面取りカッター
面取りカッターは、穴の入口や外周エッジの鋭角部を意図した幅で“C面”に整える切削工具である。バリ除去と同時にエッジの欠損抑制、組立時の挿入性向上、応力集中の緩和、表面欠陥の隠蔽など多目的に用いる。形状は単刃・多刃・段付き・ガイド付きなどがあり、穴用のカウンターシンク型と、外周エッジをトレースする面取りミル型に大別される。材質はHSSや超硬が主で、TiNやTiAlN、DLCなどのコーティングにより寿命と仕上げが安定する。CNCでは煩雑なバリ取り作業を標準工程化でき、生産性と品質の両立に寄与する。
定義と用途
面取りカッターは、設計で指示された「C0.2」「45°×0.5」などの面取り量を、安定した幾何で再現するための専用工具である。穴の皿取り(カウンターシンク)では、例えば90°の工具でボルト座面や皿ねじの受けを形成する。外周エッジでは、製品周囲をトレースして一定幅の面をつくる。適用材は鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、樹脂など広く、組立性、シール性、塗装性の向上にも効果がある。
構造と種類
- カウンターシンク型:60°/82°/90°/100°/120°などの包括角。皿ねじ規格に合わせて選定する。穴口の面取り・皿取りに適する。
- 面取りミル型:円すい先端をもつエンドミル形状。外周エッジやポケット輪郭の面取りに用いる。可干渉性が高い。
- 多刃・不等ピッチ:びびり抑制と仕上げ向上を意図した設計。
- ガイドパイロット付:穴径に追従し、偏芯やビビリを抑える。
- 材質:HSS/Co-HSSは汎用・低速域、超硬は高硬度材や高能率に適する。
- コーティング:TiN/TiAlN/DLC等で耐摩耗・凝着低減・切屑離れを改善。
角度・サイズの選定
面取りカッターの包括角θは、目的と被削材で決める。汎用は90°が扱いやすく、82°はinch系皿ねじ、120°は薄板での面取り幅確保に有利である。指示が「C0.5」のとき、90°工具なら軸方向送り量aと面取り幅cが一致する(c=a)。一般角度では c = a * tan(θ/2) で近似し、60°なら c≈0.577a、120°なら c≈1.732a となる。外周のトレースでは、工具先端径と干渉、隅Rの残りを考慮して径と突き出しを選ぶ。
幾何の計算例
穴口を90°のカウンターシンクで面取りする場合、目標が「C0.3」なら、軸方向の切込みaを0.3 mmに設定すればよい。120°工具で「C0.3」を得るには a = c / tan(60°) ≈ 0.173 mm と逆算できる。NCで寸法公差が厳しい場合は、プロービングや試し加工で補正量を求める。
材質・コーティング
HSSは靱性が高く欠損に強いが、耐摩耗は超硬に劣る。高硬度材や長時間の連続加工には超硬が有利である。アルミにはDLCや未被膜のシャープエッジが凝着を抑える。ステンレスなど加工硬化しやすい材ではTiAlNが安定しやすい。CBNは焼入れ鋼の微小面取りで有効だがコスト面で限定的である。
加工条件と手順
回転数は周速を材料毎に設定し、送りは刃数当たりのfzを小さめ(例:HSSでfz=0.02–0.05 mm/tooth、超硬で0.03–0.08 mm/tooth)から立ち上げる。穴の皿取りでは段階的な軽切込みでビビリを避ける。外周エッジでは順/逆ミルを使い分け、切屑排出方向とバリ挙動を制御する。切削油はステンレスで効果が大きく、アルミではミストやMQLで凝着を抑制する。工具突き出しは最小化し、芯振れは0.01–0.02 mm以内を目安とする。
NCプログラムの要点
輪郭加工ではエンドミルと同様にG01でトレースし、Zを微調整してC値を合わせる。制御装置によっては直線補間の交点で「C指定」による自動面取りが使える。穴用は位置決め後にRAMPまたは微小ピッチの円補間で当て、所定のaで離脱する。送り過多は振動・面荒れの原因であるため、回転数を変化させるスピードスイープも有効である。
不具合と対策
- バリ残り:切れ味低下、送り過多、逆目が原因。新刃への交換、切込み分割、逆回転当てや二度取りで改善。
- びびり音・同心円状の模様:突き出し過大や剛性不足。不等ピッチ多刃の採用、回転数オフセット、把握長増で抑制。
- 面取り幅ばらつき:芯振れやワーク段差が要因。コレットの清掃、主軸のTIR測定、プローブ補正を実施。
- 凝着・溶着:アルミで発生しやすい。工具表面の摩耗を研磨で除去し、DLCや適切な潤滑で予防。
測定と図面指示
面取り幅はノギスの面取りアタッチメント、専用のchamfer gauge、投影機で評価する。穴の皿取り径はピンゲージと三点測定で推定する。図面では「C0.5」「45°×0.5」のように指示し、エッジの処理規定にはISO 13715の考え方(未定義縁の扱い)を参照すると運用が明確になる。仕上げの外観は表面粗さ、面の連続性は組付け・シール性能に直結する。
安全と保守
切削くずは鋭利であり、手袋や保護眼鏡を着用する。回転停止前の干渉移動は避け、工具はケースで保管し刃先傷を防ぐ。刃先Rの微小な丸まりでもC寸法が変動するため、定期的に再研磨や交換基準(加工個数・外観・寸法安定性)を設定する。穴加工ではドリルの振れや刃先欠けも皿取り品質に影響するため、前工程の点検を併せて行う。外周のトレースではフライス盤や旋盤の剛性・把握精度が重要である。
面取りカッターは、単なる“バリ取り”ではなく設計意図を形にする精密工具である。角度・幾何・材質・条件・測定を一貫して整えれば、外観・機能・寿命に直結する安定したC面が得られる。