O2センサー
O2センサーは内燃機関の排気中に含まれる酸素濃度を検出し、ECUの閉ループ燃料制御を成立させる中核部品である。酸素濃度の情報から空燃比を推定し、三元触媒が最も浄化効率を発揮するλ=1近傍に制御する。現代車両では始動直後から迅速に作動させるためヒーター内蔵型が主流で、上流(触媒前)と下流(触媒後)に配置して燃焼制御と触媒劣化監視の双方を担う。
役割と原理
O2センサーの多くはジルコニア固体電解質を用い、排気と大気の酸素分圧差によるネルンスト起電力を出力する。ナローバンド型では混合気がリーンで約0.1V、リッチで約0.9Vを示し、しきい付近で急峻に切り替わる性質を利用する。ワイドレンジ型ではポンプセルで酸素イオンを能動移送し、ポンプ電流の大きさから広範囲のλを連続的に計測できるため、過渡時や希薄燃焼の制御精度が高い。
主要タイプ
- ナローバンド(スイッチ型):出力は0〜1V域で急峻に変化し、ECUはクロスカウントやデューティ比で燃料補正を行う。
- ワイドレンジ(A/FまたはLAF):検出はポンプ電流[mA]で表され、広い空燃比範囲を高分解能で追従する。
- ヒーター内蔵:素子温度を素早く作動域に高め、冷間時のオープンループ期間を短縮する。
- プレーナ構造:薄膜化で熱容量が小さく、応答が速く省電力である。
配置と触媒監視
上流側O2センサーは燃焼に直結する空燃比制御を担当し、下流側は触媒通過後の酸素変動を見て効率を推定する。下流の波形が上流に近づけば触媒酸素蓄積能の低下と判断され、OBD-IIではP0420等のDTCで劣化を示す。上流と下流の相関や遅れを指標化することで、車載自己診断の信頼性を高めている。
ECU制御との関係
ECUはO2センサー信号を用いてSTFT/LTFTを更新し、噴射量を微調整する。始動直後・高負荷・全開域などはマップ優先のオープンループになり、素子温度が規定に達すると閉ループへ移行する。アイドルや巡航ではリーン・リッチを小振幅で往復させ、触媒酸素貯蔵を活用しつつ平均としてλ=1を維持する。
信号特性と診断指標
ナローバンドではスイッチング周波数、立上り/立下り時間、振幅、クロスカウントが健全性の指標である。応答遅延が長い、振幅が浅い、バイアスが片寄る場合は被毒や汚れ、排気漏れ、配線抵抗増大が疑われる。ワイドレンジではポンプ電流対λの直線性、校正オフセット、ヒーター制御の追従性が重要で、スキャンツールやオシロスコープで動的評価を行う。
故障症状と原因
- 症状:燃費悪化、アイドル不安定、加速もたつき、排ガス適合不可、MIL点灯(P0130群、ヒーター回路不良、センサ遅応答など)。
- 要因:鉛・硫黄・リン・シリコン等による被毒、煤付着や冷間結露、配線接触不良、排気リーク、ヒーター断線や短絡、過熱や熱衝撃によるセラミック割れ。
- 誤判定:インテーク二次空気吸いや燃圧異常、点火ミスでもO2センサー波形が乱れるため、根因切り分けが必須である。
点検・交換の実務
O2センサーの取付ねじは一般にM18×1.5である。固着対策として座面やねじ部に高温用アンチシーズを少量用い、先端素子や開口部への付着は厳禁である。締付トルクはメーカー指定に従い、ハーネスの撚れ・折れ・排気熱源との干渉を避ける。脱着時は高温直後の水濡れや打撃を避け、セラミックの熱衝撃破損を防止する。
試験とデータ解釈
アイドル・2500rpm保持・軽負荷巡航・減速燃料カットなどの標準パターンで波形を観察する。ナローバンドではしきい前後の切替の鋭さ、ワイドレンジではステップ応答の遅れとオフセットを確認する。疑似リーン(微小な二次空気導入)やプロパン少量導入テストで方向性と感度を検証し、同時にMAF/MAP、燃圧、点火二次波形と突き合わせると誤診を避けられる。
材料と耐久性
O2センサーは高温腐食・振動・水撃が重畳する過酷環境で働く。素子はジルコニア/アルミナセラミック、電極は多孔質白金、外装は耐熱ステンレスが一般的で、ケージ形状や拡散孔で排気脈動と煤付着を緩和する。ヒーターのPWM制御は熱衝撃を抑制し、排気温の変化に応じた最適温度域を維持する。
安全上の注意
センサー先端は極めて脆く、落下や衝撃で微細亀裂が生じる。溶剤やシーラントの蒸気は電極被毒の原因となるため使用を避ける。電源断のまま加熱配線を短絡させる、端子を汚損させる等の取扱い不良は機能低下やDTC多発につながる。
設計上の留意点
車両設計では排気管の渦流と凝縮水の滞留を避け、上死点付近の脈動影響を過度に受けない位置へ配置する。熱源からの輻射遮蔽、ハーネスのクリープ対策、アース品質の確保、触媒前後の距離設定、センサ本数の最適化などが制御精度と耐久の鍵である。これらの最適化により、O2センサーは排ガス規制適合と燃費・性能の両立に大きく寄与する。