ラカン|鏡像段階,精神分析,フロイへの回帰

ラカン Jacques Lacan

ラカン(1901-81)はフランスの精神分析学者。主著は『エクリ』。伝統的なフランス精神医学から出発しつつ、フロイトの思想の解釈とその理論の実践を行った。また、自己意識が他者によってつくられた虚像であることを分析し、独自の他者論を展開して主体の形成について考察した。

ラカン
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目次

ラカンの生涯

ラカンは、1901年、フランスパリで生まれる。はじめは哲学を学んだが、後に医学や精神病理学に進む。1952年、フロイトへの回帰を主張して国際精神分析学界と袂を分かつと、1953年、パリ精神分析学会を立ちあげる。なお、自分の死ぬ前年の1980年に解散している。1981年、腸の悪性腫瘍のためフランス・パリで生涯を閉じた。

他者論

ラカンは、鏡像段階論によって、自己意識が自己の中から派生したものではなく、他者によって作られた虚像であることを分析し、ラカン独自の他者論を提唱した。

鏡像段階

鏡像段階とは、生後6ヶ月から1年の発達段階における自己認識の形成過程を分析したもの。ラカンはこの段階では自らの自己像の全体を確立しておらず、部分部分にしか理解できない。次第に鏡の前で楽しそうに振る舞い自己の身体の全体を見つけていくが、同じように他者のなかに自己のイメージを身につけ、自己の全体を確立していく。

乳幼児の現実界と象徴界

乳幼児にとって「現実界」は、未知の世界であるが、優しい母が鏡に映す自己を自分であると認識する。つまり、自己の外に自分を発見する。この母に寄せる信頼において自己と鏡像としての自分の一致を確信するのは「想像界」での出来事である。しかし、この母との信頼関係に外部から侵入して言語によって秩序づけられた世界を「象徴界」において教える役割を果たすのが父である。言語は秩序づけられた世界を自己に知らせる役割において大文字の他者であるということができる。自己にとって象徴界の仕組みは言語の構造に従った無意識なものであり、そういうものとして主体は自己を確立する。

エディプスコンプレックスの影響

ラカンの虚像段階は、フロイトのエディプスコンプレックスの影響を受けている。フロイトは、子どもは無意識の下で、異性の親に愛着を感じるようになる一方、同性の親には、敵対心や、不安を感じる傾向をもつとして、それをギリシア神話にちなんでエディプスコンプレックスと名付けたが、ラカンはそれに先だって虚像段階があるとした。

主体性の解体

ラカンの虚像段階は、自己が自己自体ではなく、他者によってつくられた虚像であることを示した。これは、主体の形成は言語という象徴的世界において他者によってつくられるものであることを意味し、ラカンは近代以来、西欧の知の枠組みであった主体の主体性を解体した。

ラカン
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構造主義

ラカンは精神分析学だけでなく哲学や文学、芸術にもするどい洞察を行っており、しばしば、構造主義を提唱するひとりとして数えられる。


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