剛性解析
剛性解析は、荷重に対する構造・機械の変位を評価し、設計目標のたわみや位置決め精度を満たすために用いる手法である。強度が破損回避を主眼とするのに対し、剛性は変形の起こりにくさを扱う。工作機械、精密ステージ、ロボットでは微小変位が品質と生産性を支配するため、設計初期から量産まで剛性解析が行われる。静的だけでなく動的剛性も重要である。
基本概念
剛性 k=F/δ は荷重 F に対する変位 δ の割合で定義される。構造剛性は材料と形状に依存し、ヤング率 E、せん断弾性係数 G、ポアソン比 ν、断面二次モーメント I が寄与する。直列・並列合成や軸方向の分解を行い、逆数のコンプライアンスを併用して支配部位を特定する。剛性解析では荷重経路と支持条件の明確化が要点である。
方法と手順
- 要件定義:許容変位・固有値下限・励振帯域を明確化する。
- 材料・接合:E、G、ν、密度、締結条件や予荷重を整理する。
- 理想化:対称性、ビーム/シェル/ソリッドの使い分け、剛体近似を判断する。
- 境界・荷重:拘束自由度、ばね境界、面圧・温度・慣性力など実機相当で載荷する。
- 評価:変位・反力・コンプライアンス・感度を確認し、再設計指針を得る。
有限要素法(FEM)による剛性行列
FEM では要素剛性から全体剛性 K を組み立て、K u=f を解いて変位場 u を得る。拘束で剛体モードを除去し、特異行列を避ける。等方・異方、曲げ・せん断、厚肉・薄肉の効果を表現できる。剛性解析の主力手段である。
線形・非線形と接触
幾何学的非線形は大変位・大回転で剛性が状態依存となり、材料非線形は塑性化で接線剛性が低下する。接触は固着・すべり・摩擦を含み、締結部の面圧や面粗さが実効剛性を左右する。ボルトのプリロードやシムは重要設計変数であり、バネ要素や接触剛性モデルで近似する。
動的剛性とモーダル
動的剛性 K*(ω)=K−ω²M+iωC は周波数 ω に依存し、固有振動数とモード形が共振の有無を決める。FRF でピークを回避・移動し、減衰 C の調整で応答を低減する。工作機械のびびりや位置決め帯域はモーダル特性で説明できる。
評価指標とKPI
最大たわみ、等価ばね定数、構造コンプライアンス、固有値余裕、静剛性 N/μm を用いる。熱変形やクリアランスの寄与を切り分け、誤差鎖に落とし込む。満足しない場合は断面二次モーメント増強、荷重経路短縮、支持点再配置、リブ追加、材料の高 E 化を検討する。
境界条件の与え方
過拘束は実変形を過小評価し、不足拘束は剛体モードの残留を招く。対称境界で自由度を削減し、ベースの柔らかさはバネ境界で表現する。固定端は広く拘束し、荷重は面分布で与え、実機の支持や締結を忠実に反映させる。
モデル化の実務ポイント
- 接合:ボルト・溶接・接着を等価ばねや接触で表現し、面圧依存性を考慮する。
- 簡略化:小フィレや不要穴は形状抑制で置換し、計算資源を支配部位に集中する。
- 要素選択:ビーム/シェル/ソリッドを混在させ、厚みや曲率に応じて使い分ける。
- 精度管理:メッシュ独立性、境界の再現性、数値安定性を点検する。
最適化と設計探索
トポロジー最適化ではコンプライアンス最小化が典型目的で、体積や製造制約を課す。形状・寸法最適化や板厚配分、材料割当ても有効である。サロゲートモデルや感度解析で探索を加速し、試作回数を削減する。剛性解析は改善余地を可視化する。
検証と妥当性確認
静的荷重試験やモーダル試験、FRF の比較でモデルを同定・更新する。計測系の校正、温度管理、支持条件の再現が重要である。誤差要因は材料ばらつき、接触剛性の不確かさ、締結の再現性に由来する。
代表的な適用分野
工作機械の主軸・コラム、精密測定機のステージ、ロボットのリンク、建築・土木の梁・スラブ、光学ベンチ、流体機器のケーシングや配管支持に適用される。高剛性化は寸法精度・表面粗さ・スループットを高める。機械設計では重量・コスト・製造性のバランスが要点である。
実務でのチェックリスト
- 要求仕様に対する余裕度(変位・固有値・帯域)を確認する。
- 支配的な変位モードと荷重経路を特定し、設計のテコ入れ点を抽出する。
- 境界・接触・締結の仮定が実機に整合するか再点検する。
- メッシュ独立性や解の収束性、結果の感度を評価する。