ブルドン管型圧力計
ブルドン管型圧力計は、弾性金属管の形状変化を機械的に拡大し指示針で圧力を読む機械式圧力計である。偏平なC字状またはらせん状の金属管(Bourdon tube)が、内圧により丸くなろうとする弾性変形を生じ、その自由端の微小変位をリンク・歯車機構で回転角に変換して目盛板に表示する。堅牢、受圧媒体の温度範囲が広い、電源不要といった長所をもち、配管・ボイラ・油空圧装置など製造現場で最も普及している。単位はパスカル(Pa)が基本であり、国際単位系(SI)に基づく校正により信頼性を確保する。
作動原理
ブルドン管型圧力計の感圧部は偏平断面の湾曲管で、内圧が上昇すると断面が円化して曲率が減少し、管端が外側へ移動する。自由端の変位はリンク、セクタギア、ピニオンを介して指示針の角変位に変換される。小変位領域では圧力pと指示角θが概ね比例関係を示すが、材料のヒステリシスや摩擦で非線形と残留誤差が生じる。大気圧基準のゲージ圧表示が一般的で、英語では“Bourdon tube pressure gauge”と呼ばれる。
構造と主要部品
主要要素は感圧管、ムーブメント(リンク・レバー・歯車)、ケースと窓、指示板、過圧保護・安全逃がし機構である。管材には黄銅・りん青銅・ステンレス鋼が用いられ、媒体の腐食性や温度で選定する。防振・防塵のためにケースに液封(グリセリン・シリコン油)を施すタイプもある。安全のため背面ブローアウトや仕切り板を備え、破損時に前面へ破片が飛散しないよう配慮する。
- 感圧管:C形・らせん形・螺線形で感度とストロークを設計
- ムーブメント:バックラッシュ低減、温度変化を考慮した材質選定
- ケース:IP等級、液封構造、ブローアウトバック
測定範囲と精度
ブルドン管型圧力計はおよそ−0.1〜数百MPaまで幅広いレンジで製作される。一般的な工業用の精度等級は指示全スケール(F.S.)に対する±1.0〜2.5%程度で、温度影響(感度変化・ゼロシフト)や姿勢差、指示機構の摩耗が不確かさに寄与する。極低圧では管の剛性が支配的となり感度が不足するため、真空領域では原理の異なる計器(例:熱伝導ゲージ、冷陰極ゲージ、ペニングゲージ)を用いる。
絶対圧・ゲージ圧・差圧
表示様式には大気圧基準のゲージ圧、真空を基準にした絶対圧、二つの圧力差を測る差圧がある。ブルドン管型圧力計は構造上ゲージ圧が主流だが、封入基準室を設けた絶対圧型や、二本の管とリンク機構を組み合わせた差圧型もある。粘性・腐食性流体にはダイヤフラムシールやキャピラリを介して接続し、衛生仕様や高温対応を図る。
校正とトレーサビリティ
校正はSI単位系にトレースされた基準との比較で行う。基準圧力発生器(デッドウェイトテスタ)や標準デジタル圧力計を用い、ゼロ点・スパン・直線性・ヒステリシスを評価する。温度は23±2℃など安定条件に保ち、上昇・下降両過程の指示を記録することが望ましい。結果は不確かさとともに記録し、定期的な再校正で信頼性を維持する。
- ゼロ調整を実施
- 既知圧力点で指示を取得(昇圧・降圧)
- 回帰直線と偏差を算出
- 不確かさを見積もり証明書に記載
圧力単位はPaを基本とし、SIに基づくトレーサビリティ体系を整える。
使用上の注意と選定
選定ではレンジ(常用圧の2/3付近が目安)、媒体の温度・腐食性、脈動・サージ、振動、取付姿勢、可読性(文字高・目盛間隔)を総合的に評価する。脈動にはスナバーやオリフィス、振動には液封型、温度にはキャピラリや冷却サイホンを併用する。過圧は精度劣化や破損を招くため、セーフティバルブや過圧ストップを検討する。
- 脈動対策:スナバー、ニードル弁
- 振動対策:グリセリン封入ケース
- 高温対策:サイホン、熱隔離
- 腐食対策:SUS316L、ハステロイ等の接液材
応用と限界
ブルドン管型圧力計は配管圧・油圧・ガスボンベなどで信頼性が高く、点検容易、耐電磁ノイズに優れる。一方、微小圧や超高真空、急峻な過渡応答が必要な用途には不向きで、真空装置ではポンプ到達圧力に応じて他原理計器を併用する。たとえば粗圧域は粗真空、極限域は超高真空として区分され、到達圧が極めて低い系では測定と同時に拡散ポンプなどの真空技術と組み合わせて管理する。
関連規格・保守
関連規格としてJIS B 7505(圧力計)や用途別規格がある。定期点検では外観(窓割れ・ケース腐食)、ゼロ点、指針のスティック、漏れ、ムーブメントの摩耗を確認し、異常があれば交換・校正を行う。保管は衝撃・高温多湿を避け、輸送時は保護キャップと緩衝材を用いる。これらを遵守すれば、ブルドン管型圧力計は長期にわたり安定した計測を提供する。