ルーツポンプ|非接触容積移送でクリーン高真空

ルーツポンプ

ルーツポンプは、二つの同期歯車で位相制御されたロータがハウジング内部で非接触回転し、一定体積の気体を連続的に搬送する正容積形の真空ポンプである。内部圧縮がほとんどないため圧力差の大きい運転は不得手で、背圧側に油回転式やドライ式の補助ポンプを接続して用いるのが通例である。高い排気速度によって粗〜中真空域での立ち上げ時間を短縮でき、半導体製造、真空冶金、コーティング装置などでブースターポンプとして広く採用されている。

動作原理

ルーツポンプは2枚(または3枚)ラジアルロータが互いに噛み合わずに回転し、入口側の気体をロータとケーシングの間隙に取り込み、出口側へ等容搬送する。ロータ同士は外部歯車で同期し非接触を保つため、潤滑油が気体経路に侵入しにくい。吐出側が高圧になるとリーククリアランスを通じて逆流が増えるため、許容差圧内で運転する必要がある。

圧力範囲と性能指標

有効圧力範囲は一般に粗〜中真空域(おおよそ105〜100Pa程度)である。排気の基本式は Q = S・P(Q: 吐出量、S: 排気速度、P: 圧力)で表され、直列接続した補助ポンプとの間でスループット Q が整合する点で運転が安定する。単体では大きな圧縮比をとれないため、背圧側にロータリーベーンポンプドライスクリューポンプを組み合わせ、差圧ΔPを監視するのが標準である。

構造と材料

主要部はロータ、ハウジング、同期歯車、軸受・シール室から成る。プロセスガス通路は非接触で、クリアランスは熱膨張を見込んで微小に設定する。ギア室や軸受には潤滑油を用いるが、気体経路は原理上オイルフリー性を保ちやすい。腐食性や微粉体を扱う場合は、耐食コーティングやパージラインの追加が有効である。

利点・欠点

  • 利点:高い比排気速度、短い到達時間、オイルフリー性に優れる流路、広い適用分野。
  • 欠点:単体で大気排気できない、過大差圧で過熱・トリップのリスク、クリアランス依存で微粒子に弱い。

運用・制御

立上げは背圧ポンプのみで粗引きし、所定圧(例:数kPa〜数百Pa)でルーツポンプを投入する。差圧スイッチやバイパスバルブでΔPを制限し、温度保護と過電流保護を組み合わせる。プロセスによってはN2パージを併用し、逆流や凝縮物の堆積を抑制する。到達圧やリーク点検には熱伝導ゲージイオンゲージを使い分ける。

代表的な用途

  • 半導体・ディスプレイ:真空搬送、CVD/PVD成膜の前段排気。
  • 真空冶金・熱処理:脱ガスや炉の立上げ短縮。
  • 表面改質・コーティング:スパッタ装置での初期排気。
  • 分析・研究機器:チャンバーの粗引きから中真空へのブースト。

他方式との比較

ロータリーベーンポンプは単体での信頼性とコストに優れるが、蒸気負荷で油劣化が課題となる。一方、ドライスクリューポンプはプロセス適合性が高いが価格が高い。高真空域を要する装置では、前段にルーツポンプ+背圧ポンプを置き、後段に拡散ポンプなどを接続する多段構成が一般的である。

設計・選定の要点

  1. 必要スループットQと目標圧力Pから所要排気速度Sを概算する(Q = S・P)。
  2. 配管のコンダクタンスを評価し、実効S低下を見込む。短く太い配管が有利である。
  3. 背圧ポンプのSとルーツポンプの許容ΔPから、投入圧と運転点を決める。
  4. 排気対象の凝縮性・粉体性を確認し、トラップ・フィルタとパージを設ける。
  5. 計測は圧力単位パスカル(Pa)で統一し、レンジに応じてゲージを切替える。

保守・トラブル対策

  • 過熱:差圧超過が原因であることが多い。投入圧の見直しとバイパス設定を行う。
  • 振動・異音:軸受摩耗やロータバランスを点検する。粉体吸入時は内部清掃が必要。
  • 性能低下:リーク、配管コンダクタンス不足、背圧側能力不足を系統的に切り分ける。