歯車|回転を作る機械要素

歯車

歯車とは、機械の回転運動を伝える回転軸に取付ける、溝を切った円板状の機械要素である。モータなどの回転運動を伝え、方向、種類、速さを変えることができる。大きな力でゆっくり回転させたり、小さな力で速く回転させたることができる。歯車は時計、自動車・飛行機、自動機、工作機、精密機械、電化製品などいろいろな場面で使われる。平歯車が基本形で、溝・円板の形状のアレンジで「はすば歯車」「かさ歯車」「ウォーム」など、多機能にわかれる。(参考:歯車の製図


歯車の目的

  • 回転運動を伝える
  • 回転エネルギー(力)を伝える
  • 回転運動の方向・種類・速さを変える
  • 回転運動を直線運動に変える(歯車とラックを合わせて利用)
  • 回転運動をコントロールすることでエネルギーを増減させる
  • 位置を決める

歯車の歴史

    歯車古代ギリシャアリストテレスアルキメデス歯車について書かれたことから始まるが、いつ誰が発明したかはわかっていない。イタリアルネッサンスレオナルド・ダ・ヴィンチは、歯車のスケッチを大量に書き残していることから現在の歯車の原型はダ.ヴィンチから始まるといえる。13-14世紀のヨーロッパから大きく発展し、複雑な歯車を作り出し、様残な時計が発明される。18―19世紀から風車や水車が作られるようになる。はじめは木製であったが、製鉄技術が発達するに従い、鉄の歯車が作られるようになり、鉄道や線路、建造物などの発達に大きく貢献した。また、古代中国や古代日本でも歯車を利用した機械が使われており、特に江戸時代の日本で生まれた、からくり人形では、歯車vの機能を最大限利用している。

歯車の基本事項

  • 歯先円:歯の先端を結んだ円
  • 歯底円:歯の根元を結んだ円
  • ピッチ点:歯車歯車とがかみ合う点
  • ピッチ円:ピッチ点を結んだ円
  • 円弧歯厚:ピッチ円周で一つの歯が触れている部分
  • 歯溝の幅:歯が触れていない部分
  • バックラッシュ:歯の厚さと歯溝の差
  • 全歯たけ:歯の高さ
  • 歯末のたけ:ピッチ円から歯先円までの長さ
  • モジュール:歯形の大きさ

回転比

歯車は駆動軸から従動軸に一定速比で連続した回転運動を確実に伝えるもので歯車の歯数を変えることで回転比を自由に調節できる。

インボリュート曲線

インボリュート曲線は、固定した円に巻かれた糸をほどくときの糸の先端の軌跡である。

インボリュート歯形

インボリュート歯形はインボリュート曲線を使用した歯型で、製作が容易で大量生産が可能な歯形である。一般に知られている歯型である。

サイクロイド曲線

サイクロイド曲線は、直線上を円板を滑ることなく転がしたときの円周上の定点の軌跡である。接触点においてすべりが少なく、摩擦による誤差の発生が少ないという特徴を持っている。制作が困難なため、精密機械や精密測定器以外では、あまり用いられない。

サイクロイド歯形

サイクロイド歯形は、サイクロイド曲線を使用した歯形で磨耗が少なく、回転がなめらかであるのを特徴とする。力を伝えるのに無駄がないため、精密機械・計測機器で使用されている。

歯車の種類

歯車は、二軸が平行な歯車(平行軸歯車)として、平歯車はすば歯車、やまば歯車、ラックがあり、二軸が交わる歯車(交差軸歯車)としてかさ歯車、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、マイタ歯車、食い違い軸歯車として円筒ウォーム歯車、ねじ歯車、ハイポイド歯車などがある。その他、フェース歯車、つづみ形ウォーム歯車などがある。(参考:歯車の種類

平歯車

平歯車は、一般的な歯車に対して、歯が平行な直線で切られており、相手のに回転運動を伝える円筒歯車である。平行軸間に使われる。製造も容易なため、大量生産が可能で最も広く作られている。

平歯車

はすば歯車

はすば歯車(ヘリカルギア)は、に対して歯が斜めにねじれている円筒歯車である。歯が斜めになっていることで、互いの歯車のかみ合いを大きくしている。平歯車よりも強度が大きく、大きな動力を円滑に伝えることができるため、騒音や振動を抑えながら大きな動力を伝達することができる。しかし、歯が傾いていることから、軸方向力にずらそうとする力(スラスト)がかかるため、スラストベアリングを必要とする。一般的な動力伝達装置、減速装置に適している。

