ノギス
ノギスは、外径・内径・段差・深さを一本で測定できる万能な長さ測定器である。工作機械の段取りや受入検査、現場の据付確認まで適用範囲が広く、標準的な測定長は150 mm、300 mmが流通し、分解能はバーニヤ式で0.05 mmや0.02 mm、デジタル式で0.01 mmが一般的である。副尺(バーニヤ)による読み取りのほか、ダイヤル機構や電子式エンコーダを用いる方式がある。計量法やJIS、ISOの規格に整合する設計・精度管理が行われ、現場の一次測定器として位置づけられる。
構造と各部名称
本体は直定規状の本尺と、これに沿って摺動するスライダから成り、外側用ジョウ・内側用ジョウ・デプスバー(ロッド)を備える。ロックねじでスライダを固定し、微動送り機構で細かく位置決めする。
- 本尺:基準目盛を刻んだ直線定規部
- 副尺(バーニヤ):目盛差の原理で小数桁を読む
- 外側用ジョウ:外径・板厚の測定に用いる測定面
- 内側用ジョウ:穴径・溝幅の測定に用いる突起測定面
- デプスバー:段差・穴深さを測る細い棒状部品
- ロックねじ/微動送り:位置保持と微小位置決め
測定原理
バーニヤ式は、本尺と副尺の等間隔目盛のわずかな差を利用して一致点を読む「バーニヤ原理」に基づく。ダイヤル式はラック・ピニオンでスライダ移動をダイヤル回転に変換して指示する。デジタル式は静電容量方式や電磁誘導方式のスケールを内蔵し、相対/絶対測定の切替やゼロリセット、データ出力などの機能を備える。
最近このノギスを愛用してます
そんなに大きくないサイズですがルースにはちょうど良いかも!
デジタル表示ではないので電池切れの心配とか、誤操作での計測ミスとか、そういうのがないところは安心! pic.twitter.com/08MwBd07X2
— One Loose (@OneLoose1) September 13, 2025
基本的な測定方法
ノギスの測定は、測定面の当て方とスライダの扱いが品質を左右する。ワークの清掃、温度安定、ゼロ点確認を行い、測定力は必要最小限に保つ。
外径測定
- 外側用ジョウを開き、ワークを挟み込む。
- 測定面をワークに平行に当て、軽く揺すって最小値を探す。
- ロック後に読み取り(デジタルは直接表示)。
内径測定
- 内側用ジョウを穴内で拡げ、両測定面が真円上に当たる位置を探る。
- 穴軸に直交する姿勢を保ち最大値を読む。
段差・深さ測定
- 段差は上段に外側用ジョウの片側を当て、下段にもう片側を接触させる。
- 深さはデプスバーを穴底に軽く当接させ、口金を基準面に密着させて読む。
自由研究の反応がチラホラあるので、今回使った道具を載せておきます。
顕微鏡(左上)2,000円と手頃かつスマホで撮影もできて有能。60-120倍相当。
ルーペ(右上)全体観察にちょうど良い。LEDが便利。40倍相当、1,500円。
ノギス(下)0.01ミリ対応が便利。自由研究なら3,000円以下の物でも。 pic.twitter.com/Yp8MXCw630— 𝔸𝕔𝕥𝕚𝕧𝕖𝕀𝕟𝕕𝕖𝕩 (@ActiveIndex) August 16, 2025
精度・不確かさと校正
150 mm級で許容誤差はおおむね±0.02〜0.03 mm程度が目安である。ゼロ点ずれ、ジョウ先端の摩耗、スライダのがた、温度膨張、視差が主因である。定期点検ではブロックゲージでゼロ・中間・最大付近を確認し、直進性と平行度を点検する。デジタル式は電池電圧低下やゼロ保持機能の有無にも留意する。
選定と種類
用途に応じて、バーニヤ式・ダイヤル式・デジタル式を使い分ける。防塵防水が必要なら「IP67」相当の電子ノギス、内径中心なら細幅ジョウ、歯車歯厚なら専用形状、板金現場では長尺タイプなどがある。規格としては「ISO 13385-1」等の要求に整合した仕様が一般的である。
読み取りとばらつき低減のコツ
測定面とワークの直角・平行を意識し、最小読取り法(揺動法)で姿勢誤差を抑える。バーニヤ読みでは一致点を一本化してから整数部を読む順序が混乱を防ぐ。治具としてVブロックやベンチバイスでワークを安定させ、保持具にCクランプやFクランプを併用すると再現性が向上する。
保守・管理
測定面はバリ取り・清掃後に軽く防錆油を塗布し、ケース保管する。落下衝撃は目盛ずれやラック損傷の原因である。電子式は電池の液漏れ防止に定期交換し、ゼロ保持機能の誤用を避ける。現場では測定前後の拭き取り、温度順化(20℃基準)を徹底する。
他測定器との使い分け
ノギスは汎用性に優れる一方、サブミクロン級の要求には不向きである。高精度外径はマイクロメータ、微小変位の比較測定はダイヤルゲージやテストインジケータが適する。深さ・段差は専用のデプスゲージが能率的で、保持にはマグネットベースが有用である。これらを適切に組み合わせ、測定の不確かさと作業効率の最適点を狙うのがよい。
よくある誤差要因と対策
- ゼロ点ずれ:測定前にジョウを密着しゼロ確認、異物を除去
- 姿勢誤差:測定面をワークに平行・直角に保持、揺動で最小/最大値を探索
- 測定力過大:ジョウの撓みやバリ押し込みを招くため最小限にする
- 温度影響:長時間の手持ちを避け、20℃環境に順化
- 摩耗・損傷:先端欠けやラック摩耗は点検し、必要に応じて交換・修理
現場実装のポイント
作業標準には器差と環境条件、測定姿勢、繰返し回数、合否判定の丸め規則を明記する。測定データはトレーサブルな基準器で定期的に検証し、作業者教育では読み取り手順と器差の認識を徹底する。こうした管理により、ノギスは設計・製造・検査の一貫した品質保証に寄与する。
でけえノギス(1000) pic.twitter.com/HOloNgjzh5
— ハタノ@町工場🔩 (@hatano_works) January 15, 2024