SiGe|高周波と低消費電力を両立する合金素材

SiGe合金

SiGeはシリコンとゲルマニウムを組み合わせた半導体材料であり、高周波特性や低消費電力特性に優れることから集積回路や高性能トランジスタなどで重宝されている。通常のシリコン材料と同等の製造プロセスを利用しつつ、ゲルマニウムの特性を加えることでバンドギャップを最適化できる点が大きな利点である。高周波通信からイメージセンサまで広く応用が進み、将来的にはより高度なデバイスの開発を後押しする可能性が高いとみられている。

開発の背景

シリコンにゲルマニウムを添加する構想自体は古くから議論されてきたが、本格的な研究が進んだのは高周波通信の需要が急増した時期と重なっている。従来のシリコンデバイスだけでは高速動作や低雑音特性に限界が見え始めたため、新素材を活用する必要が生じたのである。そこで、高移動度と高電子密度が期待されるSiGeを活用し、集積度を犠牲にせずトランジスタの性能を向上させる方向に研究が展開されたのである。

化学組成と特徴

SiGeはシリコン(Si)にゲルマニウム(Ge)を一定の濃度で固溶させた合金であり、ゲルマニウム濃度を制御することでバンドギャップや電子輸送特性を調整できることが大きな特徴となっている。シリコンよりも格子定数が大きいゲルマニウムを加えるため、結晶格子に歪みが生じるが、これが電子および正孔の移動度を高める要因ともなる。高濃度化による欠陥発生やプロセス難易度の上昇といった課題もあるが、適切な濃度制御によって高いパフォーマンスを引き出せる点は大きなメリットであるといえる。

バンドギャップ制御技術

半導体材料のバンドギャップは、デバイスの動作速度や電力効率を左右する重要な要素である。シリコンは約1.12eVのバンドギャップを持つが、SiGeではゲルマニウムの割合に応じてバンドギャップを連続的に変化させることが可能である。これにより、例えば高速動作が求められるトランジスタにはゲルマニウム濃度を高めることで移動度を上げ、低リーク電流が求められる領域ではシリコン中心の組成にするなど、用途に応じた最適化を実現しやすい。結晶成長やエピタキシャル技術の進歩が、こうしたきめ細かな組成制御を支えている。

高周波デバイスへの応用

近年の高速通信インフラの拡充に伴い、ミリ波やサブテラヘルツ帯の通信を実現するデバイスが注目されている。ここで重要となるのが高い周波数で動作しながら、低ノイズかつ低消費電力を確保する技術である。従来のシリコントランジスタではノイズ特性やゲインに限界があったが、SiGeバイポーラトランジスタやヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)などを用いることで、高いfT(トランジスタ利得帯域周波数)と優れた線形性を実現できる。これにより5Gや衛星通信など多様な用途での採用が加速している。

CMOSプロセスとの互換性

半導体製造において生産性を左右するのが、既存プロセスとの互換性である。高度に成熟したCMOSプロセスを活かせる点がSiGeの利点であり、新規のマスクセットや大型の設備投資を最小限に抑えつつ高性能デバイスを実装できる。シリコン主体のウェーハにエピタキシャル成長でゲルマニウムを添加する工程は、既存ラインでの導入も比較的容易とされる。その結果、コスト効率の高い生産が可能になり、エレクトロニクス産業に幅広い技術革新をもたらす一端を担っている。

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