トーションバー
トーションバーは、棒材のねじり変形をばねとして利用する直線状のばね要素である。円形または角形の鋼棒を固定端と可動端で拘束し、可動端の回転(ねじり角)に比例して復元トルクを発生させる。自動車の前後サスペンション、装置の高さ調整機構、産業機械のリンク支持など、限られたスペースでばね機能を得たい場面で用いられる。コイルばねと異なり直線配置が可能で、レイアウト自由度が高いのが特徴である。
原理と基本式
トーションバーのばね定数(ねじり剛性)kθは、材料のせん断弾性率G、極断面二次モーメントJ、自由長Lで kθ = GJ/L と表される。円形実心棒では J = πd^4/32、円管では J = π(D^4 – d^4)/32 である。最大せん断応力は τmax = T·c/J(Tはトルク、cは外半径)で評価する。レバーアーム長aを介して直線変位に換算すると等価ばね定数klin = kθ/a^2 となる。例えば鋼(G ≈ 79 GPa)、L = 1.0 m、直径d = 25 mmの実心棒なら kθ ≈ 3.0×10^3 N·m/rad、a = 0.20 m で klin ≈ 75 N/mm 程度となり、乗用車の前輪用として妥当な剛性域に入る。
BNR用のトーションバー入手した
これでトランクが開くようになるかな?
BNRってリアスポ標準装備だから、きっとリアスポ付き用のトーションバーのはず…
違ったら悲しい pic.twitter.com/nDr6z6s7HT— ゆう (@rail_photo) May 28, 2025
構造とサスペンションでの使い方
トーションバーは車体側に固定され、他端をロアアームやトーションレバーに結合する。車高はアジャスタのボルトで初期ねじり角(プリロード)を調整して設定する方式が一般的である。直線状のためフロア下や横方向へ配置しやすく、室内スペースの確保に有利である。なお、スタビライザ(アンチロール)バーもねじりを利用するが、左右輪のロール剛性を増やす連結ばねであり、主ばねとしてのトーションバーとは役割が異なる。機械要素としては機械設計の基礎に位置づけられる。
衝撃吸収のバイオメカニクス③
トラスモデル
トーションバー式サスペンションモデル
下肢からの力を受け止める原理🙂 pic.twitter.com/nJYo0SbdO5— PTタイガー@FootBiomechanics (@pttiger0228) November 8, 2020
材料・熱処理・表面強化
トーションバーにはSi-Cr鋼やSi-Mn鋼などのばね鋼が用いられ、焼入れ・焼戻しで高強度化する。高繰返しねじりに耐えるためショットピーニングで表面に圧縮残留応力を付与し、プリセット(予ねじり)で初期の塑性域を除去する。端部はスプラインや六角で結合するが、応力集中を避けるフィレット設計が重要である。腐食は疲労強度を大きく下げるため、防錆被覆やグリース封入、ブーツでの遮蔽が推奨される。サスペンションではダンパなどの緩衝装置と組み合わせて減衰を与える。
設計手順と簡易計算例
- 要求仕様の定義:固有振動数、車輪当たりの目標ばね定数、ストローク、パッケージ制約を決める。
- レイアウト決定:レバーアーム長aとトーションバー長Lの仮値を置く。
- 必要ねじり剛性:klin目標から kθ = klin·a^2 を算出する。
- 断面選定:材料Gから J = kθ·L/G を得て、dまたは(D, d)を決める。
- 強度確認:最大荷重時トルクTと τmax = T·c/J を求め、許容せん断応力以下であること、ねじり角が許容範囲であることを確認する。
- 疲労設計:平均応力・振幅応力を用いてS-N線図や修正Goodmanで安全率を確保する。
数値例:G = 79 GPa、L = 1.0 m、d = 25 mm の実心棒で kθ ≈ 3.0×10^3 N·m/rad。a = 0.20 m のとき klin ≈ 75 N/mm。ホイールが+50 mm変位するとねじり角θ ≈ 0.25 rad、トルクT ≈ 7.6×10^2 N·m、τmax ≈ 2.5×10^8 Pa(約250 MPa)となり、ばね鋼の設計許容内に収まる条件を満たしやすい。
利点・欠点
- 利点:直線配置で省スペース、車高調整が容易、巻ばねに比べ製造が単純、ばね定数が安定しやすい。
- 欠点:端部スプラインの応力集中と摩耗対策が必要、長尺ゆえ重量が増す場合がある、腐食影響に敏感、曲げに弱いため取り付け剛性の確保が不可欠。
トーションバーもコイルスプリングも、円柱がねじれるときの弾性を利用してる事には変わりないにゃ。荷重容量の為に大型化させても、車体の下に寝かせることでかさばらせないのがトーションバーの利点にゃ。
— WT陸戦プレーヤーの星空凛BOT (@WTGFrin) September 16, 2022
他のばね・要素との違い
ねじりばねは洗濯ばさみ等の巻形ばねで、同じねじり変形を用いるが形状・適用が異なる。板ばねは曲げ変形を利用し、荷重支持と案内機能を兼ねる場合が多い。サスペンションではトーションバーとダンパ(例:オイルダンパ、粘性ダンパ)を組み合わせて目標の減衰と応答を実現する。必要性能、スペース、重量、コストを総合して要素を選定するのが実務である。
安全・保守の要点
トーションバーの寿命は表面欠陥と腐食の管理に大きく依存する。端部のスプラインや支持部の当たり面にはフレッティングが生じやすく、定期清掃と潤滑が有効である。車両では車高の左右差や異音が劣化サインとなるため、早期に点検する。交換時は締結部のボルトトルク管理、プリロード設定、レバー角度の再調整を確実に行うことが重要である。用途に応じて耐食被覆やブーツを併用し、雨水や泥の侵入を防ぐと信頼性が向上する。