ターボチャージャー|過給で小排気量でも高出力・低燃費

ターボチャージャー

ターボチャージャーは、排気ガスのエネルギーでタービンを回し、その軸でコンプレッサを駆動して吸気を加圧する過給機である。小排気量エンジンでも高い過給圧を得て出力とトルクを向上でき、同時にダウンサイジングや燃費改善、標高の高い環境での出力低下の抑制に寄与する。ガソリン、ディーゼルの双方で用いられ、近年は電動アシストや可変形状機構と組み合わせた高度制御が主流である。

構成要素と機能

基本構成はタービン、コンプレッサ、両者を結ぶ共通シャフト、軸受・シール、センターハウジングである。排気側タービンは高温高流速のエネルギーを回転エネルギーへ変換し、吸気側コンプレッサはその回転で空気を圧縮する。潤滑油と冷却水はベアリングの摩耗と熱劣化を抑えるため必須である。

  • タービン:耐熱合金製の動静翼で構成し、A/R比で応答と流量特性が決まる。
  • コンプレッサ:遠心式が一般的で、圧力比と効率はマップで評価する。
  • センターハウジング:軸受・シール・油路・水路を内蔵する。

作動原理と熱力学

圧縮はほぼ断熱圧縮として扱い、吸気温度上昇は断熱効率で評価する。圧力比PR=(Pout/Pin)、質量流量、回転数でコンプレッサマップを読み、効率島の範囲で運転点を設計する。吸気温度低減のためインタークーラを併用し、密度を回復してノッキングや排気温度悪化を抑える。

コンプレッサマップの読み方

左境界のサージラインは失速領域であり、配管容積やスロットル開度変化でサージが誘発される。右側のチョーク領域は翼端で流れが音速化し効率が急落する。運転点は効率島内に保ち、加速時・過渡時もサージ線に接近しない制御が必要である。

制御方式と過給圧管理

機械式ウェイストゲートは設定ブーストで排気をバイパスし過給圧を制限する。可変ジオメトリ(VGT)はノズル開度でタービン有効A/Rを変化させ、低回転の応答と高回転の背圧低減を両立する。電子制御ではECUが目標ブースト、空燃比、点火時期、スロットル開度と協調し、ノックや排温限界を守る。

  • ウェイストゲート:単純・低コストだが低速トルクに限界。
  • VGT:応答性に優れるが機構が複雑で高温耐久が課題。
  • ツインスクロール:排気脈動干渉を抑え、過渡応答を改善。
  • 電動アシスト(e-boost):低速域のラグを補い、トルク立ち上がりを向上。

設計パラメータと選定

タービン・コンプレッサのA/R、翼形状、材質、軸受方式は応答と耐久性を左右する。ボールベアリングは摩擦損失が小さくラグに強い。ニッケル基超合金や耐熱鋳鋼は高温でのクリープと酸化に耐える。配管レイアウト、触媒位置、インタークーラ容量も圧損と熱マネジメントに直結する。

  1. A/R比:小さいほど立ち上がり重視、大きいほど高流量重視。
  2. 軸受:フローティングメタルはコスト優位、ボールは応答性優位。
  3. 冷却:油冷+水冷で熱害とコーキングを抑制。
  4. シール:オイルミスト流出はスモークや触媒劣化の原因となる。

信頼性と故障モード

代表的な故障はオイル不足によるジャーナル焼付き、停止直後の熱浸透で起きるオイルコーキング、サージ由来の翼損傷、異物吸入(FOD)、アンバランスによる振動である。適切なアイドリングダウン、清浄な吸気系、規格に基づく動バランス、規定粘度の油管理が対策である。

  • 兆候:異音、白煙・青煙、過給圧低下、振動増大。
  • 診断:ブレード目視、軸ガタ測定、排温・ブーストログ解析。

周辺システムとの協調

ターボチャージャーの性能は吸排気系とECU較正で決まる。吸気側はエアクリーナ、スロットル、インタークーラ、圧力・温度センサで構成され、排気側はエキゾーストマニホールド、触媒、EGR流路、マフラで構成される。背圧上昇はポンピングロスと排温上昇を招くため、触媒容量・位置とタービン下流の配管抵抗を最適化する。

ガソリンとディーゼルの相違

ガソリンはスパーク点火でノッキング限界が支配的であり、過給時は空燃比、点火時期、吸気温度の管理が重要である。ディーゼルはもともと希薄燃焼でノッキングの制約が小さく、VGTと高EGR率でポンプ損・NOx・スス生成をバランスさせる。いずれも過給でトルクは向上するが、熱負荷とメカニカルストレスが増えるため強度設計が要となる。

エンジンマッチングとラグ/サージ対策

マッチングでは目標トルク曲線、許容排温、触媒活性温度、応答目標からタービン・コンプレッサを同定する。ラグ低減には小A/Rやツインスクロール、短い排気配管、電動補助が有効である。サージ対策にはバイパスバルブ(リサーキュレーション/ブローオフ)や容量配置最適化がある。

製造・品質と規格

羽根車はインベストメント鋳造や5軸加工で製造し、非破壊検査(浸透探傷・X線)で欠陥を管理する。回転体は動バランス等級で管理し、高速スピン試験で耐久を確認する。寸法公差、表面粗さ、軸受クリアランス、シール性能、熱サイクル耐久などを工程内で検証する。一般に国際規格・社内規格に基づく手順で評価される。

近年の技術動向

48V電動コンプレッサやモータ一体型e-turboは低速域のトルクを補い、回生も可能とする。可変圧縮比、ミラー/アトキンソンサイクル、可変バルブとの協調でポンピングロスを抑えつつ高負荷時のみ過給する戦略が拡大している。材料はAM(積層造形)の活用が進み、冷却路内蔵ハウジングや高効率翼形状の開発が行われている。

保守・運用上の留意点

高負荷直後のエンジン停止は避け、アイドリングダウンで油温を下げる。推奨粘度・交換時期を守り、吸気フィルタと配管の気密を維持する。チューニング時は燃料系・点火系・冷却系も含めた総合較正を行い、ロガーでブースト、排温、ノック、空燃比の逸脱を監視する。これらによりターボチャージャーの性能と信頼性を長期にわたり確保できる。