OFDM(直交周波数分割多重)|周波数帯を効率的に活用する多重化技術

OFDM

OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は、直交する多数のサブキャリアにデータを並列分割して同時伝送する多重化方式である。周波数選択性フェージングに強く、広帯域チャネルでも一括等化を容易にし、高いスペクトル効率を実現する。送信側はシンボル系列をサブキャリアへマッピングし、IFFTで時系列波形に変換、ガードインターバルとして循環プレフィックスを付与して送出する。受信側はCP除去後にFFTで周波数領域へ戻し、各サブキャリアごとに等化・復調を行う。

直交性とサブキャリア構成

OFDMの鍵はサブキャリア間の直交性である。サブキャリア間隔をシンボル長の逆数に設定することで、受信側の積分により相互干渉が理想的にはゼロとなる。これによりガードバンドを最小化し、帯域有効利用が可能となる。実装ではサブキャリア数N、サブキャリア間隔Δf、シンボル長Ts(有効部)を整合させ、Δf=1/Tsの関係を満たすよう設計する。

離散フーリエ実装(IFFT/FFT)

OFDMは離散フーリエ変換で効率的に実装される。送信側は各サブキャリアにQPSKやQAMなどの複素シンボルを配置し、N点IFFTで時系列信号を生成する。受信側はN点FFTにより周波数領域へ戻し、キャリア毎のシンボルを抽出する。FFT系実装は計算量がO(N log N)であり、広帯域に多数のサブキャリアを使う場合でも実現性が高い。

循環プレフィックス(CP)とISI抑圧

マルチパス遅延により隣接シンボルへのISIが発生する。OFDMでは時系列シンボル末尾の区間を先頭に複写したCPを付与し、有効区間に線形畳み込みを循環畳み込みとして見せる。これにより各サブキャリアのチャネル影響は複素スカラに集約され、ワンタップ等化で復元できる。CP長は最大遅延拡散より長く取るのが原則だが、長すぎるとオーバヘッド増大により実効スループットが低下する。

チャネル等化とパイロット設計

周波数選択性フェージング下での等化は、パイロットサブキャリアからチャネル周波数応答を推定し、線形補間または2次元補間(時間×周波数)で全サブキャリアへ拡張する。ワンタップZFやMMSE等化が一般的で、移動環境では時間選択性を考慮した追従(トラッキング)が必要となる。パイロット密度はドップラ周波数と遅延スプレッドに応じて最小限に抑え、データ効率を確保する。

ピーク対平均電力比(PAPR)

OFDMは多サブキャリアのベクトル和により高PAPRとなり、送信電力増幅器の効率が低下しやすい。対策としてはクリッピング&フィルタ、トーンリザベーション、位相最適化(SLM、PTS)などがある。装置側では線形性と効率のトレードオフを考慮し、適切なバックオフとデジタルプリディストーション(DPD)を併用する。

同期(タイミング・キャリア周波数)

タイミングずれは直交性を損ないICI/ISIを誘発する。CP内の自己相関や既知プレアンブルを用いたタイミング検出が実務では主流である。キャリア周波数オフセット(CFO)はサブキャリア間干渉の主因であり、粗推定(プレアンブルの位相回転)と微調整(パイロット位相)を段階的に行う。サンプリングクロックずれも長フレームでは無視できず、追従制御で補償する。

サブキャリア間隔とパラメータ設計

  • サブキャリア間隔:ドップラ耐性と遅延拡散耐性のトレードオフを規定する。高速移動体では広め、反射の多い屋内では狭めが有利となる。
  • FFTサイズ:帯域幅とサブキャリア間隔から決まる。大きいほど周波数分解能が上がるが、PAPRと実装複雑度が増す。
  • CP長:チャネルの最大遅延より少し長く設定し、オーバヘッドを最小化する。
  • 変調方式:リンク品質に応じた適応変調・符号化(AMC)でスループットを最大化する。

誤り制御と多重化

OFDMはFEC(畳み込み符号、LDPC、Polar等)とインタリーブを組み合わせ、マルチパス起源の周波数選択性を時間・周波数ダイバーシティに変換する。多ユーザ拡張としてはOFDMAがあり、サブキャリア(あるいはリソースブロック)をユーザに割当てることで柔軟なスケジューリングを可能にする。

実装上の非理想性

位相雑音はサブキャリア位相を揺らし、EVMを劣化させる。PA非線形性は帯域外放射とインバンド歪を生むため、フィルタ設計とDPDが重要である。ADC/DACの量子化雑音、ジッタ、アナログフロントエンドのIQ不均衡も直交性を乱すため、デジタル補償(IQキャリブレーション、CFO/PHN推定)を併用する。

代表的応用領域

OFDMは無線LAN(IEEE 802.11a/g/n/ac/ax)、地上デジタル放送(DVB-T/T2、ISDB-T)、移動通信(LTE下りのOFDMA、5G NRのCP-OFDM/DFT-s-OFDM)、電力線通信(PLC)など広範に採用される。高いスペクトル効率、柔軟なリソース割当て、シンプルな等化が導入理由である一方、PAPRと厳密な同期要求は設計上の要点となる。

関連概念と用語整理

サブキャリア、ガードインターバル、循環プレフィックス、ICI/ISI、CFO、パイロット、チャネル推定、等化、適応変調、FEC、OFDMA、PAPR、DPD、EVMなどがOFDM設計・評価のキーワードである。システム要件(帯域、移動速度、遅延拡散、電力制約)を起点に、これらのパラメータを総合最適化することが実務の肝要である。

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