ウェザーストリップ
ウェザーストリップは、ドアや窓などの開口部周縁に設ける連続シール材であり、気密・水密・防塵・遮音・断熱・振動低減(NVH)を同時に担う要素部品である。自動車ではドア外周、バックドア、トランクリッド、フード、ガラスラン(ウインドウチャンネル)に広く用いられ、建築用サッシや家電(冷蔵庫)でも機能は同様である。素材はEPDM発泡ゴムやTPEが中心で、押出成形による複雑断面を持ち、鋼板や樹脂のキャリアと組み合わせて取付性と復元弾性を両立する。適正な圧縮量で所定の線圧を確保し、長期使用でも圧縮永久ひずみを抑えて密封性能を維持することが設計の要点である。
機能と役割
ウェザーストリップの主機能は、外気・雨水・粉塵の侵入を防ぎ、車室や室内の静粛性・快適性を高めることである。さらにドアの閉まり感(手応え・音質)に直結し、走行時の風切り音やビビりの抑制にも寄与する。密封線が連続して形成されることで、開口部全周にわたり均一な線圧が生まれ、遮音・遮風の性能が安定する。
- 気密・水密:降雨時の漏水や隙間風を抑制
- 遮音:車外騒音や風騒音の伝播を低減
- 断熱:外気温の影響を緩和し空調効率を改善
- NVH:微振動の伝達を減らしビビり音を抑える
材料と基本構成
ウェザーストリップは発泡層とソリッド層の複合断面を持つことが多く、外装側に摩擦・耐候性の高いスキン層を設ける。代表材のEPDMは耐候・耐熱・耐オゾン性に優れる。TPEは熱可塑性による成形・リサイクル性が利点で、クリップやテープとの一体化が容易である。キャリア(金属/樹脂)は取付溝への嵌合剛性を担い、コーナー部は加硫接着やモールド成形で連続性を確保する。
EPDMとTPEの選定観点
EPDMは高温域・屋外耐久に強く、長期の圧縮永久ひずみ特性に優れる。一方TPEは軽量・意匠・加工一体化に強みがあり、モデルチェンジや多品種変量生産に適する。要求性能、コスト、リサイクル方針を総合して最適化する。
断面形状と取り付け方式
ウェザーストリップの断面は、D型、P型、チューブ型、バルブ型、リップ型など多様で、目標線圧・復元弾性・摺動性に応じて設計する。取付方式は「溝はめ込み(ピンチウェルド)」「クリップ固定」「両面テープ」「スライドイン」などで、工程性とサービス性を考慮する。ドア側・ボディ側いずれに配置するかはボディ構造と耐久要求で決まる。
- スキン:低摩擦・耐傷付き・耐汚染
- 発泡コア:低反力で追従性を確保
- ソリッドリブ/バルブ:密封線の形成と線圧の安定
- キャリア:嵌合保持と取付精度
コーナー部と継手
曲率が大きいコーナーは反力が局所上昇しやすい。モールドコーナーや加硫継手で断面連続性を確保し、ジョイント部は段差・隙間・剛性差を最小化する。端末処理(チューブ封止、端末キャップ)も漏水経路の生成を防ぐ鍵である。
設計指標とパラメータ
ウェザーストリップの設計では、硬度(ショアA)、反発弾性、圧縮特性、低温柔軟性、摩擦係数(摺動性)、耐候・耐薬品性などを総合評価する。押し込み量(コンプレッション)に対して目標線圧が所定範囲に入るよう断面設計と材質を調整し、個体差・公差を踏まえたロバスト性を持たせる。
- 圧縮量と線圧のウィンドウ設定
- 圧縮永久ひずみ低減(温度・時間プロファイル)
- 摺動部のスティックスリップ防止(表面改質・潤滑)
- 取付溝・ピンチフランジの寸法公差と公差解析
圧縮永久ひずみと経年劣化
高温長期曝露で発泡構造が潰れ復元力が低下する。材料選定、独立/連続気泡の最適化、スキン厚の制御、温度プロファイル管理で対策する。評価はJIS/ISO相当の圧縮セット試験・熱老化試験を用いる。
製造プロセスと品質管理
押出条件(温度・スクリュー回転・引取り速度)と発泡倍率の安定化が品質の要となる。表面欠陥(ピンホール、スジ)や寸法ばらつきをオンラインで監視し、重量法・断面測定・硬度・反力の抜取り検査を行う。コーナーのモールド条件は接合強度と外観に直結するため、加硫時間・温度・圧力の最適化が必要である。
- 外観検査:表面スキンの均一性・光沢・汚染
- 寸法・質量管理:断面寸法、線密度の管理
- 機能検査:反力曲線、漏水、摺動摩耗
性能評価と試験法
ウェザーストリップはシャワーテストやチャンバー試験で漏水を確認し、風洞で風切り音を評価する。音響透過損失や車室騒音はマイクロホン配列で測定し、ドア閉め力・閉まり音は治具と計測器で定量化する。摺動部には離型剤や潤滑コーティングを適用し、低温環境での張り付き凍結も再現評価する。
NVHとユーザー体感
密封線の連続性と線圧の均一化は、ドアの「バスッ」とした良好な閉まり音に寄与する。逆に線圧過多は閉め力上昇とビビりの原因となるため、設計・組付けでバランスを図る。
適用分野と用語
自動車ではドア外周シール、ガラスラン、ルーフウェザー、トランク/バックドアシールなどがあり、建築サッシや産業機械の点検口にも採用される。関連用語としてドアモール、リップ、バルブ、キャリア、プライマーなどがある。締結体との取り合いではボルトや留め具の選定も工程性と耐久性に影響する。
保守とトラブルシュート
ウェザーストリップの典型的な不具合は、漏水、白化(チョーキング)、テープ剥がれ、凍結張り付き、ビビり音である。対策としては下地の脱脂(IPAなど)とプライマーの適正塗布、表面改質や潤滑剤の適用、端末処理の見直し、コーナー継手の再成形などがある。保守では中性洗剤での清掃と保護剤の軽い塗布が有効で、過度な油脂の塗り込みは埃の付着や摩擦変動を招くため避ける。