ライフサイクルアセスメント
ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment、略称LCA)とは、製品やサービスが原材料の採取段階から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルに至るまでの全過程において環境に与える負荷を定量的に把握し、評価するための手法である。国際標準化機構(ISO)によって規格化されており、環境負荷の「見える化」を通じて製品設計の改善や政策決定、企業の環境経営に広く活用されている。近年では気候変動対策や循環型社会の実現に向けた基盤技術として、その重要性がいっそう高まっている。
定義と目的
ライフサイクルアセスメントの目的は、単一の工程や特定の排出物のみに着目するのではなく、資源の採取から廃棄に至る一連の流れ全体を対象として環境負荷を評価する点にある。従来の環境評価手法が特定の工場や設備からの排出量に限定されがちであったのに対し、この手法は原材料調達から流通、消費、廃棄までを俯瞰する視点を提供する。これにより、ある工程での負荷削減が別の工程における負荷増加を招くという「負荷の転嫁」を回避し、製品全体として真に環境性能の高い設計を導くことが可能になる。
全てのものは、ライフサイクルアセスメントつまり製品が使われる時だけでなく、作られる過程から輸送、販売、廃棄に至る全ての過程で化石燃料を消費するかつまり二酸化炭素をどれだけ排出するかを評価する事が必要です。
— 大平貴之 (@ohiratec_mega) September 13, 2015
評価手法とプロセス
評価プロセスは国際規格ISO14040およびISO14044に準拠し、おおむね四つの段階から構成される。第一段階は「目的と調査範囲の設定」であり、評価対象とする製品システムの境界条件や機能単位を明確に定義する。第二段階は「インベントリ分析」であり、原材料の投入量やエネルギー消費量、大気・水域への排出物量などのデータを収集し集計する。第三段階は「インパクト評価」であり、収集したデータを地球温暖化や資源枯渇といった具体的な環境影響カテゴリーへと変換する。第四段階は「結果の解釈」であり、得られた評価結果の妥当性を検証したうえで、改善すべき工程を特定する。
ライフサイクルアセスメントの実施手順
目的と範囲の設定→インベントリ分析→インパクト評価→結果の解釈→報告→クリティカルレビュー#Twitterでテスト勉強奴
— もやし (@D_icon30) February 3, 2016
インベントリ分析
ライフサイクルアセスメントの要となるのが、各工程で実際に消費される資源量や排出される物質量を正確に把握するインベントリ分析である。例えば自動車を対象とする場合、車体の製造工程で使用される鉄鋼やアルミニウムなどの原材料と、それらを加工する際の電力や燃料の消費量を調査し、同時に排出ガスや廃棄物量を集計する。また、使用段階の燃料消費や整備過程でのオイル交換、最終的な解体処理の状況まで追跡することで、全体的な環境負荷が把握できる。データの精度や代表性が評価結果を左右するため、多様な情報源や統計データの活用が不可欠である。
インパクト評価と指標
インパクト評価の段階では、温室効果ガスの排出をCO2換算して地球温暖化への寄与を測るほか、SOxやNOxなどによる酸性化、揮発性有機化合物による光化学オキシダント生成、廃棄物による土地埋立への影響など複数の指標を同時に評価する。これによって、ある工程では温室効果ガス排出量を大幅に削減できても、別の工程で水質汚染や資源枯渇を引き起こす可能性が明らかになる。このような多次元評価がライフサイクルアセスメントの特徴であり、単一の指標では見落としがちなリスクやトレードオフを可視化する効果がある。
環境影響カテゴリー
評価対象となる環境影響カテゴリーは多岐にわたる。代表的なものには温室効果ガス排出に起因する地球温暖化、フロン類などによるオゾン層破壊、硫黄酸化物や窒素酸化物による酸性化、富栄養化、化石燃料や鉱物資源の枯渇などが含まれる。これらのカテゴリーは相互に関連しており、一つの製品が複数の影響を同時に及ぼす場合も少なくない。主なカテゴリーと要因物質の関係は次の通りである。
| 影響カテゴリー | 主な要因物質 |
|---|---|
| 地球温暖化 | 二酸化炭素、メタン |
| 酸性化 | 硫黄酸化物、窒素酸化物 |
| 資源枯渇 | 化石燃料、鉱物資源 |
| 富栄養化 | 窒素化合物、リン化合物 |
適用分野
ライフサイクルアセスメントは製造業を中心に、建築、食品、エネルギー分野など幅広い領域で活用されている。金属工学の分野では、金属材料の精錬から加工、使用、リサイクルに至る過程でのエネルギー消費や排出物を評価する事例が多く見られる。建築分野においては建材の製造から建物の解体・廃棄までを対象とした評価が進められており、省エネルギー設計の指標としても用いられている。食品分野でも、生産から流通、廃棄までを対象とした評価が進んでいる。
日本における普及状況
日本国内では経済産業省やJIS規格を通じた標準化が進められており、ISO規格に対応するJIS Q 14040シリーズとして国内規格化されている。産業界においては環境マネジメントシステムと連携した運用が一般的であり、製品の環境ラベルや、製品全体の環境情報を開示する取り組みにも応用されている。学術面でも大学や研究機関において評価手法の高度化に向けた研究が続けられている。
企業や行政の導入事例
自動車メーカーでは新車の開発段階からライフサイクルアセスメントを実施し、各部品のリサイクル容易性や燃料消費効率の検討材料に用いている。家電業界でも製品の小型化や省エネルギー化を進める際、製造工程だけでなく使用段階における電力消費やリサイクル性を総合的に比較検討する。行政や国際機関においては、建設プロジェクトや公共調達の政策決定にライフサイクルアセスメントを活用し、持続可能なインフラや都市計画の推進に役立てる事例が増えている。
自動車のライフサイクルアセスメントは、CO2排出量に関していえば(厳密な数値はメーカーが出していないので比較できないが、走行時排出量の比率が大変大きいため、結局燃費値が最重要となり)「純ガソリン自動車>ハイブリッド車>電気自動車」の順だというのは常識ではないのか(何か見た)。
— たられば (@tarareba722) February 20, 2018
カーボンフットプリントとの違い
混同されやすい概念にカーボンフットプリントがあるが、これは地球温暖化影響のみに特化した指標である点でライフサイクルアセスメントとは異なる。ライフサイクルアセスメントが酸性化や資源枯渇など複数の環境影響を包括的に評価するのに対し、カーボンフットプリントは温室効果ガス排出量という単一の指標に絞って算定される点に特徴がある。両者は目的に応じて使い分けられ、簡易的な評価にはカーボンフットプリントが、包括的な評価には本手法が用いられる傾向にある。
こんにちは!野村ゼミです☀️🌱
今年一発目の投稿は、「ライフサイクルアセスメント」についてご紹介します♻️ pic.twitter.com/zsAVLa1UKp— 創価大学 野村ゼミ (@nomnominity) January 20, 2021
課題と限界
この手法には解決すべき課題も存在する。第一に、評価に必要なデータの収集には多大な労力とコストを要し、特に産業廃棄物の処理過程など末端工程に関するデータが不足しがちである。第二に、評価対象とするシステムの境界設定によって結果が大きく変動するため、異なる調査結果同士を単純に比較することが困難になる場合がある。第三に、地域や国によってエネルギー構成や輸送距離が異なるため、同一の製品であっても評価結果に差異が生じる点も指摘されている。こうした課題を踏まえ、データベースの整備や算定手法の統一に向けた取り組みがサステナビリティ分野において継続的に進められている。
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