エトムント・フッサール|思想と現象学

エトムント・グスタフ・アルブレヒト・フッサール  Edmund Gustav Albrecht Husserl

フッサール(1859.4.8 – 1938.4.27)オーストリアの哲学者。主著は『論理学研究』、『イデーン』、『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』。人間的認識の基礎づけの探究に一生を捧げ、現象学を築いた。当初は、心理学の観点から数学的概念を分析しようとしたが、フレーゲからなされた批判を受け入れた。初期の研究を乗り越え、論理学と数学を経験に依存せず、そのため心理学とははっきりと区別された「純粋現象学」に到る。フッサール哲学は主観に生じた現れ(現象)を分析して現象の本質に迫る現象学である。現象学を厳密な学として確立することにより主観はどのようにして客観をとらえるかという認識論上の難問の解決を意図した。フッサール現象学ハイデガーをはじめ、サルトルメルロ=ポンティ、レヴィナスらの研究に大きな影響を与えた。

フッサールの生涯

1859年、オーストリア領プロニッツでユダヤ人の家庭に生まれた。ベルリン大学で数学、ウィーン大学ではフランツ・ブレンターノについて心理学を研究した。1900年、フッサールの研究は高く評価され、ゲッチンゲン大学の哲学教授に任命される。1916年、フライブルク大学の教授職に移る。1929年、フライブルクで余生を送ったが、晩年はユダヤ人の家系であったがゆえに心労と社会的制約の中で不幸な境遇にあった。

フッサールの略年

1859年 オーストリアに生まれる。
1876年 ライプツィヒ大字で数字を学ぶ。
1881年 ウィーン大学でブレンターノの講義を聴く。
1900年 『論理学研究』第1卷公刊。
1901年 ゲッティンゲン、フライブルク大字で学ぶ。 (〜1928)
1907年 『現象学の理念』謁義。
1913年 『イデーン』公刊。
1933年 ナチスにより大学教授資格剥奪。
1938年 死去。45000頁あまリの遺稿をルーヴァンに保管。 「フッサール文庫」創設。
1950年 『フッサリアーナ』刊行開始。

現象学の基本的な方法

フッサール現象学の基本的な方法は、自分自身の意識内容の精査の、外的な原因や帰結に関するいっさいの前提を排除する。心的作用の本質的性格を見極め、人間的認識の諸々の真理を見出すことにある。

志向的関係

知覚は、ひとつの作用であるが、そのなかには対象が含まれ、意味が支持されている。また、この関係を志向的関係という。対象の志向的内在の中に精神現象の特色がある。

論理的諸研究

フッサールの主著のうちのひとつに『論理的諸研究』というものがある。その中で作用と内容と対象といったような区別の未だ起こらない立場、現象学的立場に想到し、そこから一切を考えようとした。フッサールはまず、事実と本質とを区別する。個々の事実に対して一般的なものを立てたのである。アリストテレスのエイドスのように、個物はエイドスたる本質によって個物たりえる。しかもこのような本質はすべての事実が直観的に認識される。つまり、事実が与えられるとき、同時に本質も与えられてあるのである。しかし、このことは、本質直観の独立性を防ぐものではなく、むしろ我々は、根本的な立場の変更によって、事実の直観から本質のみの直観へ移行することができる。フッサールはこのような立場の変更を形相的還元、もしくは本質的還元と名づけた。これによって、本質の直観、つまり本質学が成立する。

現象学的還元(エポケー)

現象学は本質全般に関する学ではない。現象学は最も根源なる本質、絶対に確実に与えられている事実に関する学であり、我々の意識の本質、つまり純粋意識と呼ばれるものに関する学である。では、これを得るための手続きとはどのようなものだろうか。まず、我々の普通一般の自然的な立場を取り去り、そのような判断中止(エポケー)を行う。次に、内在的な意識をそれ自体として見出さなければならない。これを現象学的還元という。

純粋意識の構造

フッサールは、現象学的還元の立場を確立した後、純粋意識の構造についての分析を行う。純粋意識は、ノエシス(作用面)とノエマ(対象面)の二つの面を持つ。ノエシスとノエマの関係は、絶対的な相関であり、平行関係である。すなわち、ノエマはノエシスによって制約され、ノエシスはノエマを構成する。一定のノエマは必ず、これに対応する一定のノエシスをもち、この逆も同じように成立する。フッサールの目的は、結局、諸科学に絶対的な確実性を与えることであり、同時に厳密科学としての哲学を樹立することであった。

哲学者たるもの

哲学者たるもの何事をもすでに保障済みのものとみなすべきではなく、自分がすでになしえたことを放棄して一から始め直す準備をしなければならない。

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