バルブスプリング|カム追従と戻りを両立する重要部品

バルブスプリング

バルブスプリングは内燃機関のバルブ系を閉方向へ復帰させ、シートに確実に着座させるためのコイルばねである。カムの揚程・加速度と往復運動質量に見合う座圧(シート荷重)と開弁時荷重(オープン荷重)を与え、バルブ浮きやサージングを抑制する役割を担う。DOHCやOHVなど機構の違いにより必要特性は変わるが、本質は高回転域でも追従性と耐疲労性を両立させる設計にある。材料、巻き形状、自由長、ばね定数、固有振動数、表面処理、端面仕上げなどの要素を最適化し、へたりや折損の発生を抑えることが重要である。

構造と作動原理

バルブスプリングは円筒コイルが一般的で、シリンダーヘッド側のスプリングシートとリテーナで挟持される。端面は研削で平行度を確保し、偏荷重と応力集中を低減する。作動中はカムがロッカーやタペットを介して弁を押し下げ、ばねは弾性エネルギーを蓄えて復帰力を発生する。必要な座圧はアイドル安定と密封性、開弁時荷重は高回転での追従に直結し、過大であれば摩耗・損失増、過小であれば浮きや打音を招く。

  • 座圧:アイドル時の密封確保とバルブシール性に寄与
  • 開弁時荷重:高回転での追従性・バルブフロート抑制
  • 端面研削:荷重偏心・応力集中を緩和

種類(形状・構成)

バルブスプリングには用途に応じた多様な形態がある。単列の円筒コイルは汎用で、二重・三重構成は固有振動数の分離と減衰効果によりサージング抑制に有利である。ビー・ハイブ(先細)形状は巻径を段階的に変化させて共振帯を広げ、高回転安定性と軽量化を図る。可変ピッチは低荷重域の柔らかさと高荷重域の剛性を両立し、オーバル線(楕円線)や角線は応力分布を改善する。

  • 単列・二重・三重スプリング:共振分散と冗長性を確保
  • ビー・ハイブ:軽量・高回転安定、リテーナ小径化に有利
  • 可変ピッチ:低速応答と高速剛性の両立
  • 角線・楕円線:表面応力を低減し耐疲労性を向上

設計パラメータと動的挙動

バルブスプリングのばね定数は線径d、平均径D、巻数n、せん断弾性係数Gで概略決まる(k≒Gd^4/(8D^3n))。スプリング指数C(=D/d)は5〜12程度が実用域で、小さすぎると曲げ・ねじり応力が増し、表面欠陥の影響が顕在化する。固有振動数は等価質量m_eqと関係し、f_nがカム励振の高調波と一致するとサージングが起きるため、巻径変化や二重化、ダンパ併用で回避する。コイルバインド(全巻密着)は禁止領域であり、最大揚程にマージンを確保する。

  • 自由長・作動長:セット(永久たわみ)と余裕長を管理
  • 座圧・開弁時荷重:N/mmの直線性と公差を保証
  • 固有振動数:f_nの分散設計で共振回避
  • 許容応力:S-N曲線とGoodman線図で疲労安全率を評価

材料・製造・表面処理

バルブスプリングにはSi-Cr系やCr-V系のオイルテンパー線、ピアノ線系高強度材が用いられる。冷間成形後に低温焼戻しを施し、ショットピーニングで圧縮残留応力を付与して耐疲労性を高める。表面はリン酸塩皮膜や窒化・窒化拡散処理、樹脂コートで耐食性・耐摩耗性を付与する。線材の清浄度・偏析管理、巻取り後のストレスリリーフ、端面研削の平面度管理が品質の要である。

耐久性と不具合モード

バルブスプリングの主な不具合はへたり、疲労折損、サージングによる打痕、コイル間接触の摩耗、腐食起点の割れである。へたりは長期高温と高応力の組合せで進行し、座圧低下によりバルブフロートが誘発される。折損は線表面の欠陥や加工傷、過小スプリング指数、端面仕上げ不良が引き金となる。対策は適正荷重設計、表面仕上げ向上、ピーニング強化、温度管理、リテーナ軽量化などである。

計測・検査と受入基準

バルブスプリングは荷重-たわみ特性試験で座圧・開弁時荷重と直線性、公差を確認する。自由長、固有振動数、全巻密着長、端面平行度も検査項目である。耐久面では一定応力振幅での繰返し試験(回転曲げ・ねじり相当)により寿命分布を把握し、工程能力でばらつきを管理する。割れ探索には磁粉探傷や渦流を用い、表面粗さとコーティングの密着性も評価する。

関連部品と設計インタフェース

バルブスプリングはバルブ、リテーナ、コッタ(ロック)、スプリングシート、ロッカーアームやラッシュアジャスタ、カムプロフィールと相互に影響する。往復質量の低減は必要荷重の低減につながり、摩擦・損失を抑える。リテーナのチタン化やコッタ形状最適化、シムによる座圧微調整が一般的である。締結要素としてはリテーナ周りの精密なはめあいとともに、周辺機器で用いるボルトの締付管理が信頼性に寄与する。量産ではロット間のばね定数の一致性が重要で、エンジン出荷前の動弁系一体評価で実機適合を確認する。