ジークムント・フロイト|心理学,精神分析学,哲学,無意識

ジークムント・フロイト Sigmund Freud、

フロイト(1856.5.6 – 1939.9.23)は、オーストリアのウィーンを中心に活動した精神医学者。主著は、『精神分析学入門』、『夢判断』。精神分析学の創始者。ウイーンで開業し、夢の研究や神経症の治療に当たる中で、人間の心には無意識の領域が存在し、無意識が意識に影響を与えると考え、精神分析学を創始した。フロイトの理論は、倫理的な批判を集めたが、ユング、アドラーなど優秀な研究者の支持を受け、1908年には、第1回国際精神分析学大会が開かれるに至る。葉巻を愛好したが、口蓋がんに苦しみ、死ぬまでに手術を33回受けた。1938年、ナチスのユダヤ人迫害のため、イギリスのロンドンに亡命し、翌年死去した。

フロイト
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目次

フロイトの生涯

オーストラリアのユダヤ人の家に生まれ、ウィーン大学の医学部に入学し、生理学研究室で神経系の発生について研究した。経験的事実を厳密に観察する研究方針が後の精神分析学に結びついたと言われる。29歲のときにフランスに留学し、当時、神経症学の実績のあるシャルコーのもとで催眠実験を見学し、心理的原因によって手足の麻痺などのヒステリーが発生することを学んだ。30歳のときにウィーンで開業し、頭に浮かぶことを自由に話させる自由連想法によって、神経症(ノイローゼ) のの患者の治療を行う。
治療を行ううちに、フロイトは無意識の中に抑圧された性的欲望が、神経症の原因であると考えた。社会的道徳的に抑圧された衝撃はコンプレックスとなり不安や強迫症、手足の麻痺、知覚障害を引きこすが、抑圧された性的欲望を患者に自覚させ、意識的に盛業することによって神経症を解消しようとした。
性の本能を中心にするフロイトの精神分析学は、反道徳的であると当時は受け入れられなかったが、フロイトのもとにはユング・アドラー・ビンズワンガーなどの優秀な研究者が集まり、ウィー ン精神分析学協会が作られた。1908年にはザルツブルグで第1回国際精神分析学大会 が開かれた。
その翌年にフロイトはアメリカ合衆国の大学にまねかれて講演を行い、1910年にはユングが会長となって国際精神分析学協会が設立され、精神分析学への世界的な評価が高まる。晚年には口蓋ガンに苦しみ、33回におよぶ手術を受けた。また、ナチスのユダヤ人迫害を受け、ロンドンに亡命し、そこで83歳で死去する。

フロイトの著書

『精神分析学入門』(1932年):ウィーン大学での講義をま とめた。フロイトの精神分析学を簡易に解説された内容になっている。
『夢判断』(1900年):夢判断とは、夢を手がかりに本人の心の奥底にひそむ深層心理を明らかにする。日中に意識が活動しているときは無意識は抑圧されているが、夜に意識が活動を停止すると、無意識の内容が夢としてあらわれるとした。ただし、性的な願望など意識にとって都合の悪い内容は、ゆがめられたり象徴化されてあらわれるため、夢判断は象徴的な夢の中身を解説し、無意識のメッセージの内容を読み取る。

エディプス・コンプレックス

フロイトは、心の発達を口愛期、肛門期、男根期、潜伏期、性器期の5つに 分類している。彼は、エディプス-コンプレックスを、男児が4〜7歲ごろの男根期におきる現象と説明している。このころの男児は母親に愛着を感じ、恋愛感情のようなものを抱く。これに対し、父親にはライバル心や憎しみを感じるようになる。しかし、父親を殺害し、母親を得ることは現実では不可能であり、自らの感情は満たされず、無意識へと抑圧される。この心理をエディプス-コンプレックスという。 (なお、女児が母親に対抗意識を感じ、 父親に愛を示すことをエレクトラ-コンプレックスという)

フロイトのエス・自我・超自我
フロイトのエス・自我・超自我

自我・エス(イド)・超自我 1/4

フロイトは人間の心を自我.エス(イド).超自我の3つに分類した。エスや超自我、自我はいずれかが強すぎたり、また弱すぎても心の安定を失うとされるので、それぞれのバランスをとることを求められる。

エス(イド)es(id)|無意識 2/4

エス(無意識)は性的衝動を中心とする本能的な欲求のエネルギー(リビドー)がたくわえられた無意識の部分であり、欲望や衝動の源泉であり、生物の本能であるといえる。エスは、ひたすら衝動を満足させて快感を得ようとする。自我は、無意識のエスからわきあがる欲求の充足をおさえたり、延期したりしながら現実と衝動とを調節しようとする。エス(ドイツ語)、イド(ラテン語)は中性単数の代名詞で、英語のit「それ」を意味する。

超自我(スーパーエゴ)super ego 3/4

超自我(スーパーエゴ)とは、親の教育を自分の心の中に取り込んだ道徳的な良心である。子どもが親からしつけを受けていく中で良心や道徳が心の中に取り入れられて形成される。超自我は、親の役割と同じように「・・・してはならない」、「・・・しなくてはならない」という形で、欲望に動かされる自我を厳しく抑制し、欲求のままに行動しようとするエス(無意識)の部分を監視・抑制する。超自我の形成が不十分な人は、自分の衝動を抑制できずに非行や暴力的な行動に走りやすく、超自我が強すぎても、欲求を抑えすぎて人格が歪んでいく。

