積層セラミックコンデンサ|小型大容量を実現する電子部品の要

積層セラミックコンデンサ

積層セラミックコンデンサは、薄いセラミック誘電体層と内部電極を交互に何百層も重ね、一体焼成して作るコンデンサである。英語のMultilayer Ceramic Capacitorを略して、MLCCと呼ばれることが多い。小型で大容量を得やすく、等価直列抵抗(ESR)が低いうえ極性もないため、電源ラインのノイズ除去や平滑化に広く用いられている。世界の年間生産数は数兆個の規模に達し、スマートフォン1台に約1,000個、電気自動車1台には約10,000個が搭載されるといわれる。

小型化と大容量化の歩み

出発点は、1940年代に見いだされたチタン酸バリウム(BaTiO3)の高い比誘電率である。この強誘電体を薄く重ねるという発想から、1960年代に積層構造の製品が登場した。初期の内部電極には高価なパラジウムや銀パラジウム合金が使われていたものの、1990年代に入って還元雰囲気で焼成する技術が確立すると、安価なニッケルへの置き換えが一気に加速した。大容量品が低価格で手に入るようになったのは、この卑金属電極化のおかげといってよい。外形寸法も縮み続けている。かつて主流だった3216サイズ(3.2×1.6mm)から1005、0603、0402へと移り、2024年には村田製作所が0.16×0.08mmの016008サイズを発表した。

内部構造と静電容量の決まり方

チップの断面を見ると、櫛歯状に引き出された内部電極が左右の外部電極へ交互につながっている。つまり、多数の平行平板コンデンサを並列に接続した形である。静電容量Cは、C = ε0 × εr × S × (n − 1) / d で表される。ε0は真空の誘電率(8.85×10−12 F/m)、εrは誘電体の比誘電率、Sは電極の重なり面積、nは内部電極の枚数、dは誘電体層の厚さを指す。容量を稼ぐ手段は、比誘電率を上げるか、層を薄くするか、枚数を増やすかの3つしかない。最新の大容量品では層厚が0.5μm前後まで薄くなり、積層数は1,000層を超える。

製造工程

製法はシート工法が主流で、粉体技術と印刷技術の組み合わせで成り立っている。おおまかな流れは次のとおりである。

  1. 誘電体粉末にバインダーと溶剤を混ぜてスラリーを作り、PETフィルム上に塗工してグリーンシートを成形する。続く乾燥工程で溶剤を飛ばす
  2. ニッケルペーストで内部電極パターンをスクリーン印刷する
  3. 印刷済みシートを所定の枚数だけ積み重ね、加圧して一体化する
  4. 個片に切断し、脱バインダー処理で有機成分を取り除く
  5. 還元雰囲気中、1,100〜1,300℃程度で焼成する
  6. 端面に銅ペーストを塗って焼き付け、ニッケルめっきとすずめっきで外部電極を仕上げる。ニッケル層ははんだ食われを防ぐバリアとなり、最表面のスズがはんだ付け性を確保する

誘電体材料による分類

JIS C 5101-21および-22(IEC 60384-21/22)は、温度特性によって製品を大きく2つに区分している。種類1は酸化チタンやジルコン酸カルシウム系の常誘電体を用い、容量は小さいが温度や電圧による変化がほとんどない。種類2はチタン酸バリウム系の強誘電体で、比誘電率が数千に達する代わりに、温度・電圧・経時によって容量が動く。特性記号はEIA規格の表記が業界で広く通用している。

特性記号 区分 使用温度範囲 容量変化 主な用途
C0G 種類1 −55〜+125℃ 0±30ppm/℃ 発振回路、高周波フィルタ
X7R 種類2 −55〜+125℃ ±15% 車載機器、産業機器の電源
X5R 種類2 −55〜+85℃ ±15% スマートフォンの電源デカップリング
Y5V 種類2 −30〜+85℃ +22〜−82% 温度変化の少ない民生機器の平滑

DCバイアス特性

種類2で見落としやすいのが、直流電圧による容量低下である。強誘電体の分極が電界で拘束されるため、定格6.3Vの10μF品に5Vをかけると実効容量が半分以下になる例も珍しくない。設計の現場では、メーカーが公開するシミュレーションツールで実使用電圧下の容量を確かめたうえで、1ランク上の定格電圧品や大きいケースサイズを選ぶのが常套手段となっている。

実装現場で起きやすい不具合

市場不良の代表格は曲げクラックである。セラミックは引張応力に弱く、基板の分割やねじ締め、コネクタの挿抜でたわみが生じると、外部電極の端部を起点に斜めの亀裂が入る。厄介なのは、亀裂が入った直後は電気特性に異常が出ず、湿気の侵入やマイグレーションによって後からショートに至る点にある。対策としては、V溝やミシン目から5mm程度以上離して配置する、部品の長手方向を分割線と平行に向ける、外部電極の下地に導電性樹脂層を挟んだソフトターミネーション品を採用する、といった方法がとられる。リフロー時の急激な温度変化による熱衝撃クラックも起こり得るので、150〜180℃程度の予熱を十分に取ることも欠かせない。不具合品の解析では、断面研磨後のSEM観察で亀裂の起点を特定し、EDX分析で銀やスズの移動の有無を確かめる手順が一般的である。

他のコンデンサとの使い分け

大容量の用途は長らく電解コンデンサやタンタルコンデンサが担ってきたが、ESRの低さと寿命の長さを理由にMLCCへの置き換えが着実に広がった。ESRは数mΩ程度と小さく、スイッチング電源の出力リプルを抑えられるうえ、電力損失による自己発熱も少ない。とはいえ、100μFを大きく超える領域や、数百V級の高電圧と大容量が同時に求められる場面では、まだアルミ電解やフィルムコンデンサに分がある。調達面に目を向けると、汎用の1005サイズ品は1個あたり1円を大きく下回る価格で流通する一方、AEC-Q200に準拠した車載グレード品は数倍の単価になることが多い。2018年前後には需要の急増で深刻な供給不足が起き、納期が半年を超える品種も出た。この経験から、複数メーカーの代替品をあらかじめ承認しておく調達方針を取る企業が増えている。

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