ブローホール
ブローホールとは、鋳造や溶接で溶けた金属が固まるときに、内部のガスが外へ逃げ切れずに残ってできる空洞の欠陥である。形は球状か楕円状がほとんどで、空洞の内面はなめらかで光沢がある。英語ではblowholeまたはgas porosityと呼ばれる。溶接分野ではISO 6520-1の不完全部分類で番号2011「ガス孔」にあたる。大きさは直径0.1mm程度の微細なものから数mmに達するものまで幅広い。少数であれば実用上問題にならないこともあるが、数が多いと強度や気密性が下がり、圧力容器や油圧部品では不合格の原因となる。
なぜ気泡が閉じ込められるのか
原因の多くは、溶けた金属と固まった金属とでガスを溶かし込める量(溶解度)が大きく違うことにある。分かりやすい例がアルミニウム合金と水素の組み合わせである。融点660℃付近での水素の溶解度は、液体のアルミニウムで約0.69mL/100g、固体ではわずか約0.036mL/100gしかない。その差はおよそ20倍で、凝固の瞬間に溶けきれなくなった水素が一気に気泡になる。溶けた金属に入り込む水素の量は、ジーベルツの法則にしたがう。
[H] = K × √pH2
ここで[H]は金属中の水素濃度、Kは温度で決まる定数、pH2は雰囲気中の水素分圧を表す。湿度の高い梅雨時期に不良が増えるのは、空気中の水分が溶けた金属に触れて分解し、水素分圧が上がるためである。鋼の場合はこれとは別に、溶けた鋼の中の酸化鉄(FeO)と炭素が反応して一酸化炭素(CO)ができる経路もある。Si、Mn、Alといった脱酸元素が足りないと、このCOガスが気泡として残りやすい。
鋳物に生じるブローホール
砂型鋳造では、鋳型から出るガスが大きな発生源になる。生砂型には通常3〜4%前後の水分が含まれ、中子の粘結剤も高温の溶湯に触れると分解ガスを出す。鋳型の通気性が悪いと、このガスが行き場を失って溶湯の中に押し込まれる。アルミ溶湯の場合は、アルゴンや窒素を吹き込む回転脱ガス処理で水素量を0.1〜0.15mL/100g程度まで下げるのが一般的な管理水準とされる。脱ガスの効き具合は、減圧した容器の中で試料を固めて気泡の出方を見る減圧凝固試験で確認する。
ダイカスト特有の巻き込み
ダイカストでは、溶湯中の水素よりも空気の巻き込みのほうが主な原因になる。ゲート部を30〜60m/sという高速で溶湯が通過するため、金型内の空気や離型剤から出たガスを抱え込んだまま固まってしまう。対策として、金型内を10kPa以下まで減圧してから射出する真空ダイカストが使われる。現場で見落とされやすいのが、後工程との相性である。通常のダイカスト品にT6などの熱処理を行うと、内部に閉じ込められたガスが膨らんで表面にブリスター(ふくれ)が出る。溶接した場合も同じことが起こる。そのため、熱処理や溶接が必要な車体構造部品では、真空装置の分だけ設備費が高くなっても真空ダイカストを選ぶ判断がよく行われる。
溶接部に生じるブローホール
溶接で発生する原因は、ほとんどが施工条件と材料の管理に関わる。現場でよく指摘される要因を次に挙げる。
- シールドガスの不足や乱れ。炭酸ガスアーク溶接では流量15〜25L/min程度が目安で、風速が2m/sを超える場所では防風ついたてが必要になる。
- 母材表面に付いた油、錆、塗料、水分
- 亜鉛めっき鋼板の溶接。亜鉛の沸点は約907℃で、鋼の融点よりはるかに低いため、溶接中に亜鉛が蒸発してガスになる。
- 被覆アーク溶接棒の吸湿。低水素系の溶接棒は使用前に300〜350℃で1時間程度乾燥させるのが基本とされる。
- アーク長が長すぎることによる大気の巻き込み
引け巣・ピンホールとの見分け方
破断面や断面を観察すると、空洞系の欠陥でも原因によって見た目がはっきり異なる。とくに引け巣と取り違えると、ガス対策をいくら進めても不良が減らないことになるため、判別は最初の手順として欠かせない。ピンホールはガスが原因という点で同じ仲間だが、表面近くに集中する点が異なる。
| 項目 | ブローホール | 引け巣 | ピンホール |
|---|---|---|---|
| 主な原因 | 溶解ガス・巻き込みガス | 凝固時の体積収縮 | 表層付近のガス |
| 形状 | 球状・楕円状 | 不規則で枝分かれした形 | 針状・微小な穴 |
| 空洞の内面 | なめらかで光沢あり | ざらざらで結晶(デンドライト)が見える | なめらか |
| できやすい場所 | 内部全体、上側 | 肉厚部、最後に固まる部分 | 表面のすぐ下 |
検出方法と判定の基準
内部の空洞を見つけるには非破壊検査が使われる。もっとも確実なのは放射線透過試験で、鋼の溶接継手はJIS Z 3104に従って評価する。この規格では、ブローホールやそれに似た丸いきずを「第1種のきず」とし、大きさに応じた点数を合計して1類から4類までの等級に分ける。超音波探傷試験は割れや融合不良のような面状のきずには強い一方、小さな球状の空洞は反射が弱く見逃しやすい。複雑な形の鋳物では、X線CTで三次元的に気泡の位置と大きさを測る方法も広まっている。
現場で効く対策の考え方
対策の基本は、ガスの供給源を減らすことと、ガスが外へ抜ける道を確保することの2つに尽きる。溶接では開先まわりの清掃と溶接材料の乾燥管理が、鋳造では溶湯の脱ガスと鋳型の乾燥、ガス抜き穴(ベント)の配置が中心になる。それでもゼロにできない場合、気泡の出る場所を機械加工で削り取る部分へ寄せる鋳造方案を組むことがある。油圧バルブのボディのように気密性が求められる鋳物では、樹脂を空洞に染み込ませて封じる含浸処理が量産で広く採用されている。不良品を作り直すよりも費用を抑えやすいため、鋳物メーカーと発注側の間で、図面に含浸処理を認めるかどうかを事前に決めておくことが多い。
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