ロールズ|正義論と無知のヴェール,公正としての正義

ロールズ John Bordley Rawls

ロールズ(1921~2002)は、アメリカの政治学者・倫理学者である。主著『正義論』。大学で哲学を学び、ハーバード大学で哲学の教鞭にたった。1971年に『正義論』を出版して、公正としての正義をとなえて反響を呼んだ。1970年代に黒人などのマイノリティー(少数派)が、権利の回復を求めて公民権運動を進める中で、自由競争がもたらす不平等の限度を、社会全体の公正さから問い直そうとした。

ロールズ

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目次

ロールズの生涯

ロールズは、アメリカ、メリーランド州ボルティモアに生まれる。プリンストン大学卒業後、兵役につき、ニューギニア、フィリピンを経て、占領軍の一員として日本にもきている。広島の惨状を目にした。除隊後、プリンストン大学院に進学し、1950年「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得する。1963年コーネル大学助教授などを経て、1962年にハーバード大学の哲学教授となる。1971年に出版された『正義論』は世界中で高い評価を受けた。1991年にはハーバード大学の名誉教授となる。ロールズは、論理実証主義の支配下にあって「倫理学は学問たり得るか」という難問と格闘し、独特の倫理学方法論を編み出した。

ロールズの正義論の前提

ロールズの正義論は、道徳的な人格性を備えた、一定の正しさに従って行為したいと願う人々で構成されている社会を想定している。このとき自分の利益を最大にするという経済的に合理的なひとを前提とするが、そのとき依拠するのが、経済学の用語である、ミニアムを最大にするというマキシミン原理である。いくつかの選択肢を与えられたときに、もっとも最悪な結果を避けるという相対的に最善を目指す行動原理である。

無知のヴェール

ロールズは、初期状態(原初状態)において、人々がマキシミン原理のもとで構成に選択できるよう無知のヴェールという概念をおいた。無知のヴェールとは、人々が選択する際、その選択者の前にはヴェールがかけられていて、あることがらを知ることができない、というものである。自分の将来について具体的な情報がない中で、最悪の状態を予想し、それを避け、相対的に好ましいものを選択しなければならない。このように無知の中で、一般的な社会原理に基づいて、自分にもっとも有利な状態を見つけることである。

ロールズ

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公正としての正義

マキシミン原理の行動と無知のヴェールという2つの概念をもって公正としての正義を提唱する。公正としての正義とは、社会の成員に自由を平等に配分するとともに、その自由な競争がもたらす不平等を是正する正義の原理である。功利原理が正義の原理を欠いている点を批判し、社会の法や制度の根本となる正義の原理は、社会の成員の合意に基づいて承認されなければならないという、社会契約説を再構成した「公正としての正義」を提唱した。
正義の原理は、(1)他の成員の権利を侵害しない限りにおいて、基本的な自由をすべての人に平等に与えること(平等な自由の原理)、(2)競争によって社会的・経済的な格差が生まれるにしても、全員に平等な機会を与えたうえでの公正な競争であること(公正な機会均等の原理)、(3)競争によって生じる格差は、社会のもっとも不遇な人びとの生活を改善することにつながるものであること(格差の原理)、があげられる。自由な競争によって生じる格差(不平等)は、社会全体の繁栄につながる限り認められ、恵まれた人は福祉政策などを通じて、不遇な人の生活を改善する義務を負う。

初期状態の人びとは(効用原理とは)かなり異なる二つの原理を選択すると主張したい。その第一原理は、基本的な権利と義務を平等に割り当てることを要求する。第二原理は、社会的・経済的な不平等(たとえば富や職務権限の不平等)が正義にかなうのは、それらの不平等が結果として全員の便益(そして、とりわけ社会で最も不遇な(=相対的利益の取り分が最も少ない)人びとの便益)を補正する場合に限られる、と主張する。
(ロールズ『正義論』)

『正義論』

『正義論』(1971)は、ベンサムの功利主義的な正義論を批判しながら、カントルソーにおける社会契約論の伝統を発展させた。社会の成員の合意に基づいて承認される、公正としての正義の原理について説いた。この書において、社会倫理学の復権を提起した。