移動距離によって選び分ける。重量物を垂直に動かすならクレーン、水平方向の連続搬送ならコンベヤ、という具合に得意分野がはっきり分かれている。
| 機器 | 主な用途 | 移動方向 | 導入時の留意点 |
|---|---|---|---|
| フォークリフト | パレット単位の積卸し・構内運搬 | 水平・垂直 | 最大荷重1t以上は技能講習修了者が運転 |
| 天井クレーン | 金型・鋼材など重量物の吊り上げ | 垂直・建屋内水平 | 建屋の耐荷重とランウェイ設計が前提 |
| コンベヤ | ケース品・部品の連続搬送 | 水平・傾斜 | レイアウト変更の自由度が低い |
| 無人搬送車(AGV・AMR) | 工程間の部品供給 | 水平 | 床面の段差・勾配の管理が必要 |
パレット化の効果
荷役の効率を左右するのは機器よりも荷姿である場合が少なくない。日本の一貫輸送用平パレットはJIS Z 0601に規定され、1100×1100mmのT11型が標準サイズとして普及している。段ボールを1個ずつ手で積む「バラ積み」の場合、10tトラック1台の荷卸しに2〜3時間かかることも珍しくない。これをパレット化すればフォークリフトで30分前後に収まる。ただしパレット自体の重量と厚み(約150mm)の分だけ積載効率は落ちるため、軽量で嵩張る製品では手積みを選ぶ荷主もいる。パレットの回収・紛失コストまで含めて比較しないと、現場では判断を誤りやすい。
2024年問題と荷待ち時間
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限規制が適用された。いわゆる「物流の2024年問題」である。ここで改めて注目されたのが、運転以外に費やされる荷待ちと荷役の時間である。国土交通省の調査では、1運行あたりの荷待ち時間と荷役時間の合計が平均3時間を超えるケースが報告されてきた。政府は2023年に「物流革新に向けた政策パッケージ」をまとめ、荷主に対して荷待ち・荷役作業等の時間を計2時間以内に収めるよう求めている。
製造業の出荷現場から見ると、これは単なる運送業界の課題ではない。トラック予約受付システムで到着時刻を分散させる、出荷バースを増設する、前日のうちに出荷品をパレットへ荷ぞろえしておく、といった手当てを講じなければ、運送会社から契約を断られるおそれが出てきた。2024年に改正された「標準的な運賃」では荷役作業料を運賃と別建てで収受する考え方が示され、これまで無償で行われがちだった附帯作業にも明確な対価が求められるようになっている。
安全衛生と法規制
陸上貨物運送事業における労働災害のうち、約7割は運転中ではなく荷役作業中に発生しているとされる。墜落・転落、荷崩れによる挟まれ、フォークリフトとの接触が典型的な事故形態である。厚生労働省は2013年に「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」を策定し、荷主と運送事業者の双方に役割分担を求めた。
労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則は2023年10月に改正され、昇降設備の設置と保護帽の着用が義務となる対象が、最大積載量5t以上から2t以上のトラックへ拡大された。2024年2月からはテールゲートリフターを操作する労働者への特別教育も義務化されている。
資格面では、つり上げ荷重1t以上のクレーン等で吊り荷を掛け外しする玉掛け作業に技能講習の修了が必要となる。1t未満であれば特別教育で足りるが、実務では荷重が日によって変わる現場も多い。そのため、作業者全員に技能講習を受けさせておく工場が大半を占める。
自動化の現在地
人手不足を背景に、荷役の自動化は年々進んでいる。高層ラックとスタッカークレーンを組み合わせた自動倉庫は、1960年代後半に日本へ導入されて以来、保管と入出庫を一体で処理する設備として定着した。近年はロボットアームによるデパレタイズ(パレットからのケース取り出し)も実用段階に入っている。もっとも、形状や重量が不揃いな製品、梱包が柔らかい製品では把持の失敗が起きやすく、完全自動化に踏み切れる現場は限られる。投資判断の際は、1時間あたりの処理ケース数だけでなく、例外品を人がどう処理するかまで設計に含めておく必要がある。
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