自我(エゴ)ego 4/4

自我(エゴ)は、エス(無意識)と超自我の間にあり、心の根底の無意識からは欲望がわきあがり、社会的道徳を心の内に取り入れた超自我がそれを監督して抑制しようとする。自我は両者のあいだで欲求の充足を抑えたり、形を変えたり、延期したりしながら調整する。調整に失敗すると自我は安定を失い、心身にさまざまな不適応反応があらわれて神経症におちいる。

『続・精神分析入門』からの引用

自我のエスに対する関係は、暴れ馬をコントロールする騎手のようなものだ。ただし、騎手はこれを自分の力で行うが、自我は隠れた力で行う、という違いがある。この比喩を続けて用いると、騎手が馬から落ちたくなければ、しばしば馬の行こうとする方向に進むしかないように、自我もエスの意志を、あたかもそれが自分の意志であるかのように、実行に移すことがある。

リビドー(性衝動)libido

リビドーとは、心の奥底の無意識の部分(エス・イド)蓄積された性衝動である。リビドーは、 意志による統制がむずかしい原始的な衝動であり、人間の心や行動をあやつる心的な エネルギーである。フロイトの精神分析学によれば、社会的・道徳的に許されない性的欲求は、無意識の中に抑圧されるが、抑圧された衝動はコンプレックス(無意識)に抑圧された心的内容の集まり)となり、人間の意識を操り理由のない不安、強迫症、手足の麻痺などの神経症をおこす。フロイトは、無意識に抑圧された性的欲求を意識化し、自覚的にコントロールできるようになることで、神経症は解決すると説いた。

無意識

フロイトは心を意識、前意識、無意識の3つの層をもつものとした。意識とは心の表層で、各自が自覚している、気づいている心の領域である。

  • 前意識:普段は感覚的に分かっていても明確に意識されていないが、何かの契機で意識化が可能な領域
  • 無意識:意識化ができない領域で自覚されていない深層心理であり、そこには、意識されると不安やストレスが生じる抑圧された欲求や記憶が存在する
  • エス:心の組織のうち無意識にかかわり、論理性や社会性が働かず、快楽原則のみ従う。

『精神分析学入門』フロイトからの引用

私どもは無意識の組織体系を一つの大きな控え室にたとえ、その中でたくさんの心的な動きが個々の人問のように忙しく動きまわっていると考えるのです。この控え室には、さらに第二の、それよりは狭い、サロンとでもいうべき部屋がつづいていて、そこには意識も腰をすえている、というわけです。ところが、二つの部屋の敷居のところには一つひとつの心的な動きを監査し、検閲する一人の番人がいて、自分の気にいらぬことをするものはサロンには入れません……私どもは、それを「抑圧された」と呼びます。

フロイト
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エディプス-コンプレックス

フロイトは、ギリシア神話の悲劇である『オイディプスの物語』から、父への潜在的な敵意や反発、母への思慕の念を、エディプス-コンプレックスと名付けた。エディプス=コンプレックスとは、性の衝動(リビドー)による自我の発達である。5~6歳くらいの男の子は、母親に性の衝動(リビドー)を向け、母親の愛情を一人占めしようとし、父親を邪魔者と感じてしまう。しかし、このような願望は満たされないので、母親への愛情と父親への憎しみは無意識の中に抑圧される。

『オイディプス王』のあらすじ

アテネの北方チーバイに暮らす国王夫妻の間にオイディプスという男子が生まれた。オイディプスは、生後まもなく、様々な出来事をへてコリントの国王夫妻に娶られる。時間がたち、オイディプスは、デルフォイで「故郷に帰れば、父を殺し、母を娶るであろう」という神託を受ける。悩んだ彼はテーバイに向かうが、その途中、誤って老人を殺してしまう。実はその人物が父親であったと後に知る。その後、彼はテーバイの王となリ、年上の妻を娶るが、愛した妻は実母であった。逆らえない運命に、彼は悩み苦しむ。

自由連想法

フロイトは神経症の患者の治療法として自由連想法を用意た。患者をソファーに横にならせて、自由に思いつき、連想することを話させ、それを繰り返すことによって、患者の過去の体験の中で無意識に抑圧された欲望や記憶を意識に引き出し、明瞭化し、それを患者が自覚できるようにする。患者が無意識に抑圧されたものを意識化し、自分でコントロールできるようになると神経症から解放されるというのが、精神分析学の治療理論である

コンプレックス complex

不安や恐怖など、マイナスの感情を伴う体験が、心の奥底の無意識に抑圧されて固定されたもの。抑圧される苦悩によって、劣等コンプレックス・学歴コンプレックス・人種コンプレックスなどさまざまなものがある。過去の苦しい体験や心の傷がコンプレックスとなって抑圧されると、それを速想させる対象に出会うごとに不安や恐怖が生まれ、自我の統制が失われて心理的なパニックにおち いる。一般には劣等感の意味に用いられるが、劣等感は自分が何かに劣っている苦しみを抑圧するコンプレックスの一種なので、正しくは劣等コンプレックスと呼ぶ。

死の本能(タナトス)tanatos

事物を解体し破壊しようとする死への欲求で、対象への攻撃欲としてあらわれる。フロイト は、破壊的なタナトスの欲求と、人間を結合し統一するエロスの欲求を、人間の二つ の根源的な欲求とした。生あるものは無生物の状態から生まれたものであるから、死への本能は根源的な無生物の状態にもどろうとする欲求とも考えられる。
エロス(性の欲求)とタナトス(死の本能)は心の中でからみあいながら働き、性愛においては男女が親密に一体化しようとするエロスの面と、相手を攻擊して支配しようとするタナトスの面があらわれる。生へと向かうエネルギーであるエロスは、死へと向かうタナトスの欲求を中和する働きをする。

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