『エセー』モンテーニュ

『エセー』(『随想録』)Essais

『エセー』は思想家モンテーニュの主著で、晩年まで書き込まれて増補され16年に及んだ。47歳のとき最初の二巻が刊行、1588年には全面改訂された二巻と追加された三巻の、全三巻からなる。モンテーニュは様々な経験や日々の思索の変遷をそのつど加執したため、モンテーニュ自身の思想の遍歴がみられる。はじめはストア的な克己や禁欲が説かれ、やがて常に疑い、謙虚な態度での真理を探究(懐疑主義)が主張される最後は、神の創造した自然のふところに抱かれ、その恵みを感謝の気持ちを持って受け入れ、喜びを持って人生を享受するエピクロス的な快楽主義の境地が説かれる。

『エセー』モンテーニュ

『エセー』モンテーニュ

『エセー』モンテーニュからの引用

けれどもわたしは、こう判断する。神が我々にあきらかにしようとおぼしめされた真理のごとく。神聖かつ崇高にして、人知をはるかに越えるような事柄については、これをわが心に抱き、宿すことができるためには、神が格別にして特別なる恩恵をもって、我々に手を貸してくださる必要があるのであって、純粋に人間的な手段では、それはまったく不可能だと思われる。もしもそれが可能ならば、古典古代の時代に稀有にして優れた能力の人々の、理性の力をもってすれば、そのような認識にまで達するのに失敗したはずがないではないか。ということは、我々の宗教の数行なる神秘を、生き生きと確実に把握できるのは、信仰心をおいてはないのである。・・・・キリスト教徒にとっては、思索や省察の限りをつくして信仰の真理を美しいものとし、広げ、拡大することほど、ふさわしい仕事や試みがないことは疑うべくもない。

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