ろ過|多孔質材で固体粒子を分離する操作

ろ過

ろ過(濾過)とは、液体や気体に混じった固体粒子を多孔質の材料に通し、粒子と流体を分ける操作である。粒子を捕らえる材料はろ材、通り抜けた液体はろ液と呼ばれる。家庭のコーヒーフィルターから浄水場の砂ろ過池、半導体工場の超純水装置まで用途は広く、分離する粒子の大きさは数mmから1nm未満まで、6桁以上の幅がある。化学工学では基本的な単位操作の一つとされ、沈殿や遠心分離と並ぶ代表的な固液分離の方法として扱われる。

砂の層から始まった水道のろ過

記録に残る大規模なろ過は、1804年にスコットランドのペイズリーでジョン・ギブが漂白工場のために作った砂ろ過装置が始まりとされる。1829年には、ロンドンのチェルシー水道会社で技師ジェームズ・シンプソンが緩速砂ろ過池を完成させ、川の水を市民に送り始めた。その後、コレラの流行でろ過していない水の危険性が知られるようになり、1852年のロンドン首都水道法では、テムズ川から取った水のろ過が義務になった。日本では1887年に給水を始めた横浜水道が近代水道の先がけで、ここでも砂による緩速ろ過が使われた。

緩速ろ過と急速ろ過は何が違うのか

浄水場の砂ろ過は、大きく2つの方式に分かれる。緩速ろ過は1日4〜5m程度のゆっくりした速度で水を通す。砂の表面にできる生物膜が、濁りや一部の溶けた有機物を取り除く。急速ろ過では、まず凝集剤(PACなど)で細かい濁りを大きな塊(フロック)にまとめ、1日120〜150mの速度で砂の層に通す。同じ量の水を処理するのに必要な土地は、急速ろ過なら緩速ろ過の約30分の1ですむ。ただし、急速ろ過では砂の層が数十時間で詰まるため、水を逆向きに流す「逆洗浄」が欠かせない。都市が大きくなるにつれて、日本の大規模浄水場の多くは急速ろ過に切り替わった。

粒子はどこで捕まるのか

捕まえ方は2種類ある。ろ材の表面で粒子を止め、たまった粒子の層(ケーク)自体を新しいろ材として使う方法を表面ろ過、またはケークろ過という。もう一方の深層ろ過では、粒子は砂の層やフィルターの繊維のすき間に入り込み、内部で捕まる。砂ろ過で取れる粒子は砂粒の間のすき間よりかなり小さいことが多く、ふるいのように引っかけるだけでなく、ぶつかって付着する効果が大きいとされる。

ダルシーの法則

ろ材を通る流量は、1856年にフランスの技術者アンリ・ダルシーが示した次の関係でおおよそ表される。

Q = k × A × ΔP ÷ (μ × L)
Q:流量、k:透過率、A:ろ過面積、ΔP:圧力差、μ:流体の粘度、L:ろ材(またはケーク)の厚さ

この式から、ケークが厚くなるほど、また液の粘度が高いほど流量が落ちることがわかる。冬に水温が5℃まで下がると水の粘度は20℃のときより約1.5倍高くなり、同じ圧力をかけても処理量は目に見えて減る。

膜ろ過の4分類

高分子やセラミックでできた膜を使う膜ろ過は、取り除ける大きさによって4つに分けられる。特に逆浸透(RO)は、溶けているイオンまで取り除くため浸透圧を上回る圧力をかける必要がある。海水を淡水にする場合、その圧力は5.5〜7MPaに達する。

種類 孔径の目安 操作圧力の目安 主な除去対象
精密ろ過(MF) 0.1〜10µm 0.01〜0.2MPa 濁り成分、細菌、クリプトスポリジウム
限外ろ過(UF) 0.001〜0.1µm 0.1〜0.5MPa ウイルス、タンパク質、コロイド
ナノろ過(NF) 約1〜2nm 0.3〜1.5MPa 硬度成分、農薬、色の成分
逆浸透(RO) 1nm未満 1〜7MPa 塩類、各種イオン

UF膜は孔径ではなく「分画分子量」(1,000〜300,000程度)で性能を示すのが一般的である。逆浸透膜は、半導体の洗浄に使う超純水や、医薬品の製造用水をつくる工程の中心に置かれている。

気体のろ過とHEPAフィルター

空気中のほこりを取り除くフィルターも、ろ過の一種である。JIS Z 8122では、HEPAフィルターを「定格風量で粒径0.3µmの粒子を99.97%以上捕集するもの」と定めている。さらに細かい粒子を対象とするULPAフィルターは、0.15µmの粒子に対して99.9995%以上の性能が求められる。0.3µm前後が試験の基準になっているのは、もっとも捕まえにくい大きさだからである。これより大きい粒子は慣性やさえぎりで繊維にぶつかり、小さい粒子はブラウン運動でふらふら動くうちに繊維に付く。こうしたフィルターはクリーンルームの清浄度(ISO 14644-1)を保つうえで欠かせない。

製造現場でのフィルターの選び方と費用

工場の配管に取り付けるカートリッジフィルターを選ぶときは、「公称ろ過精度」と「絶対ろ過精度」の違いを確認する必要がある。公称10µmと書いてあっても、メーカーによっては10µmの粒子を60〜90%程度しか捕まえないことがある。油圧作動油のフィルターでは、ISO 16889の試験で得られるβ値で性能を比べることが多い。β≥200であれば、その粒径の粒子を99.5%捕まえることを意味する。交換は、フィルター前後の圧力差が初めの値より0.1〜0.2MPa上がったところで行うのが一般的である。交換の間隔を延ばして部品代を節約しても、ポンプの電気代がかさんで結局は損になる例が多い。食品や化学工場では、粒子が細かくて詰まりやすい液に対し、ケイソウ土をろ布にあらかじめ付けておく「プレコートろ過」を使う。ビールや砂糖液の清澄工程でよく見られる方法である。汚泥の脱水にはフィルタープレスが広く使われ、0.5〜1.5MPaで圧をかけて水分を絞り出す。

ろ過と混同されやすい操作

ろ過は粒子の大きさや物理的な捕捉を利用して分ける操作であり、分子を表面にくっつける吸着とは仕組みが異なる。浄水場で使う活性炭は、においや微量の有機物を吸着で取り除くもので、砂ろ過の前後に組み合わせて使われる。沸点の違いを利用する蒸留も、ろ過とは別の分離法である。実際の製造工程では、これらをいくつか組み合わせて目標の純度に届かせることが多い。

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