カール・グスタフ・ユング |分析心理学,集合的無意識

ユング Carl Gustav Jung

ユングはスイスの心理学者、精神分析学者。分析心理学を創始。主著『心理学と錬金術』『自我と無意識の関係』。フロイトの協力者として精神分析学の発展につとめた。後期にはあらゆる無意識を性的欲求に結びつけるフロイトとの考え方の違いから決別することになる。ユングは、人間の夢や妄想の中に古来の神話や伝説と共通の基本的なパターンがあることを見出し、人間の無意識には、個人的な経験による個人的無意識のほかに、人類に共通するイメージである集合的(普遍的)無意識があるとした。ここから人間の心の全体像を解明する分析心理学を確立した。

ユング
ユング

目次

ユングの生涯

ユングは1875年7月25日、スイス連邦トゥルガウ州ケスヴィルに改革派協会牧師の長男として生まれ、バーゼルで育ち、バーゼル大学医学部を卒業したあと、1900年、チューリヒ大学附属ブルクヘルツリ精神病院のオイゲン・ブロイラー教授のもとに入局。1902年、『いわゆるオカルト現象の心理と病理について』で、医学博士の学位を取得後、パリのジャネの下に遊学する。翌年、エンマと結婚。この頃、フロイトの研究に傾倒していき、1907年2月ウィーンを訪ね、フロイトと会談を行っている。1911年には国際精神分析学会の初代会長になったが、フロイトの汎性理論や無意識の捉え方について意見が衝突する。1912年に著述した『リビドーの変遷と象徴』によってフロイトと決裂する。フロイトと決裂して以降、方向喪失と分裂病の傾向がみられたが、チューリヒ湖岸のボリンゲンの別荘で、リヒャルト・ヴィルヘルムと出会ってからは「マンダラ」と称することとなる図形などを描いたりしながら1921年に『人間のタイプ』を発表した。これ以降、分析心理学を書き上げる。ユングはヨーロッパ以外のアメリカ・アフリカなどを訪ね、独自の文化を観察し、『こころの実在』(1934)、『心理学と宗教』(1940)、『心理学と錬金術』(1944)、『アイオーン』(1951)、『ヨブへの答え』(1952)、『結合の神秘』(1955)を発表し、普遍的無意識、元型、象徴に基づいたユング心理学を気付いた。1961年6月6日、チューリヒ郊外、キュスナハトの自宅で85歳の生涯を閉じた。死後、『ユング自伝』が発表されている。

集合的無意識

集合的無意識とは、人類が太古から繰り返してきた無数の体験が積み重なってできた普遍的なイメージを持つ無意識の領域である。個人的無意識は、その人の経験に基づくものであるが、集合的(普遍的)無意識は、人類が共通してもっているとされる普遍的イメージに当たる無意識と解される。この点でユングは、無意識を個人の過去の体験から解釈するフロイトの精神分析学を批判した。
集合的無意識は、神話やおとぎ話、夢、精神病患者の妄想などに現れる。ユングは、こうした患者の話を偶然や妄想と片づけることはせず、また、個人的な無意識のほかに、人類に共通しているとされる集合的無意識に目を向け、例えば、世界各国で、ある動物が同じ意味の象徴であるなど、交流がないはずの別の地域でも同じような話があることに着目し、共時性や人類普遍の元型(アーキタイプス)があると考えた。

ユングによる心的諸機能の構造
ユングによる心的諸機能の構造

外向型と内向型

ユングは、人の心のエネルギーがどこに向かっているかで、外向型と内向型に分類した。外向型は自分の外側に興味・関心が向かい、内向型は自分の内面に興味・関心が向かう。誰もがいずれの型ももち合わせておリ、また、どちらの型が優れていたり劣つていたりするのではないとしている。

外向型:社交的、活動的、陽気、こだわリがない、あきやすい

外向型ユングが、人間の心のエネルギー(リビドー)が向かう方向性によって分けた性格の類型。外に心のエネルギーが向かう外向型は、社交的で交際範囲が広く、陽気でこだわりがなく、リーダーシップをとり、活動的で決断力がある。その一方で、あきやすく、移り気である。

内向型:控えめ、憤重、思慮深い、じっくり物事を考える

内側に心のエネルギーが向かう内向型は、ひかえめで、自分の心の内面を掘り下げ、じっく りと物事を考える。その一方で、適応力や実行力に欠け、人とのつきあいが苦手で交際範囲は狭い。しかし、いったん交際すると深い人間関係をつくる。

[合理的機能]、[思考と感情]、[非合理的機能]、[感覚と直観]

外向型と内向型の2つのタイプ加えて、[合理的機能]、[思考と感情]、[非合理的機能]、[感覚と直観]がお互いに相補的な関係にある。

元型(archetypes)

元型とは、すべての人間の心の根底にある柒合的無意識の普遍的な型(タイプ)のこと。個々人の心の奥底には、時代や文化の影響を超越した普遍的無意識(集合的無意識)層があるとされ、いくつかの人類共通の神話的・原初的な心のイメージがあるとされる。そして、そのイメージは、時代や民族をこえてすべての人類の神話・昔話・芸術・宗教・夢などに共通してあらわれる。

アニマ、アニムス

アニマ、アニムスともに元型の一つであり、心の奥底に潜む異性的な性質。アニマは男性の心の中にある女性的な性質であり、アニムスは女性の心の中にある男性的な性質のことである。

グレートマザー

元型の一つであリ、すべてのものを包み込む(または飲み込む)はたらきのことをユングは母(mother)になぞらえた。太母ともいう。

ユング
ユング

感情、思考、感覚、直観

  • 感情:自我と与えられた内容との間に生じる活動
  • 思考:それ固有の法則に即して、与えられた様々な表象内容を(概念的に)関連づける心的機能
  • 感覚:ブチル的な刺激を知覚に伝える心的機能
  • 直観:知覚を無意識的な方法によって伝える心的機能

フロイトとアドラーの対抗

フロイトとともに精神分析学を学んだが、おなじく心理学者アドラーもまた精神分析学を学んだ。しかし、アドラーもユングと同じようにフロイトの精神分析学が離脱し、個人の心理学を樹立するようになる。フロイトはリビドー理論とエディプスコ・ンプレックス理論に基づき、病理を分析するが、アドラーは権力衝動理論と劣等感理論から説明しようとする。度々このように意見が分かれるが、ユングはこの対抗構造を、フロイトは外向型ゆえに対他関係にリビドーが外に向かう性格であり、アドラーは内向型ゆえに自分のものさしで説明しており、互いにお互いの理論が理解できない。ユングもまた自身を内向型だと考え、それゆえにフロイトに理解されないと考えた。


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