PROM|一度きりの書き込みで固定化する不揮発メモリ

PROM

PROM(Programmable Read-Only Memory)とは、製造後に一度だけデータを書き込める不揮発性メモリである。ROMと同様に電源を切っても内容を保持できる一方、ユーザが後から書き込む工程を経る点が特徴とされている。マスクROMのように工場出荷時点で内容が決定されるわけではなく、書き込み時には専用のプログラマを用いて高電圧を印加し、内部回路のヒューズやアンチヒューズを物理的に変化させることでビット情報を固定化する。書き込みが終わると再書き込みや消去は原則としてできず、ファームウェアや設定を恒久的に保存する用途に適している。

背景

従来のROMは製造段階でデータを焼き込むマスク方式が主流であったが、それでは少量生産や試作段階でのデータ変更に対応しづらいという課題があった。そこで開発されたのがPROMである。ユーザやメーカーが必要なデータを後から書き込めるため、在庫リスクを抑えられるメリットがあった。初期のEPROMやOTP(One-Time Programmable)と並び、マイクロプロセッサのプログラムやその他の固定データを保持する手段として重要な位置を占めてきた。

構造

PROMの内部構造は、ヒューズ型あるいはアンチヒューズ型が採用される場合が多い。ヒューズ型では書き込み時に高電圧をかけることで特定の配線を物理的に切断し、論理0または1に対応させる。アンチヒューズ型の場合は絶縁膜を破壊して配線を導通させ、ビットパターンを形成する。これらの方式はいずれも物理的な変化を伴うため、書き込み後の再変更が基本的に不可能である。構造が単純で大容量化しやすい一方、書き込みミスが起これば修正がきかないリスクがある。

書き込み方法

PROMの書き込みには専用プログラマが用いられる。該当ビットに高電圧パルスを与え、ヒューズやアンチヒューズの状態を変えることでデータを固定化する仕組みである。書き込みプロセスは短時間だが、電圧やパルス幅を細かく管理しなければ、隣接ビットが誤って変化する恐れがある。開発現場では書き込み前に内容を十分に検証し、書き込み後もリードテストを行うことでデータ化けを防いでいる。書き込み工程を安全に行うためには、静電気対策や温度管理などの周辺条件への配慮も欠かせない。

用途

回路設計や製造の最終段階でデータ内容を確定する必要がある場面でPROMは活躍してきた。ファームウェアや制御プログラムを一度だけ書き込む用途を中心に、計測機器や産業用ロボットのCPU基板などに組み込まれるケースが多かった。コンシューマー向け製品ではROMカートリッジ形式のゲームソフトや周辺機器などで採用された歴史もある。ただし、繰り返し書き込みが可能なEEPROMやフラッシュメモリが台頭すると、ユーザが後からアップデートできる利便性を重視した設計が増え、現在では特定の用途に限られる傾向にある。

特徴

PROMは一度の書き込みでコストを抑えられる反面、再書き込みの柔軟性がない点が最大の特徴である。この制限がメリットとなる場面もあり、外部からの改ざんを難しくするセキュリティ要素や、試作品を経て確定したソフトウェアを最終段階で焼き込む用途に向いている。マスクROMほど大量生産時の単価は下がりにくいが、少量・多品種の製品や短納期が求められる開発案件では有用性が高い。一方で余計な書き込み工程やプログラマが必要となるため、用途に応じたコスト比較と生産計画が重要である。

他メモリとの比較

マスクROMに比べるとPROMは自由度が高く、EEPROMやフラッシュメモリほどの再書き込み性はないものの、その分製造が容易でランニングコストも抑えやすい。試験的な開発プロジェクトや製品ライフサイクルが短い市場には相性が良いとされる。一方でEEPROMやフラッシュにはファームウェアのアップデート機能があるため、企業のサポート方針やユーザニーズによっては後者が好まれるケースも多い。結果としてPROMは、最終段階で確定したデータを一度だけ書き込めれば十分というニッチな分野に最適化されたメモリとして位置づけられている。

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