冷間圧造|常温で金属を押し固めるねじ成形法

冷間圧造

冷間圧造とは、常温の金属線材を金型で強く押しつぶして所定の形状に成形する塑性加工の一種である。英語ではコールドヘディング(cold heading)と呼ばれる。ボルト、ナット、リベット、ピンなどの締結部品は大半がこの方法で量産されている。材料を削らずに流動させて形を作るため、切りくずがほとんど出ず、材料歩留まりは90%を超えることが多い。

ヘッダー加工から多段フォーマーへ

起源は19世紀のリベットやくぎの頭部成形にさかのぼる。当時は線材の端を1回打撃して頭を作るだけの単純な工程で、この時代の機械は「ヘッダー」と呼ばれていた。1950〜60年代になると、複数の工程を1台にまとめた多段式の「パーツフォーマー」が普及した。切断、据え込み、前方押出し、後方押出し、穴抜きを順番に行えるようになり、形状の自由度が大きく広がった。現在の小径部品向けフォーマーは毎分200〜400個程度の速度で成形できる。日本では自動車産業の拡大とともに設備の導入が進み、ねじ・ファスナー業界の中心技術として定着した。

熱間鍛造・切削との違い

同じく金属を叩いて成形する熱間鍛造は、鋼を1100〜1250℃程度に加熱して変形抵抗を下げてから加工する。これに対し冷間圧造は加熱を行わないため、酸化スケールが発生せず、寸法精度と表面の仕上がりが良い。代わりに大きな成形荷重が必要になり、金型の負担も重くなる。切削加工と比べた場合の違いは次の表のとおりである。

項目 冷間圧造 熱間鍛造 切削加工
加工温度 常温 約1100〜1250℃ 常温
材料歩留まり 90〜98% 70〜85% 30〜60%
寸法精度 高い(±0.05mm程度も可能) 低め(後加工が前提) 非常に高い
生産速度 非常に速い 中程度 遅い
適した部品サイズ 小〜中径(おおむねM3〜M30) 中〜大型 サイズを問わない

ファイバーフローと加工硬化

削り出しの部品では、材料内部の繊維状の組織(ファイバーフロー)が途中で切断される。一方、圧造品は組織が形状に沿って連続するので、首下のような応力が集中しやすい部分でも疲労強度が落ちにくい。

常温で変形させると加工硬化が起き、成形後の硬さと引張強さは素材より高くなる。これは製品強度の面では利点だが、工程が進むほど材料が硬くなって割れやすくなる。そのため、何段で変形させるか、1段あたりの据え込み率をどこまでにするかの工程設計が品質を大きく左右する。目安として、1回の据え込みで扱える長さは線径のおよそ2.3倍までとされ、それを超えると座屈が起きやすい。

使用される材料と前処理

素材には、JIS G 3507で規定された冷間圧造用炭素鋼線(SWCH材)が広く使われる。SWCH10RやSWCH18Aなどの低炭素鋼は変形しやすく、一般的なねじに向いている。高強度ボルトにはSCM435やSCM440などのクロムモリブデン鋼が選ばれ、成形後に焼入れ焼戻しを行って強度区分10.9や12.9(JIS B 1051)を満たすように仕上げる。オーステナイト系のステンレス鋼(SUSXM7など)は加工硬化が激しいので、銅を加えて加工性を改善した鋼種が用いられる。

前処理として特に欠かせないのが球状化焼鈍である。700℃前後で長時間保持し、鋼中のセメンタイトを粒状にすることで延性を高める。この後、リン酸塩皮膜処理(ボンデ処理)と金属石けんによる潤滑剤の被膜を線材表面に付け、伸線で線径を整えてから圧造機に送る。

一般的な工程の流れ

  1. 線材の球状化焼鈍・皮膜処理・伸線
  2. フォーマーでの切断(カットオフ)
  3. 多段の据え込み・押出しによる成形
  4. ねじ部の転造
  5. 熱処理(焼入れ焼戻し)
  6. めっき・表面処理と検査

量産現場で見る採算と金型管理

実務で最初に考えるのはロット数である。多段フォーマー用の金型は1セットで数十万〜数百万円かかることがあり、試作段階で何度か修正も入る。そのため、数千個程度なら切削のほうが総コストは安くなることが多い。損益の分かれ目はおおむね数万個以上の継続生産で、自動車用ボルトのように月に数十万個が流れる品番なら、1個あたりの加工費は切削の数分の一まで下がる。

金型寿命も見落とせない。パンチやダイスには超硬合金や高速度工具鋼が使われるが、SCM材を高い据え込み率で成形すると、数万ショットで割れやかじりが出る場合もある。現場では、ショット数を管理して予防交換したり、異常荷重を検知するロードモニターを付けたりして、不良品が大量に出るのを防いでいる。潤滑皮膜が薄い線材ロットでは焼付きが急に増えるので、受入時の皮膜量チェックをルール化している工場も多い。

代表的な欠陥と対策

よく問題になるのは、頭部外周の割れ、座屈による曲がり、欠肉、折れ込み(ラップ)である。外周の割れは線材表面の傷や脱炭層が起点になりやすいので、線材メーカーと協議して表面きず深さの上限を決めることがある。折れ込みは材料が金型内で重なり合って発生し、外観ではわかりにくい。断面のマクロ観察で工程ごとの材料の流れを確かめ、予備成形の形状を修正して解決するのが基本的な対処である。最近はFEM解析で成形荷重や材料の流れを事前に予測し、金型の試作回数を減らす取り組みも一般的になってきた。

締結部品以外への広がり

冷間圧造の用途はねじ類だけにとどまらない。自動車のボールジョイント用スタッド、トランスミッションのシャフト、電子機器用の端子やカシメピン、ベアリングの転動体の素形材などにも使われている。鍛造メーカーと圧造メーカーの境目は以前ほどはっきりせず、異形部品を多段フォーマーで一発成形し、切削工程を省いてコストを下げる提案が自動車部品の分野で増えている。

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