圧力検出素子|圧力を電気信号へ高精度変換

圧力検出素子

圧力検出素子は、気体や液体の圧力を機械量または電気信号へ変換する要素であり、油圧・空圧機器、プロセス計装、自動車、医療機器、家電など幅広い分野で用いられる。圧力はダイアフラム等により力へ変換され、さらに抵抗値・容量・電荷・周波数などの電気パラメータへ変換される。測定形態はゲージ圧、絶対圧、差圧に大別され、対象媒体や温度、応答速度、精度、耐久性に応じて方式を選定する。要は「どの原理で微小な膜変形を読み取り、どのようにノイズ・温度・機械的ストレスの影響を抑えるか」が中心課題である。

動作原理と代表方式

圧力の機械的作用を電気量へ変換する方法には複数の系統がある。以下は代表的な方式である。

  • ひずみゲージ式(メタルフォイル):金属ダイアフラムの微小ひずみを抵抗変化として検出し、Wheatstone bridgeで電圧出力とする。長期安定性に優れる。
  • ピエゾ抵抗式(MEMS):シリコンダイアフラム上のピエゾ抵抗が応力で抵抗変化を起こす。小型・量産性に優れ、温度補償一体集積が容易。
  • 静電容量式:可動電極間の距離変化を容量変化として検出。低ドリフト・高分解能で微差圧に適する。
  • ピエゾ電気式:圧力で電荷を生じる素子を利用。動的圧力や高周波応答に強い。
  • 光学式(FBG等):繊維中のブラッグ格子の波長シフトを読み取る。電磁ノイズに強く、耐環境性が高い。
  • 共振式:共振子の周波数変化を測る方式。高安定・高精度に向くが実装は精密を要する。

一般に検出素子それ自体はトランスデューサとして位置づけられ、後段の増幅・補償・変換回路と組み合わせてセンサモジュールを構成する。

基本用語と単位

国際単位系では圧力の単位はPa(N/m²)であり、工業計測ではkPaやMPaが多用される。barやkgf/cm²との換算も現場では重要である。基準に対する扱いは、雰囲気を基準とするゲージ圧、真空を基準とする絶対圧、二点間の差を扱う差圧に分かれる。プロセス制御では差圧式を用いて流量・液位推定へ応用することが多い。

選定パラメータ

  • レンジと過圧耐性:測定上限と破壊・劣化を避ける過圧等級。
  • 精度:非直線性、ヒステリシス、繰返し性、温度ドリフトを含む。仕様書では%FSで表記される。
  • 応答:帯域幅、立上り時間。脈動やパルセーションウォータハンマ環境での実効応答に注意。
  • 媒体適合性:腐食性ガスや薬液、粘性流体への材質適合。隔膜シールや充填液の選択が要点。
  • 接続仕様:ねじポートやフランジ形状、シール方式、リーク要件。
  • 出力・電源:mV/V、0–10V、4–20mA、デジタル(I2C/SPI/CAN)など。
  • 環境耐性:温湿度、振動、衝撃、EMC、保護等級(IP)とケーブル引き回し。

信号処理とインタフェース

ひずみ系ではWheatstone bridgeの励起電圧とゲイン設計が基本である。低雑音の計装アンプ、A/D、デジタル補償(線形化・温度係数補正・零点追従)を組み合わせる。出力形態は汎用の4–20mAや0–10Vのほか、I2C/SPI等のデジタルも一般的であり、長尺配線ではコモンモード耐性やサージ対策、シールド(電気)の品質が測定安定性を左右する。

実装・配管・密封上の注意

ダイアフラム材はSUS316Lが汎用で、腐食性媒体にはハステロイ等を用いる。プロセス接続はテーパや平行ねじ、パッキン/Oリングの材質相性、表面粗さを総合的に決める。脈動やショックにはスナバーキャピラリを併用し、実効帯域を制御する。取付方向は零点シフト要因になるため、設置姿勢を固定し、機器側からの配管応力を避ける。

誤差要因と対策

  • 温度の影響:弾性率・抵抗温度係数・充填液粘性の変化により零点/スパンがずれる。多点温度補償や熱的アイソレーションを行う。
  • 機械ストレス:締付過多や偏心配管でダイアフラムが予荷重を受ける。応力緩和スペーサや応力フリーの支持を用いる。
  • 動的擾乱:脈動・共振・配管の固有振動。ダンピング素子やフィルタで帯域を整える。
  • 電磁ノイズ:配線ループ、接地不良、静電誘導。ツイストペア、適正グラウンド、シールドで抑制する。
  • 経年変化:クリープ、湿潤、封止劣化。定期校正と予防交換が有効である。

校正・トレーサビリティ

一次標準にトレーサブルなデッドウェイトテスタや精密校正器で零点・スパンを調整し、環境条件を記録する。温度ステップを併用した多点補償テーブルを内部に保持すれば、長期ドリフトや個体差を抑えられる。プロセスでは現地検証のため、ライン圧と独立基準計の二重化も実務的である。

安全・衛生・規格適合

危険場所では防爆構造やバリアの適合を確認し、過圧時の破断方向や媒体漏えいリスクを評価する。食品・医薬ではCIP/SIP適合の隔膜シールと電解研磨面が望ましい。機械設置時は機械安全電気安全の観点から、誤配接や感電、飛散の危険を低減し、保守時のロックアウト/タグアウト手順を整備する。