バッテリークーリングプレート
バッテリークーリングプレートは、電気自動車やハイブリッド車のリチウムイオン電池に生じる発熱を効率的に拡散・除去し、セル温度を均一かつ安全な範囲に保つための熱マネジメント部品である。セル直下またはセル側面に配置され、冷却媒体(多くは水−エチレングリコール系)を流す流路や、高熱伝導の金属基板、熱伝導シート(TIM)などを組み合わせて熱抵抗を最小化する。温度むらの抑制、寿命劣化の抑止、急速充電時の発熱対策、寒冷時の加熱支援(ヒートポンプと併用)まで担うため、電池性能・安全性・信頼性を左右する中核要素である。
概要と役割
バッテリークーリングプレートの主目的は、セル発熱(内部抵抗由来のジュール熱や反応熱)を素早く吸い上げ、冷却媒体へ渡すことである。設計指標は、セル面内の温度均一度(例:ΔT≤3℃目安)、熱抵抗(K/W)、圧力損失(kPa)、流量(L/min)、重量・容積、耐食性、絶縁耐力などである。これらのバランス最適化が航続距離、出力、充電速度、寿命、さらには安全マージン(サーマルランアウェイ拡大抑制)に直結する。
構造と材料
- 基材:アルミニウム合金が一般的で、熱伝導性と軽量性、成形性のバランスが良い。ステンレスや銅系は耐食・伝熱で利点があるが重量やコスト、電食リスクの考慮を要する。
- 流路:マイクロチャネル、ヘリンボーン、蛇行(セpentine)、分配−合流型マニホールドなど。各セル面に均等に冷媒が行き渡る配慮が重要である。
- 伝熱インターフェース:ギャップフィラーやグラファイトシートなどのTIMで接触熱抵抗を低減する。
- シール:Oリングやろう付け接合部のリーク防止。冷媒との化学適合性と耐圧を確保する。
- 絶縁:高電圧系に接近するため、クリアランス・沿面距離とコーティング設計が必要である。
熱マネジメントの原理
バッテリークーリングプレートは、セル→TIM→金属基板→冷媒の熱経路を最短・低抵抗化する思想で設計する。流路の乱流化で対流熱伝達係数を高めつつ、圧力損失との最適点を探る。加えて、セル列方向の温度むらを避けるため、入口・出口のマニホールド形状や流路ピッチ、分配比率を制御する。近年はベイパーチャンバーやヒートパイプを組み込む構造も検討され、瞬間的ピーク熱を平準化する手法が増えている。
冷媒と制御
- 冷媒:水−EG(またはPG)混合液が主流で、腐食抑制剤と凍結防止の添加を行う。誘電性流体を用いる方式は漏えい時の電気的安全性に利点がある。
- 制御:ポンプ流量、三方弁、チラー(HVAC統合)、ヒートポンプと連携してセル温度マップを制御する。急速充電時は高流量・低温設定、寒冷時は昇温モードへ切替える。
設計パラメータ
- 熱:基板熱伝導率(W/m·K)、TIM厚みと体積抵抗、対流熱伝達係数(W/m²·K)、許容ΔT。
- 流体:目標流量(L/min)、圧力損失(kPa)、キャビテーション余裕、ポンプ効率。
- 機械:面圧・平面度、耐圧強度、疲労、振動、取付剛性、シール圧。
- 化学:冷媒−材料のガルバニック腐食、クリーンリネス、添加剤の長期安定性。
- 安全:高電圧絶縁、フェールセーフ(漏えい検知、流量センサ)、冗長経路。
製造方法
量産では、押出材+CNC加工、板金プレス+ろう付け(真空ろう付け・炉中ろう付け)、拡散接合、摩擦攪拌接合(FSW)、ロールボンディングなどが用いられる。微細流路の寸法精度、ろう材の均一濡れ、歪み管理が歩留まりを左右する。清浄度(パーティクル、残留フラックス)管理は流量詰まりやポンプ摩耗を防ぐ観点で重要であり、洗浄プロセスと検査(重量法・光学法)の整備が欠かせない。
評価・試験
- 熱特性:定常・過渡の熱抵抗、面内温度分布、サイクル耐久。
- 流体:圧損−流量曲線、気泡混入耐性、流量不均一率。
- 強度:耐圧(破裂試験)、振動−温度複合、熱膨張繰返し。
- 信頼性:リーク試験(ヘリウム、差圧保持)、腐食試験(塩水噴霧、ガルバニック評価)。
- 安全:絶縁抵抗、耐電圧、フェールセーフ動作確認。
車両アーキテクチャとの関係
バッテリークーリングプレートは、パック構造(スケートボード型、フロア一体型)、モジュール・セル配置(ラミネート、角形、円筒)、配管ルーティング、サービサビリティに密接に関わる。サービス交換性を確保するため、クイックコネクタやドレン・ベント設計、エア抜き性の良いマニホールド形状が求められる。衝突時の漏えいリスク低減では、クラッシュゾーン回避や保護リブ、二重壁構造などの受動対策が有効である。
設計上の注意点
- 温度均一化:流路ピッチや分配形状で端部の冷却不足を防ぐ。
- 接触熱抵抗:TIMのポンピングアウト対策、適正面圧と平面度維持。
- 電食:異種金属接触の電位差管理、冷媒の導電率と添加剤管理。
- メンテナンス:冷媒交換周期、フィルタ点検、リーク早期検知。
将来技術の方向性
バッテリークーリングプレートは、より高出力・高エネルギー密度セルに合わせて、低熱抵抗・低圧損の両立が求められる。アディティブマニュファクチャリングによる三次元最適流路、メタマテリアル的フィン構造、薄型ベイパーチャンバーの統合、高信頼の接合技術、デジタルツインを用いた最適化設計が注目される。さらに、ヒートポンプ統合の熱マネジメント全体最適や、誘電性冷媒による安全性向上も検討が進む。
規格・法規への配慮(補足)
車両安全規格や高電圧システムの設計指針に準拠し、熱暴走抑制、漏えい時の二次被害回避、絶縁クリアランス確保を図る。トレーサビリティ(製造ロット・検査履歴)と品質マネジメントを通じて、市場耐久での信頼性を担保することが肝要である。