熱伝導ゲージ|熱伝導で低真空圧を高精度迅速測定

熱伝導ゲージ

熱伝導ゲージは、加熱したフィラメントから気体へ逃げる熱が圧力で変化する性質を利用して圧力(真空度)を測定する接触式真空計である。代表例はPirani gauge(ピラニ真空計)と熱電対真空計(TC gauge)で、装置のポンプダウン監視やプロセス制御に広く用いられる。適用範囲はおおむね105〜10-1 Pa程度(機種により差)で、指示値は気体種に依存するため補正が必要となる。構造が簡潔で堅牢、レスポンスが速いという実務上の利点がある一方、超高真空の一次標準には不向きである。

測定原理

細線(PtやWなど)に電流を流し加熱すると、線の温度は気体との熱交換で決まる。自由分子流領域では気体熱伝導による放熱量が圧力にほぼ比例し、フィラメント温度が下がる。抵抗温度係数を用いて抵抗値変化から温度を求め、結果として圧力を読み取る。連続流側では対流・バルク伝熱の影響が増し、関係は非線形化する。Knudsen number(Kn)が大きいほど分子と壁衝突支配となり、qgas≈C·P·ΔTの近似が成り立つ。

  1. 電力収支:Pin=I2R=qgas+qcond+qrad
  2. 自由分子流でqgas∝P、指示は圧力に感度が高い
  3. 高圧側では対流・自然対流が増し感度低下、低圧極限では放射が支配的

構造と方式

  • ピラニ方式:ブリッジ回路で抵抗変化を検出。定電流型と定温度型(一定温度を保つため電力を制御)の2系統がある。
  • 熱電対方式:フィラメント温度を熱電対出力で検出。電子回路が単純で堅牢。
  • サーミスタ方式:半導体ビーズの大きい温度係数を利用し高感度化。
  • フィラメント材:Ptは化学的安定性、Wは高温耐性に優れる。保護回路で大気急入時の焼損を防ぐ。

実装は小型の測定ヘッドと指示計からなり、ヘッドは汚染源から距離を置く。配線は熱起電力とノイズを低減するためツイストペアやシールドを用いる。

測定範囲と特性

一般に103〜10-1 Pa付近で直線性が良好となり、上限側は対流の影響、下限側は放射・固体伝導が支配し感度が落ちる。応答時間は〜0.1〜1 s程度で、ポンプダウン曲線の観察やリーク挙動の定性的診断に適する。測定姿勢や周囲温度、フィラメント支持の熱伝導もゼロ点・感度に影響する。

気体依存性と校正

示度は気体の熱伝導率・分子量に依存する。通常、N2基準で目盛り付けし、H2やHeでは過小指示、ArやCO2では過大指示などの傾向が出る。実務ではPtrue=kgas·Pindの補正係数を用いる。工程開始時に静電容量式(capacitance manometer)など一次性の高い参照計で多点校正すると良い。

長所・短所

  • 長所:構造簡潔、コスト低、堅牢、広い運用圧力域、応答が速い。
  • 短所:気体種依存、超高真空では感度不足、汚染・ガス吸着でドリフト、酸化性雰囲気でフィラメント劣化。

運用・メンテナンス

  • 汚染管理:油拡散・プロセス副生成物の付着は感度を低下させる。定期的にヘッドを交換・洗浄する。
  • 焼損防止:大気急入時は電流を自動遮断し、O2雰囲気での高温動作を避ける。
  • 熱安定化:ウォームアップ後にゼロ点調整。周囲温度変動に対しては定温度型が有利。
  • 配置:ポンプに近すぎると流速・温度勾配の影響が出るため配管径とKnを考慮し配置する。

用途

成膜・表面改質、パッケージ封止、リークテストの粗リーク検出、分析装置の真空インターロック制御などに用いられる。プロセスの再現性確保のため、熱伝導ゲージと一次参照計の組合せが推奨される。

関連する真空計との比較

  • 静電容量式:気体非依存で精密。コストとサイズは増すが校正の基準に最適。
  • マクラウド:標準性は高いが日常運用には不向き。
  • イオン化真空計:10-2 Pa以下で高感度。ただしアウトガスやX線効果、放射化学的影響に留意。