UV-EPROM
UV-EPROMとは、紫外線を利用してデータを消去できるROM(Read Only Memory)の一種であり、半導体メモリの歴史の中でも重要な位置を占める技術である。書き込んだデータを物理的に変更できない従来のマスクROMと異なり、イレース用の紫外線照射工程によって内容をリセットし、再度書き込むことが可能であるため、試作や開発用途などで幅広く用いられてきた。半導体プロセスの進化に伴いEEPROMやFlashメモリといった上位互換的な技術が登場したが、紫外線を使った消去方式のメカニズムや耐久性に独自の意義があり、現在でも一部の用途では活用されている。
基本構造と動作原理
UV-EPROM(Ultraviolet Erasable Programmable Read-Only Memory)は、MOS型トランジスタのゲート絶縁膜の下に浮遊ゲートを設け、そこに電子を蓄えることでデータを保持する仕組みを採用している。通常の読み出しでは電源を加えるだけで記憶内容が参照でき、書き込みは高電圧をかけて浮遊ゲートへ電子を注入する方法によって行われる。一方、消去にはパッケージ上部の石英窓から紫外線を照射して浮遊ゲート内の電子を放出させる手順が必要である。このため、物理的に紫外線を当てるスペースを確保した透明な窓付きパッケージが用いられることが特徴となっている。
UV-EPROMの仕組み
UV-EPROMの内部では、MOSトランジスタのゲート部分に浮遊ゲートと呼ばれる電荷蓄積領域が設けられている。通常は高電圧をかけて電子を浮遊ゲートに注入することで論理的に「書き込み」が行われるが、消去は紫外線の照射によって浮遊ゲート内の電子を放出させるという仕組みになっている。具体的には、パッケージ上部に設けられた透明な石英窓からUV光を照射し、浮遊ゲートに蓄積された電荷を除去することでメモリセルを初期状態に戻すことができる。
EEPROMとの違い
UV-EPROMとEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)の最大の違いは、消去方法にある。UV-EPROMは紫外線照射による一括消去が基本であり、メモリ上の全セルをまとめて初期化する必要がある。一方EEPROMは電気的に個々のメモリセルを消去できるため、特定のアドレス領域だけを書き換えることが可能である。したがって細かなデータ修正や部分的な書き換えが要求される用途ではEEPROMやFlashメモリが主流となっているものの、UV-EPROMは複数回の開発テストで内容を書き直すような場面において、比較的シンプルな構造と安定した動作特性を備える点が評価される。
構造と消去方法
UV-EPROMの消去工程には、石英ガラス窓を通して強力な紫外線を照射するためのUVランプが必要である。消去に要する時間は数分から数十分程度とされ、特に浮遊ゲート内の電子を十分に除去するために一定のUVエネルギー量が必要となる。この石英窓を備えたパッケージは光を透過する部分があり、通常の黒色パッケージとは見た目も異なっている。消去が完了すると、セルが全て「1」の状態にリセットされるため、再度プログラミング工程を行うことで新たなデータを書き込むことが可能となる。
用途とメリット
かつては開発用や量産前の試作チップでUV-EPROMが広く用いられた。マスクROMではICを製造する段階でデータ内容が固定されてしまうが、UV-EPROMであれば完成後でもデータの書き換えが可能であり、設計検証などで何度も消去と再書き込みを繰り返すことができる。このような柔軟性がもたらすメリットは大きく、特にソフトウェアの開発やファームウェアの微調整が必要とされる場面で重宝されていた。さらに、一度書き込んだデータは紫外線を照射しない限り保持されるため、保存時のデータ安定性も実用上十分に高い。
プログラミング工程
UV-EPROMの書き込み工程では、専用のプログラマが使用される。通常の動作電圧よりも高い電圧(おおむね12~21V程度)をかけることで浮遊ゲートに電子を注入し、論理的な「0」を作り出す格好となる。データビットごとに選択的に高電圧パルスを印加し、必要な箇所だけを「0」にプログラムする仕組みである。紫外線照射による消去はメモリセル全体を「1」に戻す工程であるため、書き込みと消去を繰り返す際には、一括消去→プログラムの順序で作業が行われる。このような書き込み方式は現代のFlashメモリと類似点が多いが、細かな部分の制御や高速書き込みの面で若干の違いがある。
フラッシュメモリとの比較
近年主流のフラッシュメモリは、電気的にブロックごとの消去が可能であり、紫外線照射やパッケージ窓といった物理的制約を必要としない。さらに製造プロセスの進歩によって大容量化とコストダウンが進行し、市場を席巻するに至った。これに対してUV-EPROMは、より古い世代の技術として扱われがちであるものの、データの保管期間が比較的長い点や書き込み動作の信頼性など、一定の優位性を持つ場合もある。特定分野の業務や実験用途では、現行品が確保されている間は使い続けられていくであろう。
発展と現状
技術の進歩にともない、消去や書き換えが電気的に行えるEEPROMやFlashメモリが市場を席巻するようになってからは、UV-EPROMの利用は限定的になっている。しかし、耐放射線特性や極限環境下での安定動作などの観点から、あえてUV-EPROMを選択する場合があることも事実である。また電子工作やレトロコンピュータの修理などでは、今なおUVランプを備えたプログラマとともに運用されており、一部の愛好家や研究開発現場で活躍を続けている。このように現行の主力ではないものの、独自の価値をもつメモリとして長年にわたり用いられてきた存在といえる。