ソシュール|記号論,構造主義言語学の創始者

ソシュール Ferdinand de Saussure

ソシュール(1857.11.26.-1913.2.22)は、スイスの言語学者である。記号論ならびに構造主義言語学の提唱者である。主著『一般言語学講義』。言語学における構造主義的な理論をもとに構造言語学をとなえ、それが人間の社会的・文化的生活をとらえる構造主義のモデルになった。

ソシュール

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ソシュール以前の言語学

ソシュール以前の言語学は、歴史言語学といい、それぞれの言語の歴史を比較研究行っていた。ソシュールは歴史言語学とは離れ、言語の本性を根底的に考察して、科学としての言語学を確立した。そして、それは差異の体系である。

物の名前としての言語を批判

言語は物の名前や言語に対応する実体的な現実を指す名称の集合ではなく、言語それ自体における差異の体系である、とした。ある語の意味は、それでない語との対立・形式関係において決まるとした。

ラング

ラングとは、言語の規則や文法のことで、社会的制度として確立された、構造やシステムとしての言語体系を意味する。ソシュールは、言語と言語の関係の規則(体系)が個々の言語の位置を定め、それを意味づけていると説いた。あらかじめ文章の組み立てを規定している潜在的な言語体系といえる。

パロール

パロールとは、個人の発話行為(会話)のことであり、それらが要素として属するラングの中で関係づけられることによって意味を持つことができる。、ラングを持たない、個々の言葉は想定できないとした。言語は、チェス盤のようなものであり、個々のコマの意味が盤上のコマの位置によって決まるように、個々の発話行為は言語体系の中で意味づけられる。

ランガージュ

ランガージュとは、ラングとパロールを合わせた言語活動一般で言語の全体像である。

ラング、パロール、ランガージュまとめ

  • ラング:ある言語の文法や規則の体系
  • パロール:個々の言語の規則
  • ランガージュ:言語活動の全体像

言語の静態的な構造を問う言語学

ソシュールは、言語の静態的な構造を問う言語学の構築を行おうとしたが、その言語の体系を「シーニュ」(記号)、「シニフィアン」(意味するもの)、「シニフィエ」(意味されるもの)等の概念を用いて説明する。

ソシュール

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シニフィアン

シニフィアンとは、文字や音声のことをいう。たとえば、inu(音)や∪・ω・∪(犬の映像)のことをいう。

シニフィエ

シニフィエとは、文字や音声からイメージされるもの。会話の中でイメージされる、意味される〈犬〉のことである。

シーニュ(記号)

シーニュ(記号)を表現面にあたるシニフィアンと内容面にあたるシニフィエが合わさった物で、分けることはできない。

シニフィアン、シニフィエ、シーニュまとめ

  • シニフィアン:文字や音声
  • シニフィエ:文字や音声からイメージされるもの
  • シーニュ(記号):シニフィエとシニフィアンを合わせたもの。

シーニュ(記号)の恣意的必然性

シーニュ(記号)は自然にできあがったものではなく、人間の恣意的な結合であり、恣意的必然性を認めた。
たとえば日本語で「犬」という記号のシニフィアンは/inu/であり、それは〈犬〉というシニフィエを指示するが、しかし、犬を/inu/と呼ぶ必然性はどこにもなく、当然、異なる言語においては、dogなど違う呼び方になる。

形式的な関係

シニフィアンとシニフィエはそれぞれほかのシニフィアンおよびシニフィエとの形式的な関係にあるとした。言語は、その言葉と別の言葉の関係によって成り立つ。たとえば、「椅子」のシニフィアンは聴覚映像の/isu/だが、このシニフィアンには/asu/(明日)や/iso/(磯)といった別のシニフィアンが、なんらかの形で形式的に関わっている。また同様に、「椅子」のシニフィエ、<椅子>は、<テーブル>や、<テレビ>といったほかのシニフィエとの潜在的・形式的な関係ももっている。

ソシュール

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差異

ソシュールは、日本語には日本語の、英語には英語のそれぞれの言語体系(システム)がある。たとえば、英語のdogと日本語の犬のシニフィエがそれぞれ違う(差異がある)というように、である。それぞれの言語体系(システム)の「差異」は、言語の静態的構造である、とした。またそれぞれの言語はそれ自体で完結しており、なんら実体をもたない、関係性の束である。

『一般言語学講義』

『一般言語学講義』とは、1907年から1911年までジュネーヴ大学で「一般言語学」と題する講義を行ったが、その講義録である。

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