ステンレス金物|耐食性と施工性を両立する高品質材

ステンレス金物

ステンレス金物とは、ステンレス鋼を素材とする取付金具・締結部品・建築金具・配管支持具などの総称であり、耐食性・清潔性・意匠性を兼ね備えるため、屋外建築、食品設備、化学プラント、海洋周辺設備まで幅広く用いられる。代表鋼種はSUS304・SUS316・SUS430で、用途や環境に応じて選定する。表面仕上げは2B、#400バフ、ヘアラインなどがあり、仕上げにより外観と耐汚染性が変化する。設計ではすきま部の排水性、異種金属接触、塩化物環境での応力腐食割れに配慮し、施工では溶接焼け除去やパッシベーションで耐食性を回復させることが要点である。

定義と適用範囲

ステンレス金物は、取り付け・固定・支持・保護・化粧を目的とする金属部材のうち、ステンレス鋼を母材とするものを指す。例として手すり受け、L形ブラケット、配管クランプ、ボルトナット類、丁番、キャップ、アンカープレートなどがある。母材の耐食性を活かしつつ、機械的強度、加工性、意匠性、清掃容易性を総合的に満たすのが特徴である。

材質と特性(主な鋼種)

  • SUS304:汎用のオーステナイト系。耐食性・加工性のバランスがよい。弱磁性~非磁性である。
  • SUS316:Mo添加で塩化物環境に強い。沿岸・薬液飛沫・プール用途のステンレス金物に好適である。
  • SUS430:フェライト系で比較的経済的。屋内装飾金物など穏やかな環境に用いる。

熱膨張係数は炭素鋼より大きく、温度変化を受ける長尺金物では伸縮を見込んだスロット孔やスライド支持が有効である。オーステナイト系は冷間加工や溶接後に磁性を帯びる場合がある。

代表的な製品例

  • 締結・固定:ボルトナット、座金、ターンバックル、アイボルト、ワイヤクリップ。
  • 建築金具:手すり受け、笠木金具、化粧キャップ、ブラケット、コーナーガード。
  • 配管支持:Uバンド、サドル、ハンガー、ガイド、スライドシュー、基礎アンカー
  • 開閉金具:丁番、ラッチ、キャッチ、スライドラッチ。

ステンレス金物は衛生性や意匠性も重視され、食品・医薬設備では溶接ビードの死角削減、研磨仕上げの選定が重要である。

表面仕上げと外観

2Bは汎用マット、#400は鏡面寄りの光沢、ヘアラインは繊維状の意匠で傷が目立ちにくい。ビーズブラストは反射を抑えて落ち着いた質感となる。溶接部の酸化皮膜は酸洗・電解研磨で除去し、必要に応じてパッシベーション処理で不動態皮膜を整えるとステンレス金物の耐食性が安定する。

規格と呼び方

締結部品はJISISOの規格で形状・寸法・機械的性質が定義される。材料規格はJIS G 4303/4304/4305(棒・熱延板・冷延板)などが代表で、製品規格はJIS B群(締結、建築金物等)に多い。図面では材質(例:SUS304)、板厚、仕上げ(例:HL、#400)、寸法公差、表面粗さ、溶接記号などを明記する。

設計・施工上の注意

  • すきま部の排水・換気:ガスケットや重ね構造の隙間は通気・排水を確保し、すきま腐食を抑える。
  • 異種金属接触:炭素鋼や銅合金と接触する部位は絶縁ワッシャやシールで電解腐食を低減する。
  • 表面汚染:鉄粉付着はもらい錆の原因となるため、工事中の飛散対策と引渡し前清掃が有効である。
  • 熱影響:溶接焼けや感受性温度域での滞留は粒界腐食の要因となるため、適切な溶接条件と後処理を行う。

海辺・塩害環境のポイント

海塩粒子の堆積が避けられない箇所ではSUS316の採用、排水性の高い断面、定期洗浄計画を組み合わせる。仕上げは#400や電解研磨で付着物除去性を高めるとよい。

異種金属接触の実務対策

絶縁スペーサ、非吸水性シール、塗膜バリア、排水スリット、締結部のグリス管理を併用する。特に締結部は電位差が集中しやすい。

腐食メカニズムの要点

腐食形態は、すきま腐食、孔食、粒界腐食、応力腐食割れが主要である。塩化物イオン、滞留水、引張残留応力、溶接熱影響部の感受性が重なると進行しやすい。設計段階で水切りを設け、施工段階で溶接焼けを除去し、運用段階で定期洗浄を行う三位一体の管理が有効である。

加工法と接合

ステンレス金物の加工はレーザ切断、シャー・パンチ、曲げ、プレス、TIG/MIG溶接が一般的である。裏波が要求される配管支持などはバックシールドで酸化を抑え、仕上げ研磨や酸洗で表面を整える。穴明け後のバリ取り、エッジR付けは応力集中と汚れ滞留を軽減する。

メンテナンス

中性洗剤と軟質クロスで定期洗浄し、鉄粉付着は不織布と酸性洗浄→中和→水洗で除去する。塩素系洗浄剤は使用後の十分な水洗いが肝要である。定期点検では固定の緩み、クラック、仕上げの劣化、もらい錆の有無を確認する。

品質管理と検査

受入では材質証明、PMI(ポジティブ材質識別)、外観・寸法、表面粗さ、仕上げ方向の整合を確認する。必要に応じ、塩水噴霧などの加速試験で仕上げ差の傾向を把握する。締結体はトルク管理と再増し締め計画で信頼性を高める。

調達とライフサイクル

ステンレス金物は初期費用が上がる場合でも、塗装更新を要しにくく保全費用を抑えやすい。数量・鋼種・板厚・仕上げ・加工内容を明示すると見積が安定する。母材の種類(の区分)、規格(JIS/ISO)、表面仕様、検査項目、梱包・養生条件まで仕様化すると、長期の意匠性と耐久性を両立できる。