ベルト|回転運動を伝える機械要素

ベルト

ベルトは、回転運動を伝達する歯車にたいして、そのふたつの回転軸が離れているときにふたつのの間をつなぐ帯状の機械要素で、もっとも安価で離れたに回転や動力を伝えることができる。歯車の回転運動を伝える仕組みと同じもので、回転軸に取付けたプーリ(ベルト車)とベルトで成立する。平ベルトVベルト、歯付きベルトがその代表である。ベルトの性能は、特にベルト素材のもつ耐摩耗性、耐油性に依存する。自動車のエンジン、コンベヤー、工場設備、OA機器などに使われる。

ベルトの機能

  • 離れたふたつの軸に回転運動を伝える
  • 物の運搬する(ベルトコンベア)

ベルトの回転方向

ベルトは、平行掛けでは、原動軸と従動軸の回転方向が同じとなるが、十字掛けでは、回転方向が逆になる。

ベルトの特徴

  • 回転方向:原動軸と従動軸の回転方向が同じである。
  • 速度の伝達:速度伝達を任意に設定でき、歯車がモジュールや歯数に制限されるのに対して、利便性に優れている。
  • 摩擦ベルトとプーリによる摩擦で回転運動を伝えるため、その接触面が小さくなると摩擦力は小さくる。その分、滑りが大きくなり、回転運動の伝達効率が低下する

ベルトの種類

ベルトはその形状によって平ベルト、Vベルト、歯つきベルトの3種類がある。

平ベルト

平ベルトは、代表的なベルトで、帯状の皮やゴムなどを輪にして、回転軸に取付けたプーリに掛けて回転運動を伝達する仕組みとなっている。従動軸側のプーリへの掛け方を平行掛けにすると原動軸と従動軸の回転方向は同方向となり、十字掛けにすると逆回転にすることができる。メンテナンス性にすぐれるため頻繁に使われるが、ベルトとプーリの滑りの問題から、大きな回転運動の伝達には不向きである。

Vベルト

Vベルトは、ベルトの断面を逆台形にしたベルトである。Vベルトには、台形の溝が彫られたVプーリが使用される。ベルトとプーリの接触する面積が大きくなることにより、回転運動を伝える摩擦が大きくなり、滑りを少なくすることができるため、平ベルトと比べてより大きな回転運動の伝達が可能となる。また、ひとつのプーリに複数のVベルトを掛けてより大きな運動を伝えることができ、さらに離れた別の回転軸に運動を伝えたりすることもできる。一般に、ゴムと帆布の一体成型(シームレス)で作られるため、あとからの長さの調節はできない。

歯付きベルト

歯付きベルト(タイミングベルト)は、平ベルトの内側に凸状の歯を付け、プーリの断面もそれにかみ合う凹状になっている。この形状では、回転運動はかみ合いにより伝達されるため、ベルトの弱点である摩擦の滑りが基本的に発生しない。このことから平ベルトVベルトと比べて、大きな力を速い速度で伝えることが可能で、軽量小型、回転が静かなことも合わせて、自動車エンジンなど広く使われる。

プーリ

ベルトに使われるベルト車をプーリという。大きな方を大プーリ、小さな方を小プーリという。

ベルトの選定

ベルトの選定は、主に回転比、角度、長さ、張力から判断する。

回転比

ベルトの伸び縮みや滑りを除いた場合、回転比は以下の通りとなる。ただし、実際には、ベルトとプーリによる摩擦で回転運動を伝えるため、その接触面が小さくなると摩擦力は小さくなり、滑りが大きくなって回転運動の伝達効率は低下する。そのことを考慮しなければならない。

ベルトの速度伝達比

ベルトの角度

ベルトとプーリの摩擦力をできるかぎり大きくして滑りを小さくしなければならない。小プーリの巻き掛け角θ₁を大プーリの巻き掛け角θ₂よりも大きくする必要がある。

ベルトの巻き掛け角

ベルトの長さ

ベルトの長さの近似は下記で求めることができる。

ベルトの長さ

ベルトの初張力

ベルトの張力は下記で求めることができる。ベルトとプーリの間に摩擦力を生じさせるためのベルトへの適当な張力を初張力(F₀)といい、下記で表される。

ベルトの張力

ベルトの張力をFeとすれば、Feは、張り側(Ft)とゆるみ側(Fs)の負となる。

ベルトの張力

ベルトの速度限界

ベルトの速度の限界は、おおよそ20m/s程度とされている。

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