薩英戦争|薩摩藩とイギリスとの戦争,攘夷の限界

薩英戦争

生麦事件を巡り、薩摩藩とイギリス艦隊が軍事衝突した事件。イギリス代理公使E.ニールは、幕府に対して事件の責任者処罰および10万ポンドの賠償を請求した。幕府は柔軟に応じたものの、当時衰退した幕府には、薩摩藩を従わせることができなかった。生麦事件の解決の引き延ばしをはかった薩摩藩に対し、イギリスは7艦の艦隊を率いて、薩摩湾に侵入した。鹿児島城下はイギリスからの砲撃を受け損害を受けたが、イギリスも同様に台風による損害、薩摩藩による奇襲、供給不足で勝敗が曖昧のまま退去した。不明のまま退去した。イギリス軍の圧倒的な軍事力の前に薩摩藩の攘夷論は下火になり、開国派と貿易による富国に力をいれ、イギリスとの貿易も積極的に行った。

薩英戦争

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薩英戦争までの背景

当時、第二次アヘン戦争のため、イギリスの軍艦は日本に来ることが出来なかった。軍事力が皆無なことに懸念をしたイギリス全権使節ラザフォード・オールコックは、強勢を張り、横柄な態度を繰り返し、軍事的な威嚇をし続けた。江戸内から江戸城まで入り込む180人を超える軍事パレードや富士山に登り、女王への祝砲と称して江戸に銃を向けた。これに激怒した攘夷派はイギリスへの不信感を招き、イギリス商人を襲撃した生麦事件を引き起こした。

私は日本人に強い印象を与えようと考えた。最高の華々しさを演出し、民衆の注目を集めようとしたのだ。(ラザフォード・オールコック)

最近外国人どもは府内のあちらこちらを勝手きままに馬で乗り回し不作法だ。もしも無礼があったらそれなりの考えがある。(島津久光

生麦事件の損害賠償

1862年8月26日に起こった生麦事件の損害賠償を、イギリスは幕府と薩摩藩に要求した。この要求に幕府側は早期に対応し、小笠原壱岐守が2万ポンドの賠償金を支払うが、一方、イギリス代理公使のニールは幕府に続き、薩摩藩の謝罪と犯人の処罰を要求したが、薩摩藩はこれを拒否し、交渉は難航する。

ニールからの書簡

ニールからの書簡には、「諸人中の長立」を捉え、「首を刎ねべし」と書かれていた。これを島津久光の首をはねろと、受け取った薩摩藩士は激怒する。なお、これは生麦事件の主犯者の首をはねろ、というものであった。なお、この書簡を訳したのは福沢諭吉であったが、急いで直訳した文面が誤解を生んだものであった。これをきっかけに薩摩藩は攘夷の決行を決意する。

薩摩藩島津家

薩摩藩島津家

薩英戦争の勃発

1863年6月27日、ニールは東インド艦隊司令長官キューパー中将とともに鹿児島湾に入り同様の要求を行い、交渉を待つが、一向に対応しない薩摩藩にたいし、同年7月2日に薩摩藩の蒸気船3隻を拿捕する。これをきっかけに、薩摩藩とイギリスのあいだで薩英戦争が勃発した。台風の中で起こった戦闘で激しさを増した。

イギリス軍の攻撃

イギリス軍の軍艦には薩摩藩のものと4倍の飛距離をもつアームストロング砲が搭載されており、薩摩藩に比べて圧倒的な軍事力を所有していた。旗艦である蒸気フリゲート船ユーリアラス号を始め7艦で構成されている。薩摩の砲台はことごとく破壊され、集成館や鹿児島市街の一部が破壊・焼失された。

イギリス軍の被害

イギリス側にも薩摩の不意打ちや台風のため多大な被害が出た。イギリス側は旗艦ユーリアラス号が薩摩藩からの直撃を受け、艦長ジョスリング大佐と副長ウィルモット中佐が即死、死傷者は60余人に及んだ。また、戦闘や長期化を想定していなかったため、水、食料、燃料が不足から短期間で退去した。翌日、イギリス艦隊は鹿児島湾から撤退し、横浜に戻った。

イギリスの油断と誤算

イギリスは軍艦を見せれば薩摩藩は降伏すると踏んで常識的な軍事行動をとらなかった。鹿児島湾の中、薩摩藩の射程圏内に軍艦を配置する、十分な補給を行わない、幕府からの賠償金を積んでいたためドアが開かない、など基本的な戦略をおろそかにしていた。乗組員も戦争するつもりはなく士気は低かった。

島津久光.

島津久光.

和平交渉

軍事衝突の後、薩摩藩とイギリスのあいだで和平交渉が行われた。勝敗が曖昧とはいえ、イギリス軍を追い払った薩摩藩は強気に出ることができたものの、薩摩藩はイギリスの要求であった賠償金2万5000ポンドの支払いと犯人の処罰を確約した。なお、賠償金は薩摩藩が幕府からの借り入れによって賄ったが、薩摩藩から幕府に支払われることはなかった。

薩英戦争の影響

薩摩藩はイギリス軍の圧倒的な軍事力を前に攘夷の機運は低下する。従来より進めていた第二次産業の勃興と軍事兵器の洋式化に力を入れる一方、イギリスに接近し、イギリスから軍艦を購入していく。和平交渉で感触を得たイギリスは日本への外交支配のため薩摩藩と組むことを選び、薩摩藩とイギリスはその関係を深めていく。

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