複合材料|異なる材料を組み合わせた高機能な複合素材

複合材料

複合材料は母材(matrix)に任意の機械材料を加えるため、強化材を積層した材料である。2種類以上の異なる材料を組み合わせることで、個々の材料の特性を活かしつつ、単一材料では得られない特性を引き出している材料である。代表的な複合材料にはプラスチック複合材、セラミックス複合材、金属基複合材料などに分けられる。それぞれの特性を生かして、例えば強度と軽量性、耐熱性と柔軟性など、相反する特性を組み合わせることができる。また、種類については、強化材の形状によって繊維強化複合材料、粒子分散強化複合材料などにも分けることができ、いずれの場合も強化材と母材との界面の結合が重要な役割を果たす。。

複合材料の構造

複合材料は、通常「マトリックス」と「強化材」という2つの要素から構成される。マトリックスは全体を包み込み、形状を保つ役割を持ち、一般的には樹脂金属などが使われる。強化材は、マトリックスの中で骨組みのように機能し、強度や剛性を向上させる役割を果たす。強化材にはガラス繊維炭素繊維、セラミック繊維などが用いられることが多く、これにより複合材料は高い引張強度や耐熱性などの特性を得ることができる。

複合材料の種類

複合材料には、使用されるマトリックスと強化材の種類に応じて、いくつかのタイプが存在する。代表的な種類には、「ポリマー・マトリックス複合材料(PMC)」「金属マトリックス複合材料(MMC)」「セラミックス・マトリックス複合材料(CMC)」がある。ポリマー・マトリックス複合材料(PMC)は樹脂をマトリックスとし、強化材として繊維を使用するもので、軽量で加工が容易なため、航空宇宙や自動車分野で広く利用されている。金属マトリックス複合材料(MMC)は金属をマトリックスとしており、高温での耐久性や剛性が必要な場面で使用され、セラミックス・マトリックス複合材料(CMC)は耐熱性に優れているため、エンジンの部品などに使用されることが多い。

繊維強化プラスチック FRP

繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics) には、強化材として使われる繊維の種類によって、GFRP(glass-fiber)、CFRP(carbon-fiber)、AFRP(aramide-fiber)と区分けする。母材として使用される不飽和ポリエステルやエポキシ樹脂にロービング、クロス、またはマット状の繊維強化材をどのような形で複合させるかによって、特性が大きく変わってくる。繊維に平行な方向と直角の方向とでは、大きな異方性が認められる。通常はこの薄い単層をいろいろな角度に積み重ね、積層材を作る。安価・軽量で耐久性が良いため、小型船舶の船体、自動車・鉄道車両の内外装、ユニットバス・浄化槽などの住宅設備機器など幅広く使われる。しかし、異種材料が混在しているため、リサイクルが難しい。

金属複合材料 FRM

繊維強化金属(FRM:fiber reinforced metal)は、金属をマトリックスとし、強化繊維との複合化により高比強度を求めた素材である。FRPが持つ欠点の耐熱性の低さをカバーし、繊維強化セラミックスの脆性をもカバーすることを目的としている。強化繊維としては、カーボン、ボロン、SiC、Al2O3、W、Mo、SUSなどが用いられる。母材としてはアルミニウム合金やTi合金などが用いられる。製品は比強度や比弾性が高く、耐熱性に優れた長所を持つが、複合過程が高温の場合が多いため複合化が難しく、繊維コストが高いという短所は避けられない。自動車エンジンの部品や、航空宇宙機の耐熱構造材として応用されている。

金属基複合材 MMC

金属基複合材(MMC Metal Matrix Composites)とは、金属をマトリックスとして、粒子などとの複合化させた素材で、耐摩耗性などが優れている。金属酸化物 (Al2O3, SiO2 等)、炭化物 (SiC,WC,TiC等)を複合化したものがピストン、シリンダー等のエンジン部品、Ti基材,Ni基材のものは航空機部品に使われている。

粒子分散強化合金

粒子分散強化合金(particle dispersed strengthened metal)は、0.01~0.1μm程度のセラミックスの微細粒子を金属母材に分散させた耐熱合金である。分散微粒子としてAl2O3,ThO2、ZrO2、SiO2、MgO2などがあり、母材としてはAl、Ni、Cu、Cr、Mo、Mg、Beなどがある。超微粒子の製造が難しくてコスト高となり、製品の塑性加工が比較的困難であるということも欠点となる。用途は耐熱、耐摩耗材料であり、エンジンのインサート材やジェット工ンジン部品などとなっている。このほかに、2種以上の金属、または金属プラスチックセラミックスを貼り合わせて、それぞれの素材の持つ特性を兼ね合わせたクラッド材がある。

繊維強化セラミックス

繊維強化セラミックス(fiber reinforced ceramics)は、繊維による強化や粒子分散による強化が行われる。繊維強化セラミックスとして応用されている組合せは、炭素繊維/窒化けい素/ガラス/SiC繊維/ガラス、鋼繊維/コンクリートなどがある。繊維表面にコーティングを施すことで、界面での接着強度を上げている。

粒子分散強化セラミックス

粒子分散強化セラミックス(dispersion strengthened ceramics)は、母材のセラミックスの中に数um以下のセラミックス、または金属の微粒子を分散したものである。分散粒子の強さよりも、母材と粒子の相互作用や粒子自身の変態を利用するものである。Al2O3の中へZrO2粒子を分散させたものや、母材のAl2O3粒子中にMo粒子を分散させた後に焼結を行い、強度の向上を図ったものがある。

複合材料の用途

複合材料は、その高い強度と軽量性を活かし、さまざまな産業で利用されている。航空宇宙産業では、機体の軽量化と高強度化のために炭素繊維強化プラスチックが多く使用され、自動車産業でもCFRPやGFRPが燃費向上のための軽量化素材として採用されている。また、風力発電機のブレード、スポーツ用品、建築構造材としても複合材料は活躍しており、その優れた物理的特性が広く評価されている。

複合材料のメリットと課題

複合材料のメリットには、軽量でありながら強度が高いこと、耐腐食性や耐熱性に優れていることが挙げられる。これにより、金属に代わる材料としてさまざまな製品に応用されている。一方で、複合材料の課題としては、製造コストが高いことやリサイクルが難しいことがある。特に、強化繊維とマトリックス樹脂が複合された構造のため、リサイクルが技術的に困難であり、廃棄処理に関する課題がある。しかし、これらの課題を克服するための技術開発が進められており、複合材料の利用範囲は今後さらに拡大することが期待されている。

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