青年期|青年期と特徴,年齢,アイデンティティ

青年期 せいねんき adolescence

青年期は「子ども(児童)から大人(成人)への過渡期」 と呼ばれ、一般的には12〜13歳くらいから22〜23歳くらいまでをさし、児童期から成人期へと移行する時期である。12〜13歳から16〜17歳までを青年前期、17〜18歳から22〜23歳までを青年後期と呼んで区別することもある。
10歳ころから青年期になるまでをプレ青年期と呼ぶ。青年期を、大人でも子どもでもない、その特性からルソーは『第二の誕生』とよび、心理学者のレヴィンは『マージナル=マン(境界人)』と呼んだ。
近代以前の単純な社会では子どもは成人式などの通過儀礼をすますとすぐに大人の仲間入りをし、青年期という段階はなかった。近代に教育制度が確立されるに従って、青年期が人生の発達段階の一つとして認められるようになった。青年期は親から精神的に独立し、将来の人生設計を行い、職業や社会生活で必要な知識や技術を学び、社会で自立するための力を養う準備期間である。

青年期

青年期

目次

青年期の身体的・精神的特徴

青年期は身体的、生理的成熟が頭著な時期である。男女とも身長、体重、胸囲、骨格など身体的に急速な発達が見られ、また、性ホルモンによる男女の差の特徴が大きく現れる。精神面でも心理状態が不安定となりやすく、感情の動揺が激しい。

自意識の芽生え

青年期には自意識が芽生える時期である。自意識とは、自分が他者とは異なる存在であることを強く意識し、今まで気づかなかった自分の発見である。本当の自分とは何か、という問いかけが始まるが、自分を客観的に見つめることは極めて困難であり、根拠をもたない優越感、あるいは劣等感を抱いたり、孤独に陥る。
青年期は孤独ではあるが、自分をみつめていく過程で、自分と異なる存在である存在である他者を発見し、受け入れていく機会でもある。他者は自分とは異なる「私」として、自己の存在や人生の意味について考え始める。

「自我のめざめ」G.H.ミード

アメリカの社会心理学者G.H.ミードによれば、人間の自我は社会的経験や活動の過程で、他者とのコミュニケーションを通じて形成されていく(「自我のめざめ」)とし、複数の他者の多様な期待が組織化された「一般化された他者」からの期待を身につけ、社会の中で生きていくようになると述べた。

アイデンティティ(自己同一性)

青年が自己を形成し、自分らしい生き方を実現していく過程でアイデンティティ(自己同一性。「自分が自分である」という意識)が確立されていく。
青年期には、自らのこれまでの生き方を肯定しながら、これから先の生き方を考える自分、他者とのかかわりの中で対等な関係をもち続ける自分、そして社会の中で自信と責任をもって自分の役割を引き受け、周囲から評価され役に立っていると意識している自分の3点を総合して考える傾向にある。この過程で、青年にアイデンティティが形成され、自分が自分であり、他の何もでもないことを知る。

青年期の苦悩

青年期の苦悩

青年期の苦悩

青年期は「自分の存在」に関係する様々な問題に遭遇する。友情、愛情、家族間など様々な人間関係の中で心が揺れ不安定になり、信頼と裏切り、親しさと煩しさ、孤独と集団などの間で様々にふるまう自己を発見し、しばしば苦悩する。
自分のいまのポジションや未来のあり方について自己を見失い苦しむ。ルソーは「第二の誕生」という意味をこの苦悩のなかの自己の発見という側面に求めた。苦悩を乗り越えることで成人として生きることができる。

<第二の誕生>ルソー

我々はいわば二度生まれる。一度は生存するため、二度めは生きるために。一度は人類の一員として、二度目は性をもった人間として。……わたしのさっき言った第二の誕生である。いまこそ人間が真に人生に対して生まれるときなのであり、人間のなすどんなことも、彼にとっては無縁ではなくなるのである。いままでわれわれの配慮は子どもの遊戯にすぎなかった。今になってはじめてそれらの配慮は真の重要性を帯びるのである。世間一般の教育が終わるこの時期こそ、まさにわれわれの教育の始まるべき時期なのだ。(『エミール』ルソー

疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドランク)の時期(ホール 1844~1924)

感情の振り幅が非常に激しく、強い自己主張が現れるため、ゲーテらの18世紀後半の文学革新運動になぞらえて青年期をこう呼んだ。

すべての青年はこのように愛さんとあこがれ、すべての少女はこのように愛されんとあこがれる。ああ、われわれの衝動の最も神聖なもの、なぜ、そこから激しい苦痛がわくのか。(『若きウェルテルの悩み』ゲーテ)

青年期

青年期

青年期の延長

青年期は、産業革命後のヨーロッパで発見されたと言われる。近代社会が成立する以前の農業や牧畜が中心の単純な社会では、子どもは大人の手伝いができるようになると、すぐに大人の仲間入りをした。しかし、近代社会の発展とともに、職業や社会生活 で必要とされる知識や技術が専門化・高度化し、また人間の生き方が多様化したため、青年が自立の準備をする期間としての青年期が延長される傾向が生まれたからである。なお、マーガレット・ミード(1901~78)の報告によれば、サモア諸島の若者には青年期のような悩みが見られないとされる。

プレ成人期(前成人期)

前成人期は青年期が終わる22〜23歳から30歳くらいまでを指し、青年が社会人として成熟するまで の期間である。現代は社会の変化が激しく、人びとの生き方が多様化し、また高学歴化によって就学期間が長くなり、青年が社会に適応しながら自分の生き方を確立するまでには、30歳くらいまでかかると考えられている。

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