プラトンの著書
プラトンの著書は、彼の生涯を通じて三つの主要な時期に分類される。それぞれの時期は哲学的関心の移り変わりを反映し、思想の深化を示している。青年期にはソクラテスの死を契機に初期対話篇が書かれ、中期にはアカデメイア設立を経てイデア論が展開される。後期にはより抽象的な弁証法や論理的検討が中心となり、形而上学的関心が顕著になる。
青年期の著書と倫理的探究
青年期に属する書籍は、プラトンがアカデメイアを設立する以前、ソクラテスの死後すぐに執筆されたものである。これらは主に道徳的徳や人間の性質を問うもので、対話形式で書かれた。『小ヒッピアス』(偽りについて)、『アルキビアデス』(人間の本性について)、『ソクラテスの弁明』、『エウテュプロン』(敬虔について)、『クリトン』(義務について)、『ラケス』(勇気について)などが含まれる。これらの対話篇では、答えを出すというより、読者に問いを投げかけ、考える契機を提供する。
初期対話篇の主要テーマ
- 『プロタゴラス』・・・ソフィスト達との論争
- 『ゴルギアス』・・・弁論と正義
- 『リュシス』・・・友情
- 『イオン』・・・詩と霊感
- 『クテュデモス』・・・詭弁術批判
- 『メネクセノス』・・・追悼演説
中期の著書とイデア論の展開
アカデメイア設立後から第二回シケリア旅行までの約20年間に執筆された書籍が中期対話篇に該当する。この時期の特徴は、イデア論の展開と、ソクラテスが理想化された存在として登場する点である。主な著書には『パイドン』(魂の不死)、『パイドロス』(愛と美)、『国家』(正義と理想国家)、『パルメニデス』(イデアへの批判的検討)、『饗宴』(愛の段階)などがある。これらの作品では、真の知識は感覚ではなく、イデアと呼ばれる永遠不変の実在に基づくとする。
『国家』と理想国家論
『国家』は中期の代表的な著書であり、全10巻で構成される。テーマは正義の定義とそれを体現する国家の設計である。人間の魂を理性・気概・欲望の三部分に分け、これに対応する三階級(統治者・防衛者・生産者)を提案する。理想の支配者は「哲人王」であり、真理と善のイデアを認識する者とされる。教育制度や女性の地位、詩の検閲なども論じられ、思想的完成度が高い書籍とされる。
後期の著書と論理的展開
第二回シケリア旅行以後に書かれた後期対話篇では、プラトンの関心が倫理や政治から論理、分類、弁証法に移行する。ソクラテスは影を潜め、無名の哲学者や他の登場人物が主導する。主要な著書には『ソフィステス』(存在と非存在)、『政治家』(政治制度の理論)、『ピレボス』(快楽と理性)、『法律』(現実的立法論)、『エピノミス』(哲学者の生)などがある。これらでは、徳のような一般概念がより詳細な区分に分解され、その関係性を通して理論的に分析されている。
分類と弁証法の方法
- 『ソフィステス』・・・存在と非存在の弁証法的理解
- 『政治家』・・・統治と分類の手法
- 『ピレボス』・・・快楽と善の定義
- 『法律』・・・現実社会に適用可能な法体系の設計
- 『エピノミス』・・・哲学的生活の完成
書簡と現存する資料
プラトンの著作の中には、彼が直接書いたとされる書簡も含まれるが、その真正性については現在も議論が続いている。とくに「第七書簡」は彼自身の政治的経験や哲学への信念が述べられており、伝記的資料としても注目される。これらの書籍や書簡は中世・近代を経て現代まで受け継がれ、多くの学術訳がなされている。