エンジニアリングプラスチック|工学で使われる優れた樹脂

エンジニアリングプラスチック

エンジニアリングプラスチックとは、引張強さ、耐衝撃性などの機械的性質や電気絶縁性に優れたプラスチックである。金属の競合材として使用されることが多い。金属に比べて軽量化に使われることが多い。一般に耐熱性がないが、フェノール樹脂のように安価で耐熱性に優れたものも多い。エンプラとして略して使われ、特に優れた強度と耐熱性をもつ高性能なものをスーパーエンプラとも呼ばれる。

エンジニアリングプラスチックの特性

エンジニアリングプラスチックは、高い強度と耐熱性を持つことが特徴であり、金属材料に匹敵する機械的な性能を持ちながらも軽量である。また、耐摩耗性や耐薬品性にも優れているため、過酷な使用環境においても優れた耐久性を発揮する。これらの特性により、エンジニアリングプラスチックは多くの産業で金属の代替材料として利用され、製品の軽量化やコスト削減に貢献している。

エンジニアリングプラスチックの種類

エンジニアリングプラスチックにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特性を持つ。代表的なエンジニアリングプラスチックとして、「ポリアセタール(POM)」「ポリカーボネート(PC)」「ポリアミド(PA、ナイロン)」「ポリエチレンテレフタレート(PET)」「ポリブチレンテレフタレート(PBT)」などがある。これらは、強度、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性などの特性が異なるため、用途に応じて使い分けられている。

ポリアセタール(POM)

ポリアセタール(POM)には、製法の違いにより単独重合体のホモポリマーのもの(デルリン)と共重合体のコポリマーのもの(ジュラコン)がある。機械的性質は金属に最も近く、耐疲労性、耐摩耗性、寸法安定性、耐水性、耐薬品性がよい、不透明で乳白色である。デルリンは85°C、ジュラコンは105°Cまでの高温連続使用に耐える。そのため、耐疲労性と耐摩耗性の高さが求められる電気製品の可動部分、歯車軸受ボルト、自動車部品などに使用される。また、寸法安定性がよいことから、精密機器の機構部品にも用いられる。繊維状のポリアセタールは、テニスラケットのガットや漁網にも利用される。

ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネート(PC)は、透明度が高く、熱可塑性樹脂の中では引張強さ、圧縮強さ、耐衝撃性に最も優れている。成形収縮率が小さく、寸法精度の良い成形品が得られる。耐熱性、耐寒性にも優れ、-100~120°Cの広い範囲で機械的性質の低下が少ない。電気絶縁性もよい。しかし、繰返し変形には弱く、塩素含有溶剤に溶けるという欠点がある。用途は幅広く、透明性に優れ、精密機器、コンピュータのケーシング、工学ディスク、自動車部品、医療機器、ヘルメット、ハイテク分野などに用いられる。

ポリアミド

ポリアミド(PA)は、ナイロン(ナイロン6やナイロン66 ※名前の数字は、繰返しの単位となる分子中の炭素数)やアラミド樹脂(ケブラー)として知られている。名前の数字は、繰返しの単位となる分子中の炭素数を示している。強靭な材料で摩擦係数が小さく、耐摩耗性、自己潤滑性、耐油性、耐薬品性に優れている。機械的性質に優れた機械材料であるが、吸湿性が高いデメリットがある。

ナイロン6

ナイロン6は、世界初の合成繊維で、引張強さ、曲げ強度、耐摩耗性に優れている素材である。半透明、軽量で水分を吸わず、強度も高い、摩擦係数が小さいため、滑りがよく、自己潤滑性もある。ナイロン6は、その特性から、自動車部品、電気電子部品の歯車ねじ軸受などの機械要素、医療機器の部品として用いられる。

ナイロン66

ナイロン66は耐熱性もあり、ガラス繊維で強化することで240°Cまで耐えることもできる。しかし、吸水性が高く、水を吸うと軟らかくなり、絶縁性も低下する。

ポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明性と耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、ボトルや食品容器の素材として広く使用されている。PETは軽量でありながら強度があり、リサイクルも容易なため、環境に配慮した素材としても注目されている。また、熱安定性も高く、高温環境下での形状保持にも優れているため、電子部品や自動車部品などの産業用途にも使用される。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、耐熱性と電気絶縁性に優れたエンジニアリングプラスチックで、特に電子機器や自動車の配線コネクタなどに使用される。PBTは耐摩耗性と化学的耐性も高く、湿度に対する安定性もあるため、過酷な環境下でも信頼性の高い性能を発揮する。また、成形性に優れ、複雑な形状の部品でも精密に成形することができることから、多様な用途で活用されている。

エンジニアリングプラスチックの用途

エンジニアリングプラスチックは、自動車、航空宇宙、家電、産業機械など、さまざまな分野で利用されている。自動車産業では、エンジニアリングプラスチックが金属部品の代替として利用され、車両の軽量化を実現し、燃費の向上に貢献している。また、家電製品においては、軽量でありながら強度のある材料として、電気絶縁性や耐熱性を持つ部品に採用されている。このように、エンジニアリングプラスチックは、高性能と軽量化の両立を可能にする素材として注目されている。

スーパーエンプラ

スーパーエンプラとは、エンジニアリングプラスチックの中でも、とくに硬度が大きくて粘り強く、耐熱性が150°C以上と高く、耐薬品性をもつ材料である。

  • ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
  • ポリサルホン(PSU)
  • ポリエーテルサルホン(PES)
  • ポリフェニレンスルフィド(PPS)
  • 液晶ポリマー(LCP)
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