PVケーブル
PVケーブルは、太陽光発電(Photovoltaic)システムの直流側に用いる耐候・耐熱・耐紫外線性に優れた専用電線である。屋外の高温・低温、雨水、直射日光、オゾン、塩害といった過酷環境で長期使用されることを前提に、二重絶縁構造やハロゲンフリー難燃シースを備える。導体は錫めっき軟銅撚り線が一般的で、サイズは2.5/4/6/10 mm²が多く、1,000~1,500 V級の高い直流定格に対応する。国際的にはIEC 62930やEN 50618(旧PV1-F)、ケーブル記号H1Z2Z2-Kなどが広く流通し、耐熱温度は運転90~120℃、短時間ではさらに高温に耐える仕様が用いられる。
定義と用途
PVケーブルは、PVモジュールと接続箱・集電箱・パワーコンディショナ間の直流配線を対象とする専用ケーブルである。一般の建物内配線と異なり、長距離の屋外布設や屋根上敷設、モジュール裏の狭隘空間での曲げ、日射による高温化、結露や水たまり接触など、厳しい条件を想定する。そのため、耐候・耐UV・耐オゾン・耐摩耗・難燃・耐移行性(可塑剤移行の抑制)といった特性が規格で要求される。
構造と材料
PVケーブルの典型構造は、錫めっき銅撚り導体(可とう性確保、腐食抑制)に架橋ポリオレフィン(XLPO)または架橋ポリエチレン(XLPE)の絶縁、さらに同材質の外被シースを重ねた二重絶縁である。色は極性識別のため黒・赤(または黒・白)を使い、マーキングには定格電圧、導体サイズ、規格番号、製造年週などを印字する。外径はサイズにより異なるが、曲げ半径は一般に外径の4~6倍以上が推奨される。
規格と呼称
欧州域ではEN 50618(旧PV1-F)からH1Z2Z2-Kへの移行が進み、国際的にはIEC 62930が参照される。難燃性はIEC 60332-1-2、低発煙性はIEC 61034、低ハロゲン性はIEC 60754-1/2などで評価される。コネクタはIEC 62852に適合した直流用接続器(通称MC4など)を組み合わせるのが通例である。
電気定格と温度特性
PVケーブルの定格電圧は1.0/1.8 kV(AC/DC相当)など高直流に対応し、近年の1,500 V級ストリングにも適用される。導体許容温度は常時90℃(一部120℃)、周囲温度や敷設方式により許容電流は変動する。屋根上は周囲温度が実効的に高くなるため、温度係数による減額(ディレーティング)が不可欠である。直流では集電方向に電流が合流していくため、上位ケーブルほど電流が大きくなり、サイズ選定を段階的に見直す。
設計・選定(許容電流と電圧降下)
- 許容電流:規格表の基準値に対し、周囲温度、布設層数、結束・管内充填率、敷設姿勢(日射による加熱)で補正する。
- 電圧降下:長尺の直流配線は損失を招く。おおよそΔV=I×2L×R(往復長2L、Rは導体抵抗)で見積もり、系統全体で2~3%以内を目安にする。
- サイズ選定:4 mm²は住宅~小規模で汎用、6 mm²は長距離や大電流で有利、10 mm²は集電幹線や高出力で検討する。
- 短絡・過電流保護:ストリング並列数が多い場合は逆流電流対策にストリングヒューズや遮断器を配置する。
施工と取り付け
- 曲げと固定:最小曲げ半径を守り、エッジ部では保護材を介在させる。固定は耐候性結束バンドや金具を使用する。
- 水仕舞い:ケーブルは水が溜まる低部に垂れ下げない。ボックスへの引き込みは下向きドリップループを確保する。
- 引込・貫通:金属エッジ通過部ではブッシング・グロメットで被覆損傷を防ぐ。
- 混触禁止:高温配管・油類・角部材との接触を避け、熱源から離隔を取る。
接続部品と信頼性
PVケーブルはIEC 62852適合のDCコネクタと組み合わせ、同一メーカー同一シリーズで対向接続するのが望ましい。いわゆる“互換”品の混在は接触抵抗の上昇やシール性低下を招き、発熱・トラッキング・浸水故障の原因となる。圧着は規定ダイスで所定の圧着高さに仕上げ、引張試験値と外観(バレルからの素線はみ出し無、被覆ダメージ無)を確認する。
劣化要因と耐候性試験
直射日光のUV、温湿度サイクル、オゾン、塩霧、機械的摩耗が主要な劣化要因である。シース硬化や微細クラック、絶縁抵抗の低下、端末部シール不良からの浸水がトラブルの典型である。規格では耐UV・耐オゾン・難燃・発煙性などを規定し、屋外長期信頼性を担保する。実運用では定期点検時に外観・触診(硬化・べたつき)・端末シールを確認し、必要に応じてサンプルの絶縁抵抗測定を行う。
保護・検査(コミッショニング)
- 極性・導通:ストリング組成ごとに極性誤接続の有無を確認する。
- 絶縁抵抗:乾燥状態でメガにより測定し、しきい値を満たすことを確認する。
- 端末シール:コネクタのロック・Oリング・ケーブルクランプを点検し、トルクを規定に合わせる。
- 帳票:ルート図、サイズ・長さ、許容電流根拠、電圧降下計算、補正係数の記録を残す。
安全と法規・標準の要点
PVケーブルは直流アークに留意し、抜差しは無負荷で行う。可燃物近傍では難燃性の高い仕様を選定し、屋内貫通部は防火区画の処理を行う。国・地域の電気設備規程や建築防火要件に適合し、製品はIEC 62930やEN 50618、コネクタはIEC 62852などの適合証明を確認するとよい。仕様の整合・施工品質・点検保全が揃って初めて長期の出力維持と安全性が確保される。