冷間圧延
冷間圧延は、再結晶温度以下の温度域で金属板をロール間に通し、板厚を減らして平滑な表面と高い寸法精度を得る塑性加工である。熱間後のスラブやホットコイルを脱スケール・酸洗した後、室温近傍で多段のスタンドを通過させて所定厚さに仕上げる。熱による再結晶が進まないため加工硬化が蓄積し、引張強さや降伏点が上昇する一方で延性は低下する。表面粗さが小さく、板厚偏差も小さいため、自動車外板、家電筐体、電気鋼板などに広く用いられる。
原理とプロセス
ロールと材料の接触弧内では入口側で材料はロール周速より遅く、出口側で速くなるため、摩擦方向が反転する「ニュートラル点」が生じる。摩擦は圧下力の伝達と張力制御に寄与し、潤滑油の粘度・供給量・温度管理が板形状を左右する。圧延荷重は材料の流動応力、摩擦係数、接触長さに依存し、ロール剛性やクラウン調整、ベンダで補正する。ロール(ロール)の直径を小さくすると接触長さが短くなり荷重が低下するが、座屈や形状安定の観点で多段化が必要となる。
材料特性への影響
加工硬化により転位密度が増し、降伏点(降伏点)と引張強さが上がる。伸びは低下し、面内異方性や集合組織の発達で耳成形が生じやすくなる。薄板では圧延方向と直角方向で強度が異なるため、プレス成形ではr値やn値の把握が重要である。工程内・工程間張力で発生する残留応力は形状不良や寸法戻りの原因となる。冷間加工で微細化した結晶粒は後工程の焼鈍で再結晶・粒成長するため、最終特性は圧延と熱処理の複合で決まる。
厚み制御と形状
板厚は自動板厚制御(AGC)でオンライン補正し、入口・出口張力、圧下スクリュー、油圧、ロール熱膨張を総合的に管理する。クラウン(中央厚みと端部厚みの差)やウェーブ(端波・中波)は、ロールプロファイル、張力バランス、熱勾配で最適化する。ミル剛性をモデル化し、フィードフォワードとフィードバックを併用して板厚偏差をμmオーダで抑える。
圧下率とパススケジュール
圧下率は r = (t0 − t1) / t0 で定義され、多段圧延では各パスのrと中間焼鈍の組合せで最終強さと成形性を調整する。薄化の進展に伴い延伸が増すため、耳やウェーブを避ける目的で張力配分を見直す。代表例として、総圧下60〜80%を4〜6スタンドで分担し、最終にスキンパスを付与する。
潤滑と表面性状
境界〜混合潤滑域での摩擦制御は重要で、乳化油や合成エステルを用い、濾過・清浄度管理で表面欠陥を抑える。ロール表面のテクスチャ(ショットブラストやレーザ)により、転写粗さを設計し、塗装密着や深絞り性を高める。仕上げ後のスキンパスは降伏伸び消失と光沢調整に有効で、Ra・Rzなど表面粗さ指標で評価する。
設備構成
2段・4段・6段・クラスタミルなどが用いられ、厚みと材質に応じて選択する。4段ミルはワークロールとバックアップロールで剛性と接触長を両立し、6段・CVCはシフト機構でクラウン調整範囲を広げる。テンパーミル(スキンパスミル)は微小圧下で降伏点伸びを抑え、平坦度を改善する。
冷間圧延鋼板の規格と用途
代表規格としてJIS G3141(SPCC, SPCD, SPCE)が知られ、成形性グレードにより自動車外板から一般用までカバーする。電磁鋼板やステンレス薄板にも適用され、家電、建材、モータコア等に展開される。酸洗→冷間→スキンパス→焼鈍→調質の順で工程設計されることが多く、母材の鋼種と最終の焼鈍条件が性能を規定する。
焼鈍(連続・箱)
連続焼鈍(CA)は高速で均一な再結晶を実現し、箱焼鈍(BA)は光沢面と深絞り性に優れる。再結晶核生成と粒成長を制御するため、冷間圧延前後の合金設計、固溶元素、析出状態を考慮する。
熱間圧延との比較
熱間圧延は大圧下で生産性に優れ、再結晶により延性が確保される。一方、冷間圧延は寸法精度・表面品質が高く、薄板の最終仕上げに向く。エネルギー消費は潤滑・張力・ロール径の最適化で低減でき、酸洗・焼鈍を含めたトータルで評価する必要がある。
品質管理と検査
オンライン厚み計(X線・γ線)、光学式形状計、渦流による表面欠陥検出などでプロセスを監視し、統計的品質管理(SPC)でバラツキを抑える。鋼板の清浄度と表面清浄は塗装や溶接性に直結するため、圧延油の管理と洗浄が重要である。
代表的な欠陥
- 形状不良:端波(エッジウェーブ)、中波(センターバックル)、チャターマーク
- 表面欠陥:圧延キズ、圧痕、ロールマーク、巻込み
- 寸法不良:板厚偏差、クラウン過多、耳の過大
設計・加工での活かし方
プレス成形ではスプリングバックを見込み、金型補正や板厚・強度グレードの選定を行う。深い絞り部位ではSPCDやSPCEを用い、潤滑・ビード設計で材料流動を制御する。曲げでは最小曲げ半径を材質に応じて設定し、割れを避ける。工程設計では冷間圧延起因の異方性や応力分布を理解し、深絞り加工や曲げ加工条件と合わせて最適化することが、外観と寸法精度、コストの両立に有効である。
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