パッケージ基板
パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)をマザーボードなどの実装基板に接続するための中継基板であり、ICパッケージの核心部材である。チップ側の微細な端子間隔(ピッチ)をマザーボード側が受け入れられる間隔まで拡大するピッチ変換機能と、外部応力・湿気・酸化からチップを保護する機能、さらに動作中の発熱を効率よく外部へ逃がす放熱機能を併せ持つ。一般的なプリント配線基板とは異なり、半導体チップ直下に配置されることを前提に設計されているため、より高密度な配線・より厳密な寸法安定性・より低い誘電特性が求められる。近年のAI・高性能コンピューティング市場の拡大に伴い、FC-BGA(フリップチップ・ボール・グリッド・アレイ)型のパッケージ基板が半導体サプライチェーン全体のボトルネックとして注目されている。
役割と機能
パッケージ基板が担う中心的な役割は、スケール変換・保護・放熱・電源安定化の4機能に集約される。半導体チップ上の配線ピッチはサブミクロンスケールであり、そのままでは一般のプリント配線基板への直接実装が困難である。パッケージ基板はチップ側のマイクロメートル単位のパッドをミリメートルスケールの端子間隔へと段階的に広げ、マザーボードとの接続を可能にする。同時に、エポキシ樹脂系絶縁層や銅箔配線によってチップを環境汚染・振動・衝撃から保護し、内蔵されたビア(層間接続孔)を通じた熱伝導経路によってチップの温度上昇を抑制する。電源インテグリティの観点では、基板内に分散配置されたデカップリング容量が電圧変動を平滑化し、高速動作時のノイズを低減する。
主な種類
パッケージ基板はチップとの接合方式および外部端子形状によって複数の種類に分類される。最も普及しているBGA(Ball Grid Array)は、基板裏面に球状のはんだボールを格子状に配列した形式であり、多ピン化が容易なため現在の主流となっている。なかでもFC-BGAはフリップチップ実装と組み合わせた高性能向け基板であり、CPUやGPUなどの大規模プロセッサに広く採用される。LGA(Land Grid Array)は基板側に平坦なパッドのみを設ける形式で、低背・高密度の実装に適する。一方、チップサイズとほぼ同等まで小型化したCSP(Chip Scale Package)はスマートフォンや小型IoTデバイスに向いており、ウェーハ上で直接完成させるWL-CSP(Wafer Level CSP)も普及している。用途や性能要件に応じてこれらを使い分けることが、システム設計の基本となる。
構造と材料
パッケージ基板は絶縁層と銅配線層を交互に積み重ねた多層構造をとる。コア基板にはガラスクロス含浸エポキシ樹脂(FR-4系)が用いられることが多いが、高性能品ではBT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂やセラミック材料が選ばれる場合もある。コアの上下にビルドアップ層を形成する際の絶縁材料として、ABF(Ajinomoto Build-up Film:味の素ビルドアップフィルム)が事実上の業界標準となっている。ABFは表面平滑性が高くレーザー加工性に優れ、低誘電率・低誘電正接による高速信号伝送と低熱膨張係数(CTE)による反り抑制を同時に実現する。層間接続にはレーザードリルで形成したブラインドビアやスタックビアが使われ、配線幅・空間は最先端品で数μmオーダーにまで微細化が進んでいる。
ビルドアップ工法
ビルドアップ工法とは、コア基板の上に絶縁フィルムを1層ずつ積み重ね、各層にビアホールを形成して銅めっきで配線を構築する製造方式である。フォトリソグラフィ・エッチングではなく、レーザー穴あけ後のセミアディティブプロセス(SAP)またはmSAP(モディファイドSAP)によって微細配線を形成するため、従来のサブトラクティブ法では困難な数μm級のラインアンドスペースが実現できる。この工法の反復回数が増えるほど配線密度は高まるが、各層の位置合わせ精度管理と反り制御が歩留まりを左右する。最先端のAIアクセラレータ向けFC-BGA基板では、ビルドアップ層が10層を超える製品も登場している。
チップとの接続方法
チップとパッケージ基板を電気的に接続する方式は、主にワイヤボンディングとフリップチップ実装の2種類に大別される。ワイヤボンディングはチップを正立したまま基板に固定し、金・アルミなどの細線でチップパッドと基板ランドを接続する古典的な手法であり、量産性とコストに優れる。一方、フリップチップ実装ではチップを反転させ、チップ面のバンプ(金属突起)と基板パッドを直接はんだ接合する。配線長の短縮により高速・低ノイズ動作が実現でき、I/O密度も格段に高まるため、高性能プロセッサではほぼ標準化されている。フリップチップ実装後はチップと基板の熱膨張差によるバンプ破損を防ぐため、アンダーフィル樹脂が充填される。リードフレームを用いた従来型パッケージとは異なり、リードフレーム不要のパッケージ基板構造はより高密度な端子配置を可能にする。
先端パッケージ技術との関係
HBM(高帯域幅メモリ)を搭載したAIアクセラレータや、複数のチップレットを組み合わせたSiP(System in Package)など、先端パッケージ技術の進展に伴いパッケージ基板への要求も高度化している。TSMCのCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)に代表される2.5D実装では、シリコンインターポーザ上に複数チップを並置し、そのインターポーザごとパッケージ基板に搭載する構造をとる。この場合、基板はインターポーザとマザーボードの間の接続層として機能し、電源供給・信号完全性・放熱のすべてをより高いレベルで管理しなければならない。さらに3D積層パッケージでは基板の面積が100mm角を超える大型品が必要となり、反り管理と薄層化が同時に求められる難易度の高い領域となっている。トランスファーモールドによる樹脂封止と組み合わせることで、信頼性と量産性を両立する製品設計が行われている。
市場と主要メーカー
パッケージ基板市場は半導体の高性能化・AI需要の拡大を背景に急成長しており、FC-BGA基板を中心に供給不足が継続的な課題となっている。主要メーカーとしては、台湾のUnimicreon・Nan Ya PCB・Kinsus、韓国のSamsung Electro-Mechanics、日本のイビデン・新光電気工業・TOPPANなどが高シェアを占める。日本メーカーはビルドアップ技術と材料開発で高い競争力を持ち、特に味の素のABF材料は全世界のFC-BGA基板製造に不可欠な部材として市場を独占的に支配する構図が続いている。一方、データセンター向けAIチップの需要増加を受け、各社が大規模な設備投資を進めており、製造能力の拡充が業界全体の急務となっている。
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