静電容量|電荷を蓄える能力を示す物理量

静電容量

静電容量とは、導体がどれだけの電荷を蓄えられるかを表す物理量で、キャパシタンスや電気容量とも呼ばれる。量記号はC、SI単位はファラド(F)を用いる。2枚の電極を誘電体で隔てたコンデンサが代表的な対象となるものの、ケーブルの導体間やプリント基板の配線同士など、互いに絶縁された導体が2つあれば必ず生じる。電子回路の設計から設備の絶縁管理、センサの検出原理に至るまで、電気を扱う現場では避けて通れない概念である。

ライデン瓶から始まった「容量」の考え方

電気を溜めるという発想は、1745年から1746年にかけてドイツのクライストとオランダのミュッセンブルークがそれぞれ独自に考案したライデン瓶にさかのぼる。ガラス瓶の内側と外側に金属箔を貼っただけの装置だった。当時の研究者は「瓶にどれほど電気が入るか」を経験的に比べるにとどまっていたが、この素朴な比較を定量的な理論へ押し上げたのが19世紀のマイケル・ファラデーである。ファラデーは電極の間に挟む物質によって蓄えられる電気量が変わることを実験で示し、のちの誘電率の概念につながる成果を残した。単位ファラドの名称は彼にちなむ。

電荷と電圧の比で決まる量

導体に電荷Qを与えると、その電位差、つまり電圧Vは電荷に比例して上がる。この比例定数が静電容量であり、次の式で定義される。

C = Q / V

1Vの電圧で1C(クーロン)の電荷を蓄える容量が1Fにあたる。ただ、1Fは実用上きわめて大きな値で、一般の電子部品ではμF(10-6 F)、nF(10-9 F)、pF(10-12 F)が使われる。式だけを見ると難しく感じるかもしれない。同じ電圧でより多くの電荷を溜められるものほど容量が大きい、と理解しておけば十分である。

平行平板モデルで見る3つの決定要因

最も基本的な平行平板コンデンサでは、電極面積をS、電極間距離をd、真空の誘電率をε0、間に挟む材料の比誘電率をεrとすると、次の式が成り立つ。

C = ε0εrS / d

ε0はおよそ8.854×10-12 F/mである。容量を増やす手段は、面積を広げる、距離を縮める、比誘電率の高い材料を使う、の3つに集約される。一辺10cmの正方形電極を空気中で1mm離して向かい合わせても、容量は約88.5pFにすぎない。

主な誘電体材料と比誘電率の目安

材料の選択が容量をどれほど左右するかは、下の値を比べるとよくわかる。比誘電率は温度や周波数で変動するため、数値は目安として扱う。

材料 比誘電率(目安) 主な用途
真空 1 基準値
空気 約1.0006 バリアブルコンデンサ
ポリプロピレン 約2.2 フィルムコンデンサ
マイカ 約6〜8 高周波用・高精度用
酸化アルミニウム 約8〜10 アルミ電解コンデンサ
酸化タンタル 約25〜27 タンタル電解コンデンサ
チタン酸バリウム 数千 積層セラミックコンデンサ

直列接続と並列接続の合成容量

複数のコンデンサをつなぐ場合、合成容量の計算は抵抗とちょうど逆の形になる。並列接続は電極面積が増えたのと同じ効果を持ち、

C = C1 + C2

と単純な和で求まる。直列接続では逆数の和をとって

1/C = 1/C1 + 1/C2

となり、合成値は最も小さい素子の容量をさらに下回る。高圧用途では耐圧を稼ぐために直列接続を採用することがあるが、各素子の分担電圧は容量の逆比で決まる。容量のばらつきが大きいと特定の素子に電圧が集中してしまうため、分圧抵抗を並列に入れて均等化するのが一般的な設計である。

交流で現れる容量性リアクタンス

直流をかけた場合、コンデンサは充電が終われば電流をほとんど流さなくなる。交流では事情が異なり、充放電が繰り返されることで電流が流れ続ける。その流れにくさを表すのが容量性リアクタンスXCである。

XC = 1 / (2πfC)

周波数fが高いほど、容量Cが大きいほどリアクタンスは小さくなる。1μFのコンデンサなら50Hzで約3.18kΩ、1MHzではわずか約0.16Ωにまで下がる。この性質は電源ラインのノイズ除去や信号の直流成分カットに利用され、回路全体のインピーダンスを考えるうえでも欠かせない。受電設備では進相コンデンサを設置して、モーター負荷による遅れ力率を改善する使い方もある。

設計者を悩ませる浮遊容量

意図して作ったわけではないのに生じてしまう容量を、浮遊容量または寄生容量と呼ぶ。特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルは、1mあたりおよそ100pFの容量を持つ。わずか数pFでも、数百MHz帯の高速信号では波形のなまりやクロストークの原因になりうる。基板設計ではパターン間隔を広げたり、グラウンド層との距離を調整したりして対処する。厄介なのは制御盤の配線で、インバータ出力ケーブルを長く引き回すと対地容量を通じて高周波の漏れ電流が流れ、漏電遮断器が不要動作するトラブルが現場でしばしば起きている。

測定方法と試験規格

現場での測定にはLCRメーターが広く使われる。測定周波数は品種ごとに定められており、アルミ電解コンデンサは120Hz、小容量のセラミック品は1kHzまたは1MHzが標準的な条件となる。固定コンデンサの試験方法はJIS C 5101-1(IEC 60384-1に対応)に規定されている。古典的な手法としては、ブリッジ回路の平衡条件から未知容量を求めるシェーリングブリッジがあり、高圧ケーブルや変圧器の誘電正接(tanδ)測定にいまも用いられる。

積層セラミックコンデンサのDCバイアス特性

調達や回路設計の現場で見落とされやすいのが、積層セラミックコンデンサの容量が直流電圧によって減少する現象である。チタン酸バリウム系の高誘電率品(X5R、X7R特性など)では、定格電圧近くを加えたときに実効容量が公称値の半分以下へ落ちる例も珍しくない。カタログの「10μF」という表記だけで選ぶと、実機で平滑不足や電源の発振を招きかねない。メーカーが公開しているDCバイアス特性データを確認し、容量または定格電圧を1ランク上げた品種を選ぶのが実務上の定石となっている。小型品は1個1円を切る価格で流通しているため、余裕を持たせてもコストへの影響はごく小さい。

容量の変化を検出に使う技術

容量が電極間の距離や周囲の誘電率によって変わる性質は、そのまま検出原理として使える。人の指が電極に近づいたときに生じる変化は数pF程度と小さいが、専用の検出ICで十分に読み取れる。代表的な応用は次のとおりである。

  • スマートフォンやカーナビに使われる投影型静電容量方式のタッチパネル
  • 金属以外の樹脂や粉体も検出できる静電容量形の近接センサ
  • タンク内の液面や粉体の高さを連続的に測るレベル計
  • ダイヤフラムの変位を容量変化として読み取る圧力センサ

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