キャパシタンスマノメータ
キャパシタンスマノメータ(Capacitance manometer, CDG)は、金属薄膜ダイヤフラムの微小たわみを静電容量の変化として検出し、真空から大気圧域までの絶対圧を高精度に測定する圧力計である。気体の熱物性に依存せず測定できる点が最大の特長で、半導体製造装置や薄膜成膜、真空冶金などで基準計として広く用いられる。フルスケール(FS)は数Pa級から105Pa級まで用意され、校正と温調を適切に行えば読み値の±0.1〜0.25%程度の精度が期待できる。単位はパスカル(Pa)を用い、国際単位系に従うのが通例である。
測定原理
基本式は C = εA/d であり、ダイヤフラム変位 x により電極間隔 d が変化して静電容量 C がわずかに変わる。微小変化は ΔC ≈ (εA/d2)·x と近似され、ブリッジ回路で検出する。参照側を真空に保った密閉基準形とし、被測定ガス圧との差圧でダイヤフラムが撓むため、気体の種類に依らず絶対圧が求まる。サーボ(ヌルバランス)方式では、電気的な復元力で「撓みゼロ」を保ち、線形性とダイナミックレンジを高める。
構造と主要部品
- ダイヤフラム:Inconelやステンレスの薄膜を採用し、FSに応じて厚みと直径を最適化する。
- 固定電極・ガード電極:寄生容量を抑え、温度ドリフトを低減する配置と遮蔽を施す。
- ハウジング:ガス導入ポート、ベーク対応材、温調ヒータ(多くは45℃付近)を内蔵する。
- 信号処理:高安定ブリッジ、位相敏感検波、サーボ駆動を一体化したエレクトロニクス。
測定レンジと精度
キャパシタンスマノメータはFSを交換する設計が一般的で、10Pa、100Pa、1kPa、10kPa、100kPaなどの系列がある。ゼロ点とスパン校正を行い、温調状態を安定化することで、読み値の±0.1〜0.25%(代表値)を実現する。熱伝導式の熱伝導ゲージのようなガス種依存がないため、プロセスガスの置換や混合時も指示が一貫している。
利点と欠点
- 利点:ガス非依存、絶対圧直読、高線形、広いFSの選択肢、プロセス制御に適する。
- 欠点:過圧や粒子付着に弱い、価格が高め、温調・設置姿勢に注意が要る、ゼロドリフト管理が必要。
誤差要因と対策
- 温度ドリフト:ヒータ内蔵・断熱で安定化し、起動後のウォームアップを確保する。
- 設置姿勢:重力による初期ひずみを避け、指定姿勢で固定する。
- 汚染・凝縮:前段にフィルタや冷却トラップを入れ、ベーク可能な配管とする。
- 電気ノイズ:シールドケーブルと適切なグラウンドでS/Nを確保する。
- 過圧・圧力ショック:ソフトベンチング(スロットル)やリリーフを設ける。
校正とトレーサビリティ
校正は国家標準へ連なるトレーサブルな基準系で実施する。低圧域は静的膨張法や基準CDGとの比較、中・高圧域はデッドウェイトテスタや封入基準との比較を用いる。一般手順は①ゼロ調整(真空封止で0Pa設定)、②複数点スパン校正(上昇・下降ヒステリシス確認)、③温度・姿勢依存性の評価、④不確かさの見積もり、である。
運用上の注意
プロセス接続は短くクリーンに保ち、ベーク時はメーカー許容温度を厳守する。排気・置換時は急激な差圧を避け、ベントは上流にオリフィスを設ける。停止保管はダストキャップを装着し、ゼロ点は定期的に確認する。真空システム(例:拡散ポンプやターボ分子ポンプ)と組み合わせる場合、油蒸気やバックストリーム対策を行う。
関連規格・単位
表示・記録はSI単位系で行い、校正は関連するJIS/ISOの真空計校正ガイドに整合させる。真空領域の呼称(粗真空、超高真空など)は国際的な区分に合わせ、装置間の比較可能性を確保する。
他方式との比較
- 熱伝導ゲージ(Pirani):低〜中真空、ガス依存性あり、安価・応答速い。
- 冷陰極ゲージ・ペニングゲージ:高真空、放電開始にしきい値、表面状態の影響。
- ブルドン管など機械式:大気圧周辺の相対圧に強いが、ガス独立な絶対測定は不得手。
- キャパシタンスマノメータ:絶対圧・ガス非依存・高線形でプロセス制御の基準向き。
代表的な用途
CVD/PVD/ALDのチャンバ圧制御、エッチングやアッシングのセットポイント保持、メトロロジ装置の基準圧、リーク試験の校正点、ガス置換のエンドポイント検出などである。特に混合ガスや反応性ガス環境で、キャパシタンスマノメータのガス非依存性は大きな利点となる。
補足:数式と用語
C = εA/d、ΔC ≈ (εA/d2)·x、FS(Full Scale)は計器の最大指示範囲を指す。ゼロドリフトは温度や機械応力の変化に伴う零点の偏りであり、温調・姿勢管理・定期校正で抑制する。