トマス・ホッブズの政治学

トマス・ホッブズの政治学

トマス・ホッブズは政治学において大きな影響を与えた。特に彼の主著である『リヴァイアサン』は、当時、発達しつつあった自然科学と数学の影響を組んだ中で、具体化された政治哲学として、17世紀に代表される政治学の成果のひとつである。

トマス・ホッブズの歴史背景

17世紀のヨーロッパは1642年に始まったピューリタン革命をはじめ動乱の時期であった。1588年、トマス・ホッブスが生まれたが、そのきっかけもスペイン無敵艦隊がイングランドに近づいていると恐れた母親が早産したのがそのきっかけである。ホッブズは平和な研究人生を望んだが、ホッブズの思想・哲学のために主教たちに火災りの刑に処せられる危機に陥ったり、フランスに亡命をしながら家庭教師をしたりと決して平穏な人生ではなかった。そして1651年に出版された『リヴァイアサン』においてホッブズは政治学者・哲学者として、統治問題への具体的な解決策を、社会に提示することになる。ホッブズ『リヴァイアサン』の中で、彼が「政治学」と呼ぶものが何であるかを明らかにした。それは、社会の中で生きている人間に関わる知識、政府が国民のために平和な国家を樹立してそれを維持することができるようになる知識の集成である。

平和にいたるためのホッブスの方法

ホッブズの方法論は、当時、イタリアのガリレオ物理学に大きな影響を受けたことに由来しており、ホッブズは思索の結論が明瞭で曖昧さもない知識として認められなければならない。幾何学やガリレイの物理学において使われるような演繹的推論ならば、論理的に異論の余地内結論を生みだすこともできるのではないか。こうしたいわゆる科学的な考え方にもとづき、政治社会の組織化と運営に関してもそれと同類の知識にいたるために演響的推論を適用したことにホッブズの革新性が認められる。

科学的人間の把握

ガリレオは宇宙の出来事を分析するために科学的な方法を用いた。たとえば、重さと距離と角度に関するデータから物質的物体の運動を演響してそれを予見した。ホッブズの革新性は、人間の行動の研究に科学的な方法を採用としたことがある。もしも人間の本性についての基本的なことがらを明らかにすることができれば、事実から人間がある状況の中でどのように行動するかを演響することができるのではないか。悲惨な戦争が続く中で、どんな原因が平和的な共存をもたらすのかということを考え、平和と安全を樹立し維持できるような政府の形態のための処方等を提示しようとした。それが『リヴァイアサン』の大胆で独創的な企てであるといえる。

本当は、ただ一つのものしか実在していないのに、それが一切のものごとの基盤となっているため、私たちはうっかり、夢のはかない幻のようなものだとか、鏡を使っていのままに数を増やせる像のようなものにすぎないものをとらえては、それらをまともな実在だと主張し、それらは、私たちの脳髄が生み出した幻想や産物以上のものではなく、それらを貫くただ一つの内なる実在は、運動でしかないのに、である。

自然状態

ホッブズは、国家ができる以前のとき、個人は自然状態にあるとした。自然状態では、人々は力や能力で互いにほとんど差はない。さらにそこでは善でもなければ悪でもない。自然状態では各人は、生命を保持し、死を避けるという自然権を行使しているのみである。こういう状態では決して平穏な平和ではなく、幸福は実現できず、他者たちと我々が衝突する状態してしまう。いわゆる「万人が万人に対する戦い」の状態である。

「管理権も支配もなく、〈私の物〉と〈あなたの物〉の区別もなく、各人が自分で獲得しうる物だけが各人の物であり、しかもそれは、それを保持していることができる期間だけである」ような状態のことである。

自然状態から国家の成立へ

自然状態では、万人が万人を敵視し、争い合う状態にあり、本来の目的であった自然権は保障されない。こうしては人々はお互いに契約し、コモンウェルス(政治体)を、“人為的構造体”を作る。神が自然的世界を作ったのとまったく同じように、われわれはそれを模して〈リヴァイアサン〉という人為的〈コモンウェルス〉を作るのである。それは、誇り高く強力であるが道徳的な創造物であり、地上において最高のものであるが神の法に従う創造物である。

リヴァイアサン

ホッブズ自然状態を脱するべく社会契約によって作られた国家をリヴァイアサンと呼んだ。国家は市民の生命や財産を守り恒久的な平和を維持しなければならない。そのために人々が一緒に契約をむすび、強力な主権者に身を委ねることになる。主権者はそれに従う人々の生命を常に守り行為する権利が与えられるが、その代わりに国民はそれに服従しなければならない。

トマス・ホッブズへの批判

  • 人間が運動状態にある物質の断片とみなされている
  • 自然状態における人間の本性が悪徳に描かれている
  • 至高の主権者に絶対的とも言える権力が与えられている
  • 専制政治の理論的支柱
  • 神的な統治権をもつ主権者という側面が否定され、法を執行する権力のみが授けられた主権者の権利であること