はすば歯車

やまば歯車

やまば歯車とは、歯すじが左・右のつる巻線状に構成された歯車で、左右対称のはすば歯車を組み合わせた構造となっている。左右の歯が山形をしていることで軸方向力にずらそうとする力(スラスト)を打ち消すことができ、平行軸間の大動力の伝達に用いられる。

内歯車

内歯車は、円筒の内側に歯がある歯車で、遊星歯車装置に用いられている。

ラック

ラックは、平歯車を平面状にしたもので、比較的小さな歯車とピニオンとあわせて使うことで、回転運動を直線運動に、直線運動を回転運動に変えることができる。また、ラックの長さによって、直線運動の範囲を決めることもできる。工作機械などの送り、自動車のハンドルとタイヤの間にあるステアリング、カメラの三脚の雲台(カメラを取り付ける台)を上下させる部分として使われる。また、はすば歯車を平面にしたはすばラックもある

かさ歯車

かさ歯車は、公差する2軸間の動力を伝える歯車で、ふたつの回転軸が直交する場合に用いられる歯車で、円すい型となる。回転運動を伝える場面で多く使われている。分類すると、歯が直線状のすぐばかさ歯車、歯が斜めにねじれているまがりばかさ歯車、同じ歯数の歯車のかみ合いで軸角90°のマイタ歯車、ピッチ面がラックのように平面になった冠歯車がある。

ねじ歯車

ねじ歯車は食い違う2軸(ふたつの回転軸が交わりもせず平行でもない)間の動力伝達に用いられる歯車である。ねじ歯車は、歯が45度にねじれているはすば歯車で、歯面に滑り摩擦が発生するために、潤滑に注意が必要で、平歯車や、かさ歯車と比べて低効率である。

ウォームギア

ウォームギアとは、ふたつの回転軸が直交しているが離れていて交わらない場合に使われ、ねじ状の「ウォーム」と「ウォームホイール」を組み合わせの食い違い歯車である。ウォームの条数とウォームホイールの歯数の組み合わせ方で、大きな速度伝達比を得ることができ、比較的小形な装置で大きな速度伝達比を得るような減速装置を作ることができる。ねじ歯車・ウォームギアは、歯面に滑り摩擦が発生するため、寿命が短く潤滑に注意が必要である。

ハイポイドギヤ

ハイポイドギアは、くいちがい軸の間に運動を伝達する円すい状の1組の歯車で、2軸が直角な場合の運動伝達に使われる。比較的小型な装置で大きな速度伝達比を得るような減速装置に利用される。

歯車の材質

材質は、一般的に炭素鋼が使われる。大きな歯車にはSCM415と呼ばれる機械構造用合金鋼が使われる。硬度を保つため高周波焼き入れのような熱処理を行われることが多い。そのほか、さびないステンレスや粘り強いクロムモリブデ鋼、モジュールが1以下の小型な歯車には黄銅が使われる。また、金属の特性にない特性を生かした樹脂材料も多い。樹脂材料は軽くて騒音が少なくさびないため広く使われるようになった。耐摩耗性や反発弾性に優れるPOMや機械的強度や耐摩耗性に優れるMCナイロンなどが多い。

モジュール,圧力角,歯数

モジュール(m)、圧力角(a)、歯数(z)が歯車の基本要素となり、この3つの基本要素から、歯車のその他の寸法が成立する。下記では、平歯車を例に関単に紹介する。

モジュール

モジュールは、歯車の大きさを表す単位で、ISOで規定されている。mで表し、モジュールが大きければ大きいほど歯は大きくなる。

モジュール

ピッチ

モジュールに円周率をかけた倍したものが、ピッチといい、歯から歯までの長さを表す。

ピッチ

圧力角(a)

圧力角(a)は、歯の形を意味し、一般的には20度となっている。

歯の数

歯の数は通常、Zで表す。

バックラッシュ

バックラッシュとは、加工精度や組立誤差、荷重による変形により歯車が円滑に回転しなくなることを防ぐために、歯ぐるみをかみ合わせたときの歯面間の遊びのことをいう。バックラッシュを設けることで、歯車のかみ合いを円滑に動くようになる。あまり大きすぎると、騒動や騒音の原因ともになる。

バックラッシュ

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