清浄度
清浄度とは、空気や液体などの環境中に含まれる微粒子の量を数値で表した指標である。工場やクリーンルームの空気品質を管理するための基準として用いられ、半導体、医薬品、精密機械、食品加工など幅広い産業分野で欠かせない管理項目となっている。単位体積あたりに存在する特定粒径以上の粒子数によって等級が定められ、数値が小さいほど清浄な環境を意味する。ISO14644-1やJIS B 9920といった規格が、国際的・国内的な基準として広く参照されている。
規格の成り立ちと二つの体系
清浄度の考え方は、1960年代に米国航空宇宙局(NASA)がクリーンルーム管理のために制定したFED-STD-209Dに端を発する。この規格では、1立方フィートあたりの0.5μm以上の粒子数を基準に、クラス1からクラス100000までの等級が定められていた。日本ではJIS B 9920として規格化され、現在は国際規格であるISO14644-1に統合される形で運用が進んでいる。ISO14644-1では単位体積を1立方メートルとし、0.1μmから5μmまで複数の粒径を基準に等級を定める点が特徴で、ISOクラス1からISOクラス9までの9段階に区分される。半導体製造における前工程のように、クラス1からクラス10相当という極めて高い水準が要求される現場も存在する。
クラス番号と粒子数の対応関係
数字だけを眺めても、清浄度の水準は直感的にはわかりにくい。そこで代表的なISOクラスと許容粒子数の対応関係を示す。
| ISOクラス | 0.1μm以上(個/m3) | 0.5μm以上(個/m3) | 5μm以上(個/m3) |
|---|---|---|---|
| ISOクラス1 | 10 | ― | ― |
| ISOクラス3 | 1,000 | 35 | ― |
| ISOクラス5 | 100,000 | 3,520 | 29 |
| ISOクラス7 | ― | 352,000 | 2,930 |
| ISOクラス9 | ― | 35,200,000 | 293,000 |
表からもわかるとおり、クラス番号がひとつ下がるごとに許容粒子数はおよそ10分の1になる設計となっている。
半導体分野が求める極限の清浄度
清浄度の要求が最も厳しい産業のひとつが半導体製造である。パーティクル(半導体)と呼ばれる数十ナノメートル級の微粒子が回路パターンに付着すると、断線やショートを引き起こし歩留まりを大きく低下させる。フォトマスクやステッパ(縮小投影露光装置)などの精密光学装置は、わずかな粒子の付着でも露光パターンの欠陥につながるため、装置周辺のみをISOクラス1相当まで清浄化するミニエンバイロメント方式が採用される例が多い。EUV露光のように真空チャンバー内で工程が進む場合でも、搬送時の大気曝露やロードポートを介した基板出し入れの瞬間に汚染が持ち込まれるリスクは残り、SMIFのような密閉搬送規格が清浄度維持の切り札となっている。
フォトマスクと露光工程での管理
露光工程では、フォトレジストが感光する前の段階で微粒子が付着すると、パターン欠陥として次工程以降にそのまま転写されてしまう。そのためマスク保管庫やステージ周辺は局所排気とダウンフローを組み合わせ、作業員の動線を最小限に抑える設計が採られている。ウェハプロセス全体を通じて清浄度は工程間で連続的に維持される必要があり、途中で管理水準が緩むと下流工程での不良率上昇に直結する。
清浄度を支える設備と気流設計
清浄度を一定水準に維持するには、フィルタと気流、そして室圧のバランスが欠かせない。天井面に設置されたフィルタエレメント入りのHEPAフィルタは0.3μm粒子に対して99.97%以上の捕集効率を持ち、ULPAフィルタでは0.1μm粒子に対して99.9995%以上の性能が求められる。室内は隣接区画より高い圧力に保たれ、一般的な半導体クリーンルームでは差圧の目安としておよそ15Pa前後が採用される。圧力管理にはパスカル(Pa)で示される差圧計が用いられ、扉の開閉時にも外気の逆流を防ぐ設計が施される。ガス状の汚染物質に対してはケミカルフィルターが併用され、粒子だけでなく分子状汚染(AMC)も同時に除去される。以下は代表的な清浄度維持設備である。
現場での測定と維持管理の勘所
清浄度の実測にはパーティクルカウンタが用いられ、レーザー光を粒子に照射し、散乱光の強度から粒径と個数を計測する仕組みが一般的である。JIS B 9921やISO21501-4に基づく校正が定期的に必要で、校正周期はおよそ1年に一度とされる場合が多い。現場実務としては、測定点の数や測定時間を規格どおりに固定しないと、同じ室内でも数値が大きくばらつく点に注意が必要である。半導体製造装置の搬入直後は梱包材由来の粒子が持ち込まれやすく、稼働前に数日間の馴らし運転と再測定を行う工場も少なくない。清浄度の等級を一段階上げるだけで設備投資とランニングコストは大きく跳ね上がるため、製品仕様に対して過剰な等級を選ばないコスト設計の視点も、実務上は無視できない要素である。
コメント(β版)