工具用合金鋼|工具に使われる炭素鋼合金

工具用合金鋼

工具用合金鋼とは、硬度、粘度、耐摩耗性が求められる工具に特化した合金である。一般的な炭素鋼は焼入れ性が低いため、肉厚の工具には向いていないため、炭素合金を使い、特定の機械的性質を添加する。工具用合金鋼は、炭素鋼に炭素を多い炭素工具鋼(SK)、Ni、Mn、Cr、W、V、Mo、Siなどの元素を添加し、SK材の焼入れ性を高めた合金工具鋼(SKS:steel kougu special)、ダイス用工具鋼(SKD:steel kougu dies)、鍛造用工具鋼(SKT:steel kougu tanzou)などの種類がある。(参考 切削工具)

切削用工具用合金鋼

切削用工具用合金鋼(JIS記号:SKS)は、切断を目的としてた工具全般に用いられる。0.75~1.50%程度の炭素(C)に、クロム(Cr)やタングステン(W)を加えて、硬さと耐摩耗性を向上させたものである。旋盤で用いられるバイトや丸のこ、帯のこなどの切削工具に用いられる。

切削用工具用合金鋼の例

  • 冷間引抜ダイス
  • ねじ切りダイス
  • ペンチ
  • タップ
  • ナイフ
  • ドリル
  • フライス
  • バイト(旋盤)
  • ホブ
  • カッタ
  • のこ
  • やすり

金型用工具用合金鋼

鍛造やプレス加工で用いられる金型に用いられる工具用合金鋼には、冷間金型用(SKS、SKD)と熱間金型用(SKD、SKT)がある。いずれもモリブデン(Mn)やクロム(Cr)などを加えて耐摩耗性を向上させている。熱間金型用は、炭素(C)を0.25~0.50程度まで減らすことで、高温でのひび割れなどを防いでいる。熱によって軟化して磨耗が進行する。

冷間金型用の例

  • ゲージ
  • シャー刃
  • 抜き型
  • 線引きダイス
  • ねじ転造ダイス

熱間金型用の例

  • 押出ダイス
  • プレス型
  • ダイカスト型
  • ダイブロック

耐衝撃用合金鋼

耐衝撃用に用いられる工具用合金鋼は、硬度に加えて、靭性が必要とされる工具である。0.35~1.10%程度のCに、クロム(Cr)やタングステン(W)、バナジウム(V)などを加えて、焼入れによって表面を硬くしたものであり、たがねやポンチなど、衝撃を受ける工具に用いられる

耐衝撃用合金鋼の例

  • たがね
  • ポンチ
  • ハンマ
  • スパナ
  • 刻印
  • 削岩機用ピストン
  • ヘッディングダイス

炭素工具鋼 SK

炭素工具鋼(SK:steel kougu)は炭素量 0.6~1.5%で、合金元素は含まず、P、Sの少ない良質の高炭素鋼である。強度と耐摩耗性が重要であり、ほとんどが焼入れ焼戻し処理を行って使用されるが、焼入れ温度はSK1からSK6までは過共析鋼(Ac1)、SK7は亜共析鋼だからAc3のそれぞれ直上になる。耐摩耗性を必要とするような用途には炭素量の高いものを、粘り強さを必要とするような用途には炭素量の低めのものが使用される。一般的な手工具などに使用される。

炭素工具鋼の化学成分 JIS G 4401

炭素工具鋼の化学成分 JIS G 4401

合金工具鋼

合金工具鋼(SKS, SKD, SKT) は、SK材より耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱性などを向上させるために、W,Cr,V,Moなどを添加した工具鋼である.。JISでは用途別にSKS、あるいはSKD(ダイス鋼)、SKTから始まる。

  • SKS:切削工具用(タップ・丸鋸など)、耐衝撃工具用 (タガネポンチ)、冷間金型
  • SKD:熱間金型用、耐高温向け
合金工具の種類

合金工具の種類

高速度工具鋼

高速度工具鋼(SKH)は、Steel,Kougu,High-speedの文字からとっている。HSS(High Speed Steel)あるいは、ハイスなどと呼ばれ、高速回転に耐えることができる、靭性に優れた工具鋼である。ドリル、リーマ、タップ、エンドミル等の工具に用いられる。タングステンやモリブデンを加えて、硬度を保ったまま、耐摩耗性を向上した工具鋼である。タングステン系高速度鋼と、モリブデン高速度工具鋼に大分される。タングステン系高速度鋼は、硬度や耐摩耗性に優れ、さらにコバルトを加えると性能が高くなる。一方で、タングステンを減らしてモリブデンやバナジウムを加えたモリブデンもあり、高温時の硬度は劣るものの、粘り強さに優位に立つ。

  • W系(SKH2~10):硬さと耐摩耗性を重視したバイトに用いられる
  • Mo系(SKH51~57):靭性を重視したドリルやタップに用いられる

超硬合金

超硬合金(超硬)は、高速度工具鋼に比べて常温での硬さに優れ、高温域での使用においても硬度の低下は限定的な素材である。硬質な金属炭化物の粉末を焼結して作られる合金である。一般的には炭化タングステン、タングステン・カーバイドを結合剤(バインダ)としてコバルトを用いて焼結したものが多い。高温で軟化しにくいため高速切削が可能であり、耐摩耗性もあるため、最近の数値制御工作機械などで活用されている。

炭化タングステン

炭化タングステン(WC)は、タングステンカーバイドとも呼ばれ、コバルト(Co)を結合剤として固めたものである。融点が2900°Cと高温であるため、金属粉末をプレスした後、焼き固める粉末治金法で製造される。

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