デジタルノギス|数値表示で迅速高精度な寸法測定

デジタルノギス

デジタルノギスは、外径・内径・段差・深さを高い再現性で測定できる長さ測定器である。スライダの移動量を内蔵の直線エンコーダで電気信号に変換し、液晶に数値表示するため、読み取り誤差やパララックスを抑制できる。一般に測定範囲は150〜300mmが多く、分解能0.01mm、基本精度±0.02mm級が標準的である。生産現場の寸法検査、治具合わせ、教育用途まで広く使われ、SPCへのデータ出力や耐環境保護(IP等級)を備える機種も多い。基礎概念や用語の整理にはノギス、関連する接触式変位計にはダイヤルゲージ、微小振れ計測にはテストインジケータ、深さ専用にはデプスゲージ、設置補助にはマグネットベースが参考になる。

構造と主要部

デジタルノギスは、スケール(定規部)、スライダ、外側用ジョウ、内側用ジョウ、深さ測定用バー、ロックネジ、表示・演算回路から成る。スケールの材質はステンレス鋼が一般的で、直進案内の真直度とジョウの平行度・直角度が測定の基礎精度を規定する。スライダにはLSI、基準原点スイッチ、プリセット・ゼロ、mm/inch切替、ホールドなどの操作部が配置される。

測定原理(内蔵エンコーダ)

多くの機種は容量式(キャパシティブ)または電磁誘導式の増分型直線エンコーダを用いる。スケール側のパターンと検出子側の電極配列で位相差を生成し、移動量を演算して表示桁へ反映する。最近は原点復帰不要の絶対方式も普及し、電源投入直後から測定が可能である。アッベの原理に留意し、測定線とスケール基準線の偏差を小さく保つことでコサイン誤差を抑えられる。

測定の種類と手順

運用では、測定面の清掃とゼロ確認が前提である。ワークの把持力は最小限にし、ジョウの当たりは平行かつ直角を維持する。代表的な測定とポイントは次のとおりである。

  • 外径:外側ジョウで軽く当接し、スライダを微動して最小値を読む。
  • 内径:内側ジョウを孔内で軽く拡げ、最大片振れ位置で読み取る。
  • 段差:肩部にジョウを密着させ、基準面との段差を読む。
  • 深さ:深さバーを孔底に当て、基準面と平行を保ちながら読み取る。

仕様と性能

デジタルノギスの代表仕様は、測定範囲150/200/300mm、分解能0.01mm、指示誤差±(0.02〜0.03)mm程度である。ジョウ長は標準・長尺・ナイフエッジなど用途別に選択する。繰返し精度、直角度、平行度、真直度、深さバーの平面度が総合精度に影響する。表示は視認性の高いLCDが主流で、逆表示やバックライトを備える機種もある。

機能とインタフェース

プリセット機能は基準寸法を入力して差分で検査するのに有用である。ホールドは狭所での読み取りに適し、オフセットは治具厚補正に使える。測定データはSPC端子やUSB経由で収集し、工程能力解析に活用できる。防塵・防滴はIP54〜IP67が一般的で、切削液環境でも表示・検出部の保護が図られている。

校正と誤差要因

校正はゲージブロックやリングゲージ、平面基準を用い、ゼロ点、外径・内径・段差・深さの各点を確認する。主な誤差要因は温度、測定力、姿勢、汚れである。温度は線膨張係数に依存し、ステンレス鋼で約17×10^-6/°Cの伸びが発生するため、基準20°Cでの管理が望ましい。測定力が過大だとジョウ変形やワークの弾性変形を招く。姿勢不良はコサイン誤差・サイン誤差につながる。

選定と運用のポイント

選定では、必要な測定範囲と許容誤差から等級を決め、ジョウ形状と長さ、深さバーの剛性、表示機能、出力端子、防護等級、質量・バランスを総合評価する。電源はボタン電池が主流で、自己放電と低温時特性を考慮して保守計画を立てる。量産検査では専用治具と併用し、統計的工程管理と合わせてトレーサビリティを確立する。

保守・保管

測定面は清拭し、切削液や粉塵は速やかに除去する。スライダ摺動は乾燥清潔を基本とし、油分は最小限にとどめる。長期保管ではロックネジで固定し、衝撃と湿気を避ける。電池は適正保管し、液漏れの兆候があれば早期交換する。

安全と取り扱い上の注意

デジタルノギスは精密器具であるため、落下や強磁場、過度の温度差を避ける。鋭利なジョウ先端で手指を傷つけないよう取扱いに注意する。測定中はワーク固定を確実に行い、片手保持による振れを抑える。表示値の過信を避け、定期的な校正記録と合わせて信頼性を担保する。