チャック(旋盤)
旋盤に使用されるチャックは、加工する材料を強固に固定するための装置である。チャックは工作物を確実に保持し、高速回転中の振動を最小限に抑え、精度の高い切削加工を可能にする。主に、3つ爪、4つ爪、コレットチャックなどの種類があり、加工目的や材料の形状に応じて使い分けられる。チャック(旋盤)は、工作物の形状や寸法精度、加工効率に直接影響を与えるため、適切な選定が求められる。
チャッキング
チャッキングとは、工作物をチャックで保持することをいう。チャッキングでは回転運動に耐えるよう工作物を固定し、旋盤の回転中心と工作物の中心を合わせる位置決めを目的としている。中心からずれていると精度が出ない、無駄な加工が多くなるなどの問題が起こる。一度、チャッキングを外してしまうと芯がずれてしまう問題がある。
チャックの種類
チャックは、工作物を固定して回転させるための装置で、工作機械における精密な加工を支える重要な役割を果たす。旋盤やフライス盤、ドリルなどで用いられるチャックには、さまざまな種類があり、それぞれの形状や構造によって異なる用途や利点がある。代表的なものには、3つ爪チャック、4つ爪チャック、コレットチャック、電磁チャックなどがあり、加工する材料や形状、精度の要件に応じて使い分けられる。
3つ爪チャック
3つ爪チャックとは、三点で固定するチャックである。部材をチャック中央におき、チャック側面の穴に着脱式のハンドルを差し込んで回すと、3つの爪が中心に向かって連動して動き、部材を保持する仕組みとなっている。3つの爪が自動的に中心に向かって均等に移動するため、構造上、4つ爪チャックよりも三点指示のため中心が出やすい。部材のどこをつかむかで外径チャック用と内径チャック用がある。
旋盤の三つ爪チャック。#旋盤 #3つ爪チャック pic.twitter.com/IsUJ38h2LB
— 町工場@フラターテック (@FlutterTec) June 2, 2021
硬爪
硬爪のチャックは焼入れされており、繰り返し使えるよう耐摩耗性に優れている。硬度が高い反面、工作物表面に傷がつきやすいため、間にアルミニウムの板や銅板をはさんで使う。
生爪
硬爪が標準品で部材の大きさ・形状は問わないが、生爪は工作物ごとにオーダーで作るチャックである。オーダーで作るため、高精度な加工を行う場合に用いる。爪を工作物の外形寸法に合わせて加工することで旋盤の回転中心と生爪の位置決め中心が合い高精度が出る。また、工作物を面で保持することができるので傷もつかない。
4つ爪チャック
4つ爪チャックは、独立した4本の爪で工作物を把握するチャックである。各爪を個別に調整できるため、非対称形状や異形断面の材料の固定が可能で、精密な位置合わせが求められる場面で使用される。特に、不均一な形状の材料や複雑な加工を必要とする場合に適しており、精度を求める加工に重宝される。
四つ爪チャックでの芯だし😶 pic.twitter.com/gvk4tnUSvo
— Takoyaki (@Takoyak27601812) June 19, 2023
心押し台のセンタ
3つ爪チャック、四つ爪チャックは片側固定するため、細長い部材を支えることができない。心押し台のセンタで工作物の右端面を支えることができる。センタには固定センタ(デットセンタともいう)と回転センタがあり、固定センタは一体物のため回転の精度が高いが、接触点は摩擦により摩耗や発熱による熱膨張が発生する。一方、回転センタはベアリングが内蔵されおり、接触点が工作物と一緒に回転するため、摩耗や発熱を抑えることができる。
コレットチャック
コレットチャックは、3つ爪が使えないような直径が小さな工作物に使う。コレットをねじを切ったリングで締め付けるようにしてワークをチャックする。チャックの再現性精度が良く、広い面積で工作物を保持するため、傷がつきにくく、薄肉のパイプやアルミニウム、銅といった軟らかい材料の加工にも適している。 4点が単独で動く仕組みで中心の位置合わせが困難である。
回転工具を把握するには種々の方法がありますが、比較的容易に高精度加工を可能にするのがコレットチャックです。
特によく用いられるのが「スプリングコレット」と「焼きばめコレット」ですが、松浦製作所では微細加工を行う機械では焼きばめ式を利用します。 I#機械加工 #スプリングコレット pic.twitter.com/1Okax9m2Hx— 「微細・精密加工」大好きな町工場 松浦製作所 (@bisai_matsuura) August 12, 2020
スクロールチャック
スクロールチャックとは、長い円筒ワークを加工するチャックである。端面にはセンタドリルにてセンタ穴を両側にあけておく。主軸のつかみ代の部分(スクロールチャックがじゃまで加工できなかった部分)は左右逆にしてチャックし加工する。
おはようございます!!
NC旋盤で仕上げしたいけど、同芯が出ないって時は、ちっちゃいスクロールチャックを治具に付けて、それを掴んでそっちで芯を出すんですけど。
チャックでチャックを掴んでるの何か好きなんですよね。今日も1日ご安全に!! pic.twitter.com/2naENNl8AP
— 元アルク生技研のK.H前アカ復活しました (@ALC_seigiken) March 22, 2023
真空チャック
真空チャックとは、真空(吸引)によって、部材を固定するチャックである。チャックする面に多数の穴・溝が設けられており、真空ポンプで吸引する仕組みである。精密加工で使われるためチャック面は高い精度を出す必要がある。真空チャックを使用するには、旋盤の主軸の中に真空装置に接続できる真空回路が必要で普通に比べて設備投資がかかる。精密加工向けのチャックである。
ヒーター内蔵のポーラスチャックであるHoVaC
薄いフィルムを加熱すると変形してしまいますが
加熱と吸着を同時に行うことで変形無く加熱が可能です!詳細はYOUTUBEも御覧ください!https://t.co/gfhXl70m3z#真空チャック #吸着 #ポーラスチャック #ヒーター #加熱 pic.twitter.com/IxpiOi4aOv
— 株式会社吉岡精工 (@fp0XTnluc2ttByi) August 15, 2022
電磁チャック
電磁チャックは、電磁力を利用して工作物を保持する方式であり、特に平面研削盤で用いられることが多い。電気を通すことで強力な磁力を発生させ、作業後に電源を切ると簡単に工作物を取り外すことができる。加工対象の着脱が簡便であり、大きな部品や厚みのある素材に適している。ただし、磁性体でない素材には使用できない点に注意が必要である。