収縮率
収縮率とは、材料が冷却・固化・乾燥・焼成などの過程で縮む割合を、元の寸法に対する比率で表した値である。鋳造や射出成形、セラミックスの焼成、コンクリートの打設など多くの工程で使われ、金型や木型の寸法を決めるときの基礎データになる。表し方は%が一般的で、鋳物では1/1000(パーミル)、コンクリートでは×10-4(ひずみ)を使うことも多い。
寸法不良の多くは「縮み」から始まる
図面どおりに型を作ったのに、できあがった製品が小さい。試作の段階でよく起きるトラブルである。溶けた金属や樹脂は高温のまま型に入り、常温まで冷えるあいだに縮む。たとえば長さ100mmの型にねずみ鋳鉄を流し込むと、約1%縮むので製品は99mm前後になる。この縮みを見込んで型をあらかじめ大きく作っておく寸法を「縮み代(しろ)」と呼ぶ。設計者が製品寸法だけを考えていても、型を作る側は常に収縮率を足し込んだ寸法で加工している。
計算式と線収縮・体積収縮
ふつう収縮率と言えば、長さ方向の変化を示す線収縮率を指す。型の寸法をL0、成形品の寸法をLとすると、次の式で求められる。
S(%)=(L0 − L)÷ L0 × 100
体積収縮率は、縮み方がどの方向にも同じであれば線収縮率のほぼ3倍になる。線収縮率が1%なら体積では約3%減る計算である。型寸法の設計には線収縮率を使い、引け巣やヒケのような内部欠陥・表面のくぼみを考えるときには体積収縮のほうが役に立つ。
鋳物の収縮と鋳物尺
鋳造では、収縮が液体収縮・凝固収縮・固体収縮の3段階で進む。このうち型寸法に直接関わるのは、固まってから常温になるまでの固体収縮である。代表的な値はねずみ鋳鉄で約1.0%(10/1000)、鋳鋼で約2.0%、アルミニウム合金で約1.3%、黄銅で約1.5%とされる。ねずみ鋳鉄の値が小さいのは、凝固するときに黒鉛が晶出して体積が膨らみ、縮みの一部を打ち消すためである。木型職人は、この縮み代を目盛りに織り込んだ「鋳物尺(伸び尺)」を使い、普通の物差しと同じ感覚で大きめの型を作る。凝固収縮は引け巣の原因になるため、押湯を付けて溶湯を補い、型寸法とは別に対策をとる。
樹脂の成形収縮率
プラスチックの場合、分子が規則正しく並ぶ結晶性樹脂のほうが大きく縮み、非晶性樹脂は縮みが小さい。結晶化のときに分子が密に詰まるためである。主な材料の目安を下の表に示す。
| 材料 | 区分 | 成形収縮率の目安(%) |
|---|---|---|
| ポリプロピレン(PP) | 結晶性 | 1.0〜2.5 |
| ポリアセタール(POM) | 結晶性 | 1.8〜2.5 |
| ポリアミド66(PA66) | 結晶性 | 0.8〜1.5 |
| ABS樹脂 | 非晶性 | 0.4〜0.7 |
| ポリカーボネート(PC) | 非晶性 | 0.5〜0.7 |
| PA66+ガラス繊維30% | 強化材入り | 0.2〜0.8(方向で差あり) |
測定方法はJIS K 7152-4(ISO 294-4)で決められており、規定形状の試験片を成形して、23℃の環境で16〜24時間置いてから寸法を測る。ここで注意したいのが後収縮である。POMやPPは成形から数日〜数週間たってもわずかに縮み続けるため、出荷直前に測ると寸法が外れていることがある。
ガラス繊維入り材料の異方性
ガラス繊維で強化した材料では、繊維が並ぶ流動方向は0.2〜0.3%程度しか縮まないのに対し、直角方向は0.6〜0.8%と2倍以上縮むことがある。この差が反りの主な原因で、ゲート位置を変えるだけで変形の向きが逆になる場合もある。
同じ材料でも値が変わる理由
カタログの数値に幅があるのは、成形条件によって実際の縮み方が大きく変わるからである。射出成形で特に影響の大きい要素を挙げる。
- 保圧と保圧時間:圧力を高く、長くかけるほど樹脂が補充され、収縮は小さくなる
- 金型温度:高いと結晶化が進んで成形直後の収縮は増えるが、後収縮は減る
- 製品の肉厚:厚い部分ほど冷えるのが遅く、局所的に大きく縮む
- ゲートからの距離:ゲートから遠いと保圧が届きにくく、収縮率が上がる
- 樹脂温度:上げすぎると熱による体積変化が大きくなり、寸法がばらつきやすい
コンクリート・セラミックスにおける収縮
ここまでの例とは仕組みが少し違う。コンクリートは水分が抜けることで縮む「乾燥収縮」が中心で、一般的な配合では6〜8×10-4程度の値になる。長さ変化の試験方法はJIS A 1129に定められ、日本建築学会のJASS 5では、長期の供用を予定する建物で乾燥収縮ひずみを8×10-4以下に抑えるよう求めている。縮もうとする動きが周りに拘束されると引張応力が生じ、ひび割れの原因になる。セラミックスや粉末冶金では、焼結のときに粒子同士がくっついて隙間が消えるため、線収縮率が12〜20%にもなる。成形体をかなり大きく作る必要があり、寸法精度を出すには焼成後の研削が欠かせない。
見込み値の決め方と金型修正の考え方
現場では、材料メーカーの推奨値をそのまま使うことはあまりない。グレードや着色剤、成形機の条件によって値が0.1〜0.3%程度ずれるため、試作型で実際に成形して測り、その結果で本型の寸法を補正する流れが一般的である。補正するときの鉄則は「スチールセーフ」で、型は削って広げるのは安く済むが、肉盛り溶接で小さくするのは費用も納期も大きくかかる。そのため、外形を作るキャビティは少し小さめ、穴を作るコアは少し大きめにしておき、トライの結果を見ながら削って合わせる。公差が±0.05mmを切るような精密部品では、穴と外形で別の収縮率を設定したり、方向ごとに見込み値を変えたりする細かい調整も行う。